【詩】蝉の、雨の、夏の朝。

 ベランダに蝉が入り込んだのか、というくらいに、けたたましく鳴く。鳴き、叫ぶ。
 目覚まし時計のように、鳴く。ジリリ、ジリリ。ジン、ジン、ジン。ジー、ジー、ジー。
 ああ、しかし、何年も土の中で過ごして、やっと地上に出ても、羽化成功率はあまり高くない、と少し前に何かで読んだ。それならば、奇跡のような確率で地上で鳴くことができる蝉よ、自由に鳴く権利を認めてあげたい。認めざるを得ない。私の朝の睡眠少し、犠牲になっても文句は言えない。
 雨の日は鳴かない、晴れた日だけと思い込んでいたが、いや、雨の日も鳴く。ジリリ、ジリリ。ジン、ジン、ジン。ジー、ジー、ジー。限られた日々、雨でも休むわけにはいかないのだろう。必死に鳴かないといけない、生きる上での義務に思いを馳せる。思いを馳せたくなる。

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