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ある瞬間に、前触れ無く

 無性に何かをしたくなることがある。
その何かをする環境にない時に、無性にそれをしたいと思い始めるとすると、相当にイライラして、外見には分からないようにしながらも、心の中では、罵詈雑言を叫んでいることもあったりして、自分のことながら、イヤな奴だな、私は・・・と思い、悲しくなったりもする。
我が道を行くタイプで、周囲から白い目で見られたとしても、正直なところは、心が関与しない。気にならない。

 したいこと、今すぐしたいこと、ある事で、瞬間的に、衝動的に、したい、したいと感じるのだから、ワガママ、自分勝手の極み。

ただ、周囲からそのワガママが、今まで許されてきているのは、そのしたい事があまりにも、他愛のないことだからなのではと思う。

 街を歩いていて、すこぶる好みのコーヒーの香りが鼻をくすぐると、あー、仕事など投げ出して、今すぐカフェで美味しい珈琲を口に含みたいと鼻がピクピクする。

 つい先日、地方に行った際に、いくつかの土地を見て歩いていて、空き家かなと思える相当に古い家からピアノの音色が聴こえてきた。こちらはまだ寒い、お天気がよく、春めいてきてはいても、その日は10℃くらいで、窓を開けてピアノを弾くような気温でもない。気になって、ノッポの相棒を促し、その古い家を覗くことに、半分壊れているチャイムを鳴らすと、初老の女性が出てきて、ご主人が弾いているとか。
ノッポの相棒が、暗に私に早く帰りましょうと急かしているのを感じながらも、無性が始まってしまい。ノッポの相棒は、ムスッとした顔で、それからやや1時間、ピアノのそばの椅子に座って憮然としていた。

 無性にピアノを弾きたくなった。ただそれだけのこと。アレンジなしで、楽譜どおりに、丁寧に弾いている音色に、私の無性が瞬間的に始まっただけなのだけれど。ノッポの相棒は、痩せているのに大食いなので、ランチ抜きになったことが、怒りに拍車をかけたのか、帰りは運転しながら、よくまあ、そこまで言うものだわと、褒めてあげたいくらいに、ブツクサ言っていた。

 ピアノを弾きたい。墨をすって筆文字を書きたい。半分ほど読んだ本を最後まで読みたい。ご馳走になった手作りのチョコを私も作りたい。

ま、無性にしたいこと、瞬間的にしたいこととは、大層なことではない。


 手紙を書きたいと無性に思うことが度々ある。あるので、バッグの中には、絵葉書や切手や便箋と封筒のセットなどは入っている。


(切手2シート写真は郵便局のHPより)

絵本シリーズの切手。可愛くてカワイクて。

今はシールタイプの切手が増えてきたので、
出先で貼るにしても、貼りやすい。

手紙や絵葉書のやり取りをしている仲間は、
時代に逆らうかのように、私が送ると、まもなく返信が届く。

この絵本シリーズの切手を貼って送ると、皆一様に、切手を喜んでくれる。

郵便局でこの絵本シリーズの切手を目にした瞬間も、無性が始まった。手紙を書きたい、絵葉書でも書きたい。

カワイイ切手に、カワイイ無性の衝動ではないか。


今、この瞬間、こんな時間なのに、オニギリが食べたい、無性に食べたい。
具なしの、塩むすびが食べたい。