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緊急事態宣言が解除になることを願ってやまない"ケチ"な理由

最初の緊急事態宣言が発令された2020年4月7日から、丸1年以上が経過した。東京では現在、3度目の緊急事態宣言が発令され、まだまだ外出自粛が求められている。

そんな状況を受けてかはわからないが、先日、クレジットカードの発行会社から「電子請求書に切り替えるのでWeb登録するように」とのハガキが届いた。少しでも郵送物を減らして、感染リスクを下げようという対応だろうか。

クレジットカード会社の思惑はさだかでないが、ハガキが届いたおかげで、そのクレジットカードをしばらく使っていないことを思い出せた。

上京する前、地元でつくった地方銀行のキャッシュカード兼クレジットカードだ。対応しているATMが少なく、東京へ来てからは使う機会がほとんどなかった。いまではすっかり、タンスの肥やしならぬ財布の肥やしになっている。

だが、すっかり忘れていたが年会費も無料ではない。1,000円ちょっとかかっている。たかが、されどの金額だ。思い出してしまったからには見過ごせない。

そういうわけで、さっそく解約するためにカード会社の連絡先を調べることにした。ところが、公式サイトをざっと確認した限り、解約に関する情報が見当たらない。

同じ問題に直面した先駆者のブログによれば、まずはWeb登録しないと解約の情報が見れないとのこと。なるほど、どうりで見つけられないわけだ。解約のために登録するとはなんとも釈然としないが、この際仕方がない。

いざWeb登録しようとすると、これがまたまたわかりづらい。地方銀行とクレジットカード会社の提携カードだから、どちらのサイトに登録すればいいかがまず不明瞭だった。

ああでもないこうでもないと四苦八苦しながら、先駆者のブログを参考になんとか登録を終える。無事、連絡先も見つけることができた。

これが年貢の納め時、と言わんばかりに勇んで電話をかけると、数コールでつながり女性の声が聞こえた。「こちらはサポートセンターです」機械音声でもない。電話がなかなかつながらない事態も覚悟していたが、杞憂だった。

「もしもし、クレジットカードの解約をしたいのですが」

心中で胸をなで下ろしながら、手短に要件を伝える。しかしホッとしたのもつかの間、電話口の女性の答えにわたしは耳を疑った。

「解約するには、最寄りの支店窓口へ行っていただく必要があります」

なんと、このご時世に? それしか方法はないのだろうか? いやいや、まさか。

カードを発行したのは地方銀行だ。わたしが現在住んでいる場所からは、最寄りの支店でも電車でゆうに1時間以上かかる。他の方法があってくれなければ困る。

「東京住まいで近くに支店がないのですが、ほかに方法はないのでしょうか?」

「なるほど、そうですね……」

滑舌こそ明瞭だったけれど、ややトーンダウンした声色からして、電話口の女性が答えに窮していることは明らかだ。いくらか間をおいてから、女性はつづけた。

「そうしましたら、カードを発行された支店にご連絡いただければ、もしかすると郵送での対応が可能かもしれません」

もしか、すると?

「ええと、つまり、窓口以外での対応は基本的に受け付けていないということでしょうか……?」

「はい、最寄りの支店の窓口へ行っていただくのが一番早く確実です」

なんということだ。

「年会費の請求は10月ですので、9月ごろまでに解約いただけば翌年の年会費はかかりませんので……」

彼女が最後に付け足してくれた内容は、あまり耳に入らなかった。

結局、わたしの選択肢は2つ。最寄りの支店窓口へ行くか、カードを発行した店舗へ問い合わせて郵送するか、だ。

後者は仕方がないにしても、「窓口へ行くのが一番確実です」と堂々と案内するのはいかがなものだろう。

そりゃあ、解約手続きを効率化したところで、企業にとって利益にならないことは理解できる。しかし、だからといって外出を推奨するのは、現代の企業倫理に反するのではないか。

もしも電子請求書への切り替えが感染リスクを下げるための対応だったとして、これでは台無しである。

はぁ。

まあ、そんな悪態をいくらついたところで話は進まない。頭を切り替えよう。

できれば今すぐにでも解約に行きたいが、たかが1,000円ちょっとのためにこのタイミングで外出するリスクを負いたくはない。これが、「今すぐ行かなければ10万円損をする」というのなら、行く気にもなろうものだ。1,000円というのは、なんとも決め手にかける金額である。

しかし、じゃあ郵送でなんとかするにも、いまさら支店へ問い合わせるのはめんどうで気乗りしない。解約の連絡をするまでにもさんざ調べているのだ。正直いって、もううんざりである。その手間をかけるくらいなら、1,000円支払ったほうがマシだとすら思える。

かといって、このまま支払い続けるのはやっぱり癪だ。たかが1,000円ちょっとの年会費とはいえ、無駄とわかって支払い続けるのは、靴に小石が入り込んだようなうっとうしさがある。

――と、そんなわけで、なんともせこい理由だが早くこの状況が落ち着くことを願ってやまない。気兼ねなくクレジットカードの解約に行ける日が来ますように。

編集:香山由奈

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