見出し画像

ジン君と「Moon」とキムソクジンと

皆は僕を美しいと言うけれど
僕の海は 真っ暗で

 

僕の辛い傷まで君にすべて
見つかってはいないだろうか

  

♪レレーシラーソーレ レレーシラーシー(私の無駄な絶対音感)。

ファンに贈るこのとってもかわいい曲を響かせるのは、BTSのジンという人だ。

 

2020年2月21日(金)BTSのニューアルバム「MAP OF THE SOUL:7」が発表された。彼らのファンになることではじめて知ったのだけれど(※昨年秋にころんだ初心者)、アルバムを引っ提げこれから様々なプロモーションが行われるそれを「カムバック」と言うそうだ。BTSはアメリカをその活動最初の場に選び、多くの番組に出演していた。

 

アルバム発売当日、私は大きな仕事が早朝からあって、彼らの動向を追えられなかった。夜に会社でようやくツイッターを開けたのだけれど、その時私のツイッターのタイムライン上にニューアルバムに収録されている楽曲「Moon」の日本語意訳が流れてきた。

「Moon」はジンのソロ曲であり、彼が「ファンに贈る」表現を描いたものと事前にアナウンスされていた。


BTSの長兄・ジンはとても不思議だ。

「ジン」は私たちファンや視聴者、またメンバーに対し先陣を切って笑いに誘って楽しませてくれる人だ。

「アイム・ワールドワイド・ハンサム」と世界中のどこのマス媒体の前でも宣言しちゃうし、韓国のバラエティ番組では「おじさんっぽい」話し方と親父ギャグを惜しみなく披露するし、リアリティ番組では訪れたお店の店員さんや、また道すがら出会った誰にでも話しかけちゃう、どこか羨ましいメンタルを持っている。メンバーといるときはおおらかな性格からか弟組にいじられてはじゃれあって、「まるで窓を拭いているかのよう」な甲高い笑い声をあげている。

彼らが出演していた「THE TONIGHT SHOW JIMIN FALLON」をリアルタイムで見ていたのだけれど、ゲームパートでは「奇声」をあげていて、思わず噴き出してしまった。

また「Carpool Karaoke」では「(英語が)何いってるのか分からないけれど笑っとこ!」と韓国語で言ってはそれがきっちり英語字幕で抜かれたり、ニックネームを尋ねられたとき、お決まりの「WWH=ワールドワイドハンサム、ユーノウ?」と答え、MCが「それ僕の学生時代のニックネームなんだけれど?」とふざけると、「You are JOKE GUY!!  HAHAHA!!」と周囲の爆笑をかっさらっていた。

彼を見ていると元気が出てくる。国籍も違う遥か遠くのスーパースターなのに、親近感がわく。とってもすごい人だ。


そんなジンが「どや!」とばかりに見せてくれるパブリック部分に惹かれて、私はファンになった一人だけれど、最近またBTSが世界中を旅する番組「ボンボヤージュ」を見返していくなかで(ちなみに私は狂ったようにボンボヤが好きです)、「おや?」っと思う場面に、探りたがり屋の好奇心から勝手に想いを馳せていた。

 

ボンボヤ3・マルタ編でユンギが先に帰国し、料理をおおよそ一人で担当していたジンは夜にキャンプ場で火をおこし、そこでスーパーで購入したお肉の串を焼いていた。しかしトングが滑ったためか串をひとつ、地面に落としてしまう。誰も責めてもいないし、むしろ励ましてくれるくらいなのに、彼は「肉を落としたこと」に対し尋常ないくらいに落ち込む。

その後ソーセージを焼きながらも「さっき僕は肉を落としてしまったから食べなくてもいい」とまで言ったりする。さらに落としたことを贖罪するかのように、メンバーが食事をする中で場を離れスタッフとその傍らで火おこしをしていた。

「いや何もそこまで(肉ひとつくらいで)……」と思ってしまった。

 

また次の日の夜、自由時間に他のメンバーのおおよそがそれぞれ街に繰り出すのだけれど、ジンはレストランでひとりでテキーラをあおっていた。地元のバーに繰り出し、持ち前のメンタルの強さで店員さんに話しけては楽しそうに会話するのだけれど、そこで「英語がしゃべれない」ことに少し気落ちしているようで、酔っ払っては宿の鍵も開けられなくなっていた。「僕はいつも一人で宿舎にこもっていて」「一人でご飯を食べにも行くんです」と、いま一人でいることが寂しい、それを裏返すような言葉を何度も口にしていた。

 

ボンボヤシーズン4では、これまたキャンプ地で「SUVに本当に一人で寝るの!?」と訊かれては、無言で大きく何度も首を縦に振っていた。BTS内では長男で時おり厳しさと優しい穏やかさでメンバーを引っ張っていく彼だけれど、実の兄弟ではお兄さんがいる末っ子らしい、かわいい男の子がそこにいた。

 

そうやってたまに垣間見える繊細すぎるとも思う彼の人格は、私が一番最初に好きになるきっかけをくれたパブリックイメージとまた違っている。

もしかしたら、この彼が「キムソクジン」の一欠片なのだろうか。

 

