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「新しいことに巡り会うのが生きがい」彼女を突き動かすシンプルな好奇心

「完璧になったら面白くないし、難しいからこそ語学が楽しい」そう語る私の友人のSさん(28歳)は、現在ニュージーランドにいる。ワーキングホリデーを利用して、2022年11月より滞在中だ。大学を卒業したばかりの2017年9月に行ったカナダに続き、二度目の海外滞在である。

兵庫で育った外国への興味

生まれた時から、彼女にとって異国は身近だった。
母方の叔母の夫がフランス人だったのだ。母と叔母は仲が良かったため、叔母の家族であるいとこや叔父と会う機会も多く、異文化に触れながら育った。

知的好奇心が強い彼女だが、勉強の楽しさを知ったのは高校時代だった。きっかけは一人のクラスメイト。才色兼備かつ文武両道の彼女に憧れたSさんは、これまで興味がなかった勉強に励むようになる。そして、頑張れば成績が上がり知識も増える楽しさに気づいた。楽しいからさらに勉強に力が入る。するともっと楽しくなる。そんな好循環に入り、気づけばその子よりも成績がよくなった。このとき、目標を持つ重要さと努力する楽しさを知った。

そんなSさんがもっとも力を注ぐのが語学だ。英語にはじめて触れたのは小学生の頃の英語クラブだった。
「クラブはすごく楽しかったわけではないけど、英語を話せたらもっと外国の人と話せるのかなと思いながら通ってた。小学校と同時に卒業したけど中学に入ってからも英語は好きだったかな」

言語への興味が強くなったのは大学に進学してからだった。実は、最初は大学に行く気はなかった。裕福な叔母の家庭を見て羨望を抱いていた彼女は、早く働いてお金を稼ぎ自分も裕福になりたいと考えていたのだ。しかし、祖父や両親の強い勧めに根負けして進学を決めた。

自ら進んで選んだ進学ではなかったが、フランス語にイタリア語やドイツ語など、英語のほかにも興味のある言語を貪欲に学んだ。新しい知識を得たり各言語の関連性を見つけたりするのが楽しかったし、ネイティブの先生と話すと海外とつながっている気がした。絶対に将来自分の役に立つ確信もあった。こうして外国語に触れるなかで、留学したい想いが抑えきれなくなっていった。

そんな想いから、大学卒業後も就職はしない道を選んだ。留学を目指してバイトを4つ掛け持ちした。運送会社と100円ショップでの接客を主軸としつつ、塾講師としてスキマ時間にもバイトをするという働き詰めの日々を送る。そうして目標の300万円を貯めた彼女は、卒業から半年後の2017年9月、カナダ行きの飛行機に乗った。

カナダで気づいた日本人が英語を学ぶ難しさと異文化の面白さ

人生初の英語での生活がはじまったが、最初は意思疎通も難しかった。ともに英語を学ぶクラスメイトたちも遥か先を歩いていた。

「日本人が英語やほかのヨーロッパ言語を学ぶことがいかに難しいかがわかった。欧米の言語はどれもルーツが近いから基礎はほぼ同じなのよね。でも日本人は、基礎をイチから覚えていかないといけない。最初はみんなすごく勉強したんだと思っていたけどそうじゃなかったんだよね。それで英語を上達させることはできても、完璧にするのは私には無理だなと悟った」
ただ、心が折れることはなかった。完璧には遠くても、確実に進歩は感じられる。先週は言えなかったことも今週には話せるようになる。

「そうやって少しずつ外国の人と話せることが増えて、新しいことを知るのが本当に楽しいの。あと、諦めて許容したからよかったのかも。『日本人には難しくて当たり前。間違えても仕方ない』って思ってる。心が折れちゃうのは、上を目指してて『できないからもうダメだ』って考えるからだと思うんだよね。でも私はできなくて当たり前だと思えたから折れなかった。それに私は過程を楽しむタイプで達成したら冷めてしまうんだよね。いつまでも達成できないからこそ楽しい」

