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大河ドラマ「光る君へ」感想 (20)


 ついにきてしまいました……長徳の変中、屈指の大事件。
 二条北宮の大索(おおあなぐり)!
 伊周ら、中関白家が失脚し、道長が躍進していく、まさにターニングポイント。
 政変劇にはつき物の陰謀や噂にまみれていますが、史実として確かなことは、伊周と隆家が花山院と闘乱騒ぎを起こしたことと、道長側はそれを最大限に利用した、ということ。
(ただでさえ立場悪いのに女院宅にもぐり込んで呪詛を仕掛るなんてことは、まあ、ないでしょうね……というか、なぜ女院を? という気もするし)
(でも、ご覧になりました? 晴明の反閇(へんばい)! お聞きになりました? 隆家は強き者ですって!)


*一条帝は私情に流されることなく、伊周と隆家の左遷を決める。
 定子は身内の不祥事のために内裏を出るように命じられた…………
 っていうのは、ちょっと極端な設定な気がするな。わかりやすくしたのかもだけど。
 事実として、定子が3月2日に内裏を退出し、一条帝の勅によって二条北宮に遷御した、とあるだけで、処罰を受けたような描き方は違和感。定子の立場はそんなわかりやすいものじゃなかったから、この事件はよけいに複雑だったんだろうし……

*反発する二人に対し、一条帝は勅命で検非違使を動かして大捜索を決行。
 この件に関してはたしかに一条帝は厳しい。
 伊周・隆家にしても、道長にしても、他の公卿らにしても、「舐められるわけにはいかない」という意思を感じますね。
 花山院=皇家に弓引く行為をなぁなぁで許す訳にはいかない。

*追い詰められ、爪を噛んで苛立ち、「大宰府になど行かーん!」とあくまでも抵抗する伊周(僕悪くないもん! な優等生おぼっちゃま気質全開)
「もはやこれまで」「母上、お健やかに」とさわやかに出頭する潔い隆家(いやそもそもあなたのせいなんですが!😂)
 そして定子さまは……狂乱の騒動のなか、自ら御髪を切り出家してしまう……(;_;)

*気になる点はいくつかあるけども、おおむねちゃんとしたドラマになってました。よ、よかった……

*一番ゲンナリしたのは清少納言ですよね。
 まひろを事件に絡ませたかったのか? (おそらく次回からの)枕草子執筆の大きなポイントを作りたかったのか?
 とにかくドラマ的に二人に現場を見せたかったのであろう定子出家のシーン。
 コントみたいな安っぽ変装とか木の枝とか、持つ必要あった??(T_T)
 あんなかんたんに侵入できる手薄な警備じゃ、もっと普通に侵入することもできただろうし、なんでもっと普通に潜り込ませなかったのかな? いっそ堂々と定子さま!って駆けつけたほうがまだマシだったかも。あれは心底心配してる人間の行動とは思えない。。
 高畑充希さんも迫真の演技だったけど、そこにカットインする二人のふざけた格好のせいでなんか気持ちが切れちゃったんですよね……超有名な、名場面になるはずのところなのに、残念。。

*以下は細かいツッコミポイント。

・内裏を出ることを「命じられた」定子がわりとあっさり再び参入。しかもそれを「左府が手引きしてくれました」←考証の倉本先生の著書にもあるように、修子内親王の出産が12月16日、つまり3月から4月にかけての頃に懐妊したはずで、その頃に定子は一条のもとに参っていただろうと予想される。
 それをドラマティック(?)に描いたのだろうけど、なんで「左府が手引き」? しかも肝心のその場面はなし。中宮さまが、一上とはいえ身内でもない臣下とホイホイ連絡とってちゃっちゃと移動できるわけもないのに、この一言で片付けちゃうのはドラマとして手抜きでは?と思う。

・清少納言は枕草子でも実際に「この頃ちょっと居りづらい空気になって」的なことを書いてるし、行成や斉信はじめ道長らとも親しくしていたことが原因で「裏切り者扱いされた」ことはあったようだけど、説明が不十分な気がするな……

・伊周が道長に「泣きながら頭を下げて懇願」???
 嘘でしょ、これほんとに必要な演出? のちのち、「この私が頭を下げて頼んだのにあの野郎……二度とあいつにへりくだってはならぬ!」みたいになる伏線とか??
 この後の呪詛やらなんやらが実資ら検非違使に漏れてたのもよくわからない……おそらく呪詛事件を誰か(詮子か倫子??)が仕組んでて、そこから情報流してるんだろうけど、とにかくもうそういうところの演出とかドラマの運び方が手薄で、視聴者がいちいち想像せなあかんのか、と。あとでネタばらしするならするで、兼家の時みたいにガッツリ映像化してくれたらまだマシだけど、わりとセリフだけで片付けられたりするのが消化不良。

・手に手を取らず、定子さまの手を振りほどく伊周つらすぎ。

・別当さま直々にやってくる実資😂 (土足でしたよね?)

・すわ、中宮さまご乱心か!? な大立ち回り。庭にいるまひ&ききょに見せるためとはいえ、あまりにも軽々しく表に出られる中宮さま……(この一連の騒動が妊娠初期の悪阻やらなんやらの頃かと思うと本当にお労しい🥲)


*さて、緊迫した今回でしたが、まひろ&道長のソウルメイツたちは……
 為時のために代筆した上奏文を目にした道長はぴーんときちゃう。
(これマジ何年前のだっけ?? 記憶力ハンパないって)
(それか、しょっちゅう取り出して眺めてる設定なんだとしたらそれはそれでイヤだ😂)
 大事にしまってあった昔の文を取り出し、まひろの筆跡と確信。
(奥さまが背後から見てる見てる!)
 そんな道長のプッシュもあり、晴れて為時は越前国守に任命されました。
(これって確実にコネパワーもプラスですよね;;)

*この件、ラブファンタジーのための被害者が多いよ。

①ちゃんとその能力を備えていて自分で書いて名文として残されてるの上奏文なのに娘が代筆したことにされちゃった為時。
 この話は『古事談』や『今昔物語』、『十訓抄』などにも載る為時を語るうえで有名な逸話なのになぁ。

②コネパワーを誤魔化すためか、びっくりするほど無能な奴にされてしまった源国盛。
 宋人が来着していて漢文の才が為時より劣っていたからチェンジされたのかもだけど、それにしてもずいぶん薄っぺら無能貴族扱いされててかわいそう。

③倫子さまはもはやホラー。

④メインカプだからだろうけど、こっちに尺をとりすぎて後半急にバタバタ慌ただしく描かれてしまった長徳の変サイドの人々。


 さてさて。
 次回、舞台はいよいよ宋人わんさかの越前へ。舟の沈み具合がリアル!
 と、その前に毎度おなじみの荒屋もまた登場!?(正直もうお腹いっぱいです!😂)



 余談ですが、先日考証の先生の対談を拝聴する機会がありまして。
 その折に先生曰く「越前編はラブファンタジー展開ありでわりと長いんですよ。紫式部は一年ほどしか越前にいないし、ドラマ一回分くらいでいいのにね」とのことでした😂

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