ソニーの“あんこ”(エニア話ではなく)

組織をまんじゅうと見た場合に、ソニーという お饅頭のあんことは何かという話を書きます。

以前書いた
注意力が散漫で、忘れっぽくって、部屋が散らかっているあなたには「創造性」があるかも
の最後のほうで、
『組織の理想形は「まんじゅう」だと思う | ECコンサル坂本のブログ「ECバカ一代」』

も読んでみることをお勧めしました。

そこではこのようなことが書かれていました。

ビジョンを掲げる「あんこ人間」には、進むべき方向が見えています。ただ、あんこ人間は、味が濃い目で主張が強く、ベタベタして扱いにくいため、あんこ単体では食べられません。

そこで必要なのが、包む「皮人間」です。


それで、ソニーの表面上の見てくれという皮ではなくて、
本質のあんこは何なのか?
ということを考えてみたときに、
以下の話が面白いです。

『「ソニーの本質は高級なおもちゃ会社」:日経ビジネス電子版』
において、
丸山 茂雄(まるやま・しげお)氏が語っています。

(略)ソニーグループを俺が離れた時期に、よくメディアの取材を受けたんだよ。するとほぼ必ず、俺は逆に記者さんに質問をしていたの。「ソニーの競合はどこだと思いますか」ってね。

そうするとみんな、パナソニックとかサムスンとか、国内外の電機大手の社名を挙げる。だから俺が言ってあげるの。「いやいや、ソニーの競合はバンダイ(現バンダイナムコホールティングス)だろ」って。
よく考えてみてよ。ソニーが作るものって、ほかの電機大手と違って白物家電はないし、社会インフラを担うようなものでもないし、軍事関連製品でもないよね。全て生活必需品ではなくて、やっぱりおもちゃなんだよ
みんな勘違いしていると思うけれど、ソニーは技術の会社じゃない。
パナソニックを創った松下幸之助さんと、盛田さんを比べると分かりやすいけど、盛田さんの生い立ちがソニーの多角化の背景にあると思うよ。

パナソニック創業者の松下さんは、一般的に言われているのは、裕福な家に育ったわけではなくて、電球のソケットを作って立身出世していくわけでしょ。だから今のパナソニックは電球を作っているし、生活必需品の白物家電や住宅とか、社会インフラに近い事業もやっているんだと思う。

だけどソニーは同じ電機業界の会社でありながら、テレビやオーディオみたいなデジタル家電はやっているけど、白物家電はやらない。この違いは、松下さんと盛田さんの生い立ちの違いだよ。だからパナソニックは生活に必要不可欠な必需品を作るし、ソニーは生活必需品ではなくて娯楽に近い電機製品だけを作っている。

なんでソニーがそうなったかというと、盛田さんが名古屋の田舎の酒蔵のボンボンで、派手な生活が好きだったからだろうね。
オーディオが好き、カメラも好き、音楽や映画も大好きだった。

そんなハイカラな生活が好きな地方の酒蔵のボンボンが盛田さん。当時はみんな貧しかった日本で、裕福な家に生まれた人が創業者の一人だったというのがソニーなんだよ。だから盛田さんはソニーで、自分がやりたい事業を好きなようにやってきた。
盛田さんのやってきたことを冷静に見れば、あの人はソニーをエレキの会社だとは思ってなかった節がある。だって、エレキのハード屋の会社だというなら、なんで冷蔵庫や洗濯機など白物家電を作らないのと思うよね。

技術の会社なら、重電みたいな社会インフラまで突き詰めてもいいと思うけれど、そうはならなかった。創業時は電気座布団や炊飯器といった白物家電を作ってしのいでいたのに、会社に余裕が出てくるとそこには戻らなかった。
一方で米国の映画会社や音楽会社を買い始めるわけでしょ。こんな発想はソフト分野に近い人じゃないと出てこない。ソニー創業者の井深さんがハード屋だったことは間違いない。けれど盛田さんはソフト屋だったんじゃないかと思うよね。
(略)
で、コンテンツにとどまらず、金融分野にまで出ていっちゃった。保険や銀行などの金融事業をやりたがったのは盛田さんだよ。盛田さんの願望を身近で聞いて、それを具体化したのが伊庭さんなんだ。

こうして見ると、ソニーのエレキ事業の利益を使って、田舎のハイカラなボンボンが、子供の頃に好きだった映画や音楽の会社を次から次へと手に入れたというのが、これまでのソニーの歴史ってことなんじゃないか。盛田さんやその親族も含めて誰もそんな説明をしたことないけどさ。

「ソニーの競合はどこだと思いますか」と問われて、
パナソニックとかサムスンとか、国内外の電機大手の社名を挙げる記者さんたち、表面的な饅頭の皮にだまされているようです。
あんこ(本質)をとらえきれていないようです。

記事を読んでいく中で、
ソニーのあんこ、見えてきました。
成田さんの存在が大きいことがうかがえます。
成田さんは、ソニーのあんこだったんですね。


ここで話を終わらせてもよさそうなものですが、話を続けます。

一方で、ソニーの特殊性を語る話もありました。

『「ソニーの使命は大賀時代で終わっていた」:日経ビジネス電子版』

では、こう書かれています。

1種類の商品がバカ売れして何兆円も売り上げてきたソニーのような会社は、日立製作所のような総合力の経営というわけにはいかない。「これがいけるんじゃないか」「これが当たればソニーはまた大きくなる」という、盛田さんや大賀さんみたいな抜群の先見性があって、鼻の効くカリスマが頑張らないと経営できない会社だったんだよ。


