夢うつつ

 1日の終わりに今日見た夢を思い出す。フラッシュバックのように、悪夢を思い出す。何者かに自分が刺されて逃げていく刺した人を眺めている。不思議と痛みは感じない。呆然と、予定調和だったように私は感じている。これは罪に対する罰なんだと思っている。
 その夢は私が男の人と寝た後に見た夢だった。身体を差し出す代わりに対価として金銭をもらう。今日は毎回のように私を指名してくれる人と初めての客だった。初めての客は目つきが鋭く、刺すように私の内面を見抜いていた。
「君は根からのM気質だね」
「君は本当は生きたくなんかないんだね」
「君はどうしてこんなことをしなければならないのか、分かってないようだね」言葉をかけられるたび、否定の代わりに私はキスをねだった。でも初めての客はそれに応じない。
「君が本当に望んでいること、してあげようか」
「して、して」
「じゃあやめる」
「どうして」
「マゾヒズムを刺激しなければ、つまらないだろ」そう言って客は愛撫をやめる。

 一通り行為が終わり、私は自室に戻ってベッドで眠る。その時に夢がやってくる。その時カチリと音がし、不思議に思いながらもまどろんでいる私は動けない。再びカチリと音がして、ドアが閉まるのを認識する。かろうじて開けた瞼が映したのは、ナイフを持った男だった。

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