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9. では何を額装したらいんだろう?

ざっと額装のおおまかな流れ、テクニック、道具とみてきたわけですが、何より大事なのは額の中にいれる作品。何を額装したいか?というのは額装を始めるにあたってとても重要な問いです。額やテクニックだけあっても中身がなければ何も始まらないからです。では何を額装したらいいのでしょうか。

額装をしてはいけないものはほとんどないと思うのでそういう意味では自由です。自分の入れたいと思うもの、好きなものを入れるというのが基本的な考え方です。毎日見ていたいものでもいいし、思い入れがあるものだったりするものもよいです。たとえば旅行先で見つけたポストカードにその街の地図だったり、訪れた美術館のチケットの半券(最近はデジタル化されてきたのでそんなものないかもしれませんが)を合わせてみるとか。

アンティークのものを古い額縁に合わせてクラシカルなテクニックで額装するというのもすてきです。あるいは大切にしまっておいた手紙を飾れるかたちに変えるというのでもいいし、記念になるものをプレゼントする際に額装してもいいかもしれません。正解はないのですからね。

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額装の世界ではそんな額のなかに入れる作品のことをドキュモン(document)と呼びます。聴き慣れない言葉だと思いますが(英語と同じスペルなのでドキュメントと呼びたくなりますが)、額装がフランスで発達したのでフランス語で呼んでいます。フランス語でのドキュモンは文書や書類といった意味ですが、額装ではなかに入れる作品のことをこう呼びます。

ここからはぼくの推測になりますが額装が始まった最初の頃(まあ現在でも)額のなかにおさめるのはたいていが文書のようなペーパーのものが多かったのだと思います。リトグラフのような版画だったり、写真だったり、古い広告(ポスター)だったりカードだったり。あるいは表彰状やライセンスなどの認定証もそうでしょう。絵画は基本キャンバスでそのまま額縁をつけることが多いので、額装というとどちらかというと先に挙げたペーパー類を保護、保存する目的が強かったのだと思っています。そのために額のなかにおさめる作品=ドキュモンと呼ぶようになったのではないかな、と。あくまでも推測ですけれどね。

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思い出以外でのドキュモンとして真っ先に挙げられそうなのはシーズンのイベントものです。代表的なものだとクリスマスやハロウィン。バレンタインデーなんてのもいいですね。もっと大きなくくりにして春夏秋冬など季節のテーマで作ってもいいです。ただイベントのカードなんかはその季節しか店頭に並ばないので、作って飾りたいと思う時期と材料を探す時期が同じだったりするので、その年のものを作る場合は急いで作らないといけなかったりします。

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そして、このドキュモン探しというのが作る以外の額装のたのしみだったりします。画家がこれから描く絵のモティーフを探すように、額のなかにおさめたい、あるいは部屋の壁に飾りたいと思う中身(ドキュモン)を街のなかに繰り出して探します。それはさながら街のどこかに眠っている宝探しをしているような自分がトレジャーハンターになったような気分にもなります。雑貨屋だったり本屋だったり、蚤の市みたいなところでも偶然おもしろい素材と出会うこともあります。そして時々、偶然にこれを額装したいなあというイメージが頭に降りてくることがあったりするのです。

あるいは額をすでに持っていたり、作りたい額装のテクニックが決まっていたりする場合も街のなかの素材探しはたのしいです。こちらは最初から額の色柄に合うカードとかテクニックに合う素材はどれだろう?といったお題が決まっているため、漠然と何かを探すよりアンテナを張り巡らせやすいと言えるかもしれません。額やテクニックが決まっていて、そこにぴったりとパズルのピースがはまるような素材がでてきたらとてもうれしくなって、まわりに人がいるなかでひとり無言で喝采を上げたくなるような気分になったりします(でもそのあとすぐに作品作りに取りかからないと忘れ去られたりもしますけれど)。

こうした素材探しは額装のたのしさの一側面なので、次回そのおもしろさについてもっと深く掘ってみたいと思います。

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