『「管理屋の跋扈でソニーからヒットが消えた」:日経ビジネス電子版』においても「目利きができる人」が必要と書かれていて、「鼻の効くカリスマ」と同様のことが語られています。

ウォークマン開発で参考にすべき最大のポイントは、「斬新なアイデアを、誰にまず披露して、バックアップしてもらえるようにするべきか」という部分だろうね。そういう目利きができる人に最初に話をもっていかないと、いくらおもしろいアイデアでも、理解されずにつぶされてしまう危険性があるからさ。

ソニーは、その、あんこの部分において、「抜群の先見性」が求められている会社でもあったようです。
では、ソニーのあんこは盛田さんだけだったのでしょうか?

引き続き、『「管理屋の跋扈でソニーからヒットが消えた」:日経ビジネス電子版』において、
初代ウォークマンを開発した大曽根幸三(おおそね・こうぞう)氏の話を引用します。これを読むと、井深さんの影響もあることがうかがえます。

そもそもは井深(大、ソニー創業者)さんが海外出張に行く際に、飛行機の中で自由に音楽を聞きたいということで、「何かおもしろいものはないか?」と、当時テープレコーダーを作っていた私の部署に、ふらりと来たことがきっかけだったんだ。

井深さんは喜んでくれてね。海外出張から戻って来たら、「あれ、よかったよ」って言ってくれた。

なのにさ、私の直属の上司は、「そんな録音機能もないものを作ってどうすんだ」と反対したんだ。だから最初は大変だった。大賀(典雄、元ソニー社長)さんも直属の上司と同じ意見でさ、「録音機能がないと売れない」と言っていたんだよ。だけど、このあと、たまたま大賀さんが長期入院してしまったんだな。

私にとってみれば、大賀さんを飛び越して、井深さんや盛田(昭夫、ソニー創業者)さんと直接交渉する隙が生まれた(笑)。もともと応援してくれていた井深さんと盛田さんを味方に付けて、「(大賀さんが入院していると見込まれる)3カ月間で作っちゃえ」となったんだ。
井深さんはよく、モノ作りの現場に来てさ、「次は何を作ろうか」っていうのが口癖だったね。この言葉が、一兵卒の技術者としては嬉しくてさ。
つくづく思うのはさ、「ソニーには、自由闊達な社風がある」と言われ続けてきたけど、実は“社風”なんてものはこの世に存在しない、ということなんだよ。

 あるとすれば、“社長風(しゃちょうふう)”。

社長の考え方をいかに周りの幹部や社員たちに伝えて、感化させていけるのかということが組織の行く末を決めるんだ。それが今も社風という言葉で言われるけど、突き詰めると会社の社風ではなく、それは社長の生き方や考え方なんだ。


『「ソニーも大将が変わればがらりと変わる」:日経ビジネス電子版』

既存製品の延長線上にあるような新製品のアイデアを井深さんに提案したりすると、「もっと飛躍した発想はできないのか」と叱られたりね。私が課長くらいの頃から、井深さんには厳しく鍛えられたよ。
今は、新しい部品を開発してソニーに持って行っても、「この部品は採用実績があるのか」「他社はどう言っているのか」なんてソニーの社員が言うんだって。もうビックリだよ。

昔はさ、むしろ他社での採用実績がないことがメリットだと評価して、ソニーの最終製品に使う部品として率先して採用していたんだ。

だって、そうじゃないと新しい商品にならないから。実績や他社の反応とか聞いてから採用するか決めていたら、他社に先駆けるような斬新な製品は作れないよね。実績なんて気にせず、この部品はいけるかどうかのポテンシャルを目利きして判断しなきゃ。

『「立ち上がれ!ソニーの中の“不良社員”」:日経ビジネス電子版』

井深(大、ソニー創業者)さんは生粋の技術者だからやりたいことは一つ。ハードウエアの分野で次々と新しいモノを作りたかったんだと思う。
盛田さんは井深さんとは違って興味の範囲が広かった。だから、映画や音楽といったエンタメ分野や金融分野といった、経営の多角化を進めたんだろうね。

これらを読んでいると、あんこはひとつではなかったようです。
「田舎のハイカラなボンボン」と「ハードウエアの分野で次々と新しいモノを作りたかった生粋の技術者」
皮に包まれた向こうに、2種類のあんこが調和して私たちを魅了していたようです。


感想として、
「皮の向こうのあんこを感じることがいかに難しいか」
そう感じました。
今回のように、分かりやすく解説してくれる人がいないと難しいですね。

もうひとつ思ったこと、
「これが人の場合ならどうなのだろう?」
ということ。
宇宙旅行に興味を持っていた少年が大人になって宇宙を舞台にしたガンダムを作ったり、

「子供は大人の父親」という言葉があるそうで、子供の頃、あんこが作られていき、大人になって、皮を通して世間と対話する饅頭になったとしても、その向こうには、小さいときから培われたあんこが存在しているんですよね。
まあ、むきだしあんこの人もいるかもしれませんが。

これを書いていて思ったのですが、いつもエニアグラムを書いている私ですが、たぶん、他の人とはまた違ったあんこでもって、エニアグラムを書いて、語っているのでしょうね。
なんてことも思いました。

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