「LOVE YOUR SELF」シリーズのアルバムで語られたのは自己愛だった。その上で今回発表されたアルバム「MAP OF THE SOUL:7」は現状と取り巻く環境と自分を受容し、さらに前へと進むこと、それを宣言するかのように伝えてくれている。

メンバーがこれまでの7年間の活動で築いてきた、食らってきた強烈な光と濃くなっていく影、パブリックとパーソナルな部分。それらを言葉とメロディと圧巻のパフォーマンスで見せつけてくれている。

 

どんなことがあっても戦い生きると繰り返す、アルバムのリード曲「ON」は、とてもパワフルでかっこいい。


そのアルバムに収録されている「Moon」の歌詞を、先に読んだ。

ジン君は不思議な人だと思った。なんだかやっぱり、つかめない。


こんな妄想をしてみる。例えば、私がライターになってBTSを取材するとしたら、ああ今日のインタビューは自分の実力不足だったなぁと凹ませてくれるのはジン君じゃないかと思う。

インタビュー中、明るく優しく彼は丁寧に受け答えしてくれるに違いない。当たり障りがない質問には楽しく心地よい笑いで返してくれると思う。

でも芯をつくような質問には、きっと誤魔化されてしまうんだろう。

 

ジンは「自分の苦労は自分だけが知ってればいい」と努力の跡を見せないし、あまり胸の内を語りたがらない。メンバーが個別に受けるインタビュー番組を見ていても「自分を表現するのがへただから」と多く言葉にしようとしない。

 

 何の番組か忘れてしまったけれど「(芸名の)ジンである自分に(本名の)キムソクジンが近づいていければいい」と語っていたのが印象的だった。パブリックなジンは、キムソクジンの理想らしい。

僕は名前すらなかった
僕が君に出会うまでは
君は僕に愛をくれて
今は僕の理由になった

 

VLIVEで放送されていたカムバック番組で、「もし14歳に戻れるなら?」という質問にジンは「20歳になって建大に行ってバスに乗る」と答えたそうだ。バスでソクジンはスカウトをされた。生まれ変わってもソクジンはBTSのジンを選ぶ。

キムソクジンはジンでいることが幸せなのかもな、と思う。そしてジンで居させてくれるファンを愛している。

 

ちなみに彼はメディアを通じて話す言葉はふんわり包む印象だけれど、ファンを前にするとドキリとするような事実や想いを伝えてくれたりする。VLIVEで急に前髪を自分でガタガタに切ってしまった時みたいに。涙を流しながらこぼれるように出た「解散」という言葉、途中そんな(たぶん言っちゃいけないことだったんだろう)自分自身に笑ってしまった、2018 MAMA 大賞スピーチのときみたいに。ジンはファンに対してとても誠実な人だ。

画像1

君の周りを回るよ
君の隣にいるよ
君の光になってあげるよ
すべて君のために

 

常々思う。音楽を理解するのって難しい。

クリエイティブは一方通行だ。

作り手の意図が本意が完璧に伝わることは少ないし、受け手は自分の「共感」をのせて解釈する。誰かに届いた時点で、その人のものになる。だから私のいまつらつら書いているあれやこれやも自分勝手なそれとしてどうか許してほしい。

 

繊細で恥ずかしがりやで寂しがりやのジン君が今回のアルバムで心をどう描くのか興味深々だった。

「バレていないかな」

自分の闇と傷をそう表現してきたジン君は、やっぱりどこか誠実な隠したがりやさんに思えた。

「Moon」は、ソクジンが<思い切って>こっそり教えてくれた、ジンの秘密を共有させてくれる曲なのかもしれない。

ファンに「それ」を見つけてほしくないと言ってしまう彼は、かわいくてとても微笑ましい。だとしたら私も見てみぬフリのまま、歌からくれる愛を素直にもらおうと思った。「アイドル」のジンに惹かれ、時に救われきた、何百万人のなかのイチファンとして。

 


先週の金曜夜に話は戻る。そろそろ帰宅しようと外に出た。気付いたらもう深夜になっていた。朝から頑張った大きな仕事は、大変うまくいったし、少し高揚していた。

Air podsを耳に装着し、ワクワクしながら「Moon」のメロディを聴いた。ジンの奏でる澄んだ高音が響いて、それは期待したとおりとても明るくて綺麗で、愛おしかった。

きっとこれからこの曲を聴く度に、何者でもない自分がちょっとだけ大切に思えたこの日を、私は思い出すんだろう。

 

久しぶりに東京の空を見上げる。闇に浮かんでいる月は、美しくて、とても優しく思えた。柔らかく照らしてくれる光を眺めながら、今日も明日も未来も、キムソクジンがジンである日が続けばいいな、とこっそり願った。 




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ジン君に関するそのほかの記事です☆



ツイッターアカウントつくりました⭐︎

※この記事はほかのサイトから修正し転載しています(同筆者)

この記事が参加している募集

私のイチオシ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?