美しいものは、たくさんある。
今朝は、遅くまで寝ていた。
8時には、部屋の中はまぶしい光ですっかり満たされている。
昨日は早朝から忙しく働いたのに、夜の会議にふたつ出たあと、外でまた話して、結局みんなが寝るころに帰って、眠いはずなのにくったりして寝る準備が進まず、アイスを食べて、チューハイの缶をあけて、読みかけた本をぱたんと閉じてバタンと寝ちゃったよ。
起きたらシンクの中に伏せた缶がそのままで、テーブルの上には閉じた本がそのままあって、家族は朝ごはんを食べたあとだった。
ひとりでマグカップに1杯分コーヒーをドリップして、はちみつバタートーストをつくって、本の続きを読みながら食べる。
窓からは、隣のハルが気持ち良さそうに、ひなたにぺたんとねそべっているのが見えた。
今日もその姿に、しあわせを分けてもらう。
本人にそのつもりないだろうけど。
おとなりさんは、庭で何か作業をしている。
あぁ、庭の芝生が緑に生えかわるとともに、あちこちに雑草が伸びているのが目についてきた。
太刀打ちできないしぶといものたちだ、あれは…。
チューリップの花びらはすでに落ち、花壇のハーブたちは、新しい芽を出している。
はじめて見る冬を越した姿に、あぁ長く冷たい色のない日々、確かに力強く生きていたんだ、としみじみ思う。
うれしいけれど、なんだか気持ちが忙しい。
ついていけない。
手も目もおいつけない。
これが、春を複雑な気分にする理由でもあるな。
なにも、焦ることなんてないのに。
私は、私のペースで、と言い聞かせるよ。
桜が満開。
風が吹いてはらはらと花びらが舞い、時々子どもたちが飛ばしたボールが枝をかすめては、ぱさぱさぱさ、と雨のようにまとめて落ちる。
ここ最近、桜が散るのを見て寂しいような、焦るような気持ちがなくなったのは、よいことのような気がするな。
桜は、咲いている期間が短いからこそ特別感があるけれど、たぶんそのあとにもっと美しいものが、好きなものが、たくさんあることを知ったからだと思う。
昨日の夜、西の空に光っていた三日月を、明るい昼間の高い空に見つけた。
桜を見上げたときに、そのあいだの空に見えて、なんだかちょっとうれしくなった。
でも、やっぱり名残惜しいな。
今から夜桜見に行こう、って言ってみようかな。
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