カナダでは、日本との文化の違いも感じた。もっとも印象的だったのは、海外では中身で評価されることだった。彼女のこれまでの学生生活では、綺麗な人は綺麗な人と一緒にいることがほとんどだったし、可愛い子の周りにはいつも人が集まっていた。一方さまざまな国の人が集まるカナダの学校では、自分らしく芯のある朗らかな人の周りに人が集まっていた。綺麗でも意見を言わない人はポツンといることが多かったという。こうしたカナダでの体験を経て彼女は「違う文化に触れることの面白さ」の虜になった。

ニュージーランドで知ったこれまで知らなかった自分

帰国する時にはすでに、再び海外に行くことを彼女は決めていた。

「カナダも日本とは全然違ってたし、きっとまた別の国に行けば日本ともカナダとも違う体験ができるはず。そんな体験をもっともっとしたいと思うようになった。就職はいつでもできるけどワーキングホリデーは期限がある。それなら今しかできないことを優先させたいし、この期間とチャンスは大事にした方が私の人生にとってプラスになるって確信もあって、また海外に行こうと決めたんだ」

帰国後は次の海外渡航に向け、紅茶の専門店で働いた。外国に興味を持つ人も多い職場で楽しく働いていたが、コロナ禍の影響で閉店することになってしまう。掛け持ちで行っていたオフィスワークに励みながら、コロナ禍が落ち着くのを待った。そして収束の兆しが見え始めた2022年11月、再び日本を飛び出した。

ニュージーランドといえば思い浮かぶのは、自然の雄大さだ。Sさん自身も、自然が多くて人が穏やかで平和的なイメージを持って渡航した。

「カナダで滞在してたモントリオールは、街並みがすごくヨーロッパっぽい街だった。だから余計に感じるのかもしれないけど、ニュージーランドは本当に自然がいっぱい。木と花がたくさんあって人も少なくて解放感がある。…でもね、来てみて『私って意外と都会が好きだったんだな』って気づいてしまったの。もうびっくり。この歳になっても自分の知らない自分っているんだなと思って驚いた」

ニュージーランドに渡航前は、自分は自然が好きな人間だと思っていた。だが、いざ来てみると自分がほしいのは自然よりも刺激だったと気づいたのだそう。しかし、そこはポジティブなSさん。それでも来てよかったとカラッとした笑顔で話してくれた。

「ニュージーランドの働き方はすごく好きだしいい国なんだけど、シンプルに今の私には合わなかったのよね。でも、それがわかっただけでも収穫だし、自然よりも都会が好きだったんだ!って新しい発見もできた。これはニュージーランドに来なかったら永遠にわからなかったかもしれない」

そして憧れの地、ドイツへ

そんなSさんが次に暮らそうと考えているのが、小さい頃からの憧れの地であるドイツだ。ドイツといえば、ノイシュヴァンシュタイン城やホーエンツォレルン城などお城が美しい国だ。幼少期からこれらのお城に行ってみたいと思っていたという。ドイツでのワーキングホリデーを終えたら、オーストラリアへ滞在後、専門技術を学んでインターンシップもできる『Co-op留学』のためにカナダに行く予定だ。世界を飛び回ろうとする彼女のエネルギーはどこから湧いてくるのだろうか。

「シンプルに海外のことを知りたいからかな。どの国もひとつひとつ全然違ってて面白いしすっごく楽しい。将来は海外に永住するつもりなんだ。日本はいいところだけどたくさんの国を見るには不便だから、ヨーロッパみたいな国が密集している地域に住みたいなと思ってる。永住したとしてもその国から動かないんじゃなくて、たくさんの国に行くことはずっと続けていきたい。そのためには世界のどこでも働ける力が必要だから、Co-op留学にも行こうと決めたんだよね。言語も今やってる英語やドイツ語だけじゃなくて、他の言語もどんどん覚えていくつもり。世界中にお友達を作って、そのお友達の言語で話すのが今の私の夢なの」

彼女の夢は途方もなく壮大だ。でも、「完璧になったらつまらない、過程が楽しい」と話していた彼女らしい夢だと感じた。彼女の夢に向かう道のりを、友人として近くで見れるのが楽しみだ。

本記事は、宣伝会議「編集・ライター養成講座」の課題として提出したものを、再編集・再構成したものです。


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