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詩「怪物たち」

glas! glas!
罪の地下の蛇が這い回る
グラッ! グラッ!
建物の二階から逃げ出して
まだ笑っていた
余震ではなかった
同時多発の地の震え
       振動があった
目まい……
〈爆発 的 現象〉
(宮城の影響……全てが飲み込まれて聴こえてくる泣き声 電柱が折れ 危ないよ! の掛け声 坂の下まで怪物が迫ってきている)
〈原発〉
〈三月一二日 六時三六分
 地震の報とともに
 死の一七〇〇の報が〉
空が、沈殿して
空中に交わる電波
波は 大波は
油が混じった闇の水として
夥しい物々を 飲み込んでいった
怪物は神からやってきた
怪物は神からやってきた
部屋は水道管が破裂し、行き場所は失われた
『大洪水』を携えている
ル・クレジオの……文字の大洪水
〈一週間続く余震〉
汐の死の報(吉増さん……詩とは、
      僕のしていることは
      太田先生
      僕のしていることは
      書いている詩は正しいですか?) 詩が書けない
友人と話した記憶
グラスが割れる
水面を覆った人工の皮膚病から
泥が 泥が
泥のように眠れた……僕は家に帰れました
M・eight・eight――史上最大の怪物が揺れている
都市は失はれた
明は滅す 火も断たれ 水も断たれる
全てが壊滅していて
宮城! 怪物は
神が送ったのですか?
神の感情は 喜怒哀楽のどれですか?
悪夢から 私は逃れて今、書いています
悪夢にいる人々に
怪物に喰われた人々に
私は何ができるのか
夢想は打ち砕かれた
エスエヌエスでの原発を止めろ
という友人の発言に現実を感じる
友人は現実を生きている
私は現実を生きている
私の書いているこれは現実を生きていない
黒田潔と古川日出男の「舗装道路の消えた世界」が予言されている
『サウンド・トラック』
soundtrack――nearly stationary
夢のよーに穏やかな時から
夢の列車で現実に帰ってゆける
現実に帰ってきて
湯を浴び眠った
夢のよーな睡眠だった
人工の怪物は凍結から逃れる
人工の怪物の拡大は続く
sanからju sanからju
枝の先から発される媒体言語
「予想の範囲内」
「爆発的事象」→不吉な疑わしい報
「放射能物質の混じった雨が降る!」
サササササ
報が人々を混乱させる
juからniju juからniju!
風向き ポスト・ヒーニーは
新しい天候をどう読むか
まどっている 冷静な意見はためになる
私は冷静に見ていられる
「情報公開が必要だと」
しかし、
その意見がどれほどその場の状況を考えていないか
おそらく私は間違っている
死者は一七〇〇人 書きたくない数
冷静と現場に大きな相違がある
構築は脱されているのではなく
構築は崩されている
沈黙
被曝!
皮に爆弾を抱える抱える 刑事の殉職
san名
1と1と1
放射能を人工の怪物は吐いているのか?
AtoM? 君は……
一瞬の孤独にも耐えられない言葉たちが孤独を強いられる
長女だけ見つけました
私の家族は無事でした
だから全ての言葉が胸を打つのかも知れない
それは私にも分かりません

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