見出し画像

つながりは謙虚な問いかけからー広石コラムVol.4

人との関係で何かうまく行かない時に、自分なりに一生懸命に相手に伝えているつもりなのに伝わらなかったり、同じ目的を目指しているはずなのにわかり合えなかったりといった状況に陥ると、八方塞がりになってしまいます。そんな時に、ぜひ読んでいただきたいコラムです。「あ、そうだった!大事なことを忘れてしまっていたな」と頭の中がリセットされて新たに考えるきっかけになると思います。(事務局 新村)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

キャリア・アンカーなど組織・キャリアの心理学で有名なエドガー・シャインに「問いかける技術」という本があります。原題は「HUMBLE INQUIRY」で、「謙虚な問いかけ」というような意味になります。

そこには、私たちが日頃している「問いかけ」には、4つの側面があると述べています。
・謙虚な問いかけ
・診断的な問いかけ
・対決的な問いかけ
・プロセス指向の問いかけ

「診断的な問いかけ」は、物事を見極めよう、理解しようという問いかけ。「対決的な問いかけ」は、自分の言いたいことを伝えるために問いの形をとるもの。
 (例 「本当にそれでいいと思っているのですか?」)
「プロセス指向の問いかけ」は、問いの中身よりも会話の進行に使われる問いかけ。
 (例 「次の議題に進んでいいでしょうか?」)

それに対して、「謙虚な問いかけ」は、自分が知らないこと、自分に足りないことを積極的に認め、相手の経験や考えに関心を寄せて問いかけることです。診断的、対決的、プロセス指向も、謙虚な問いかけの場合も、そうでない場合もあります。それは、相手と自分の関係性の構築を、どれくらい大切にしているのかによります。

そして、シャインは、「人間関係の構築よりも、課題の遂行に価値をおく文化」が謙虚さを妨げており、その結果、本当は関係性があればスムーズに進むことが関係性の構築に時間も労力もお金も投資しがないままに進めることでトラブルや問題となっていることが、とても多いと指摘しています。

これは、私たちの仕事や生活の多くの場面でぶつかっている課題だと思います。起業家が新しいことを始めようとしても、周りと関係性がなければ、「出る杭は打たれる」となります。行政が新しい施策を急に打ち出しても、住民はついていけません。企業において経営層が改革策をつくって一方的に社員に伝えても、現場では動きません。

住民や社員らと対話やワークショップを積み重ね、新しいことの意味、なぜ必要なのか、どんな不安があるのか、といったことを分かち合うプロセスが必要・・・ということは、多くの人が理解している。しかし、そこに必要な投資を十分には行っていないし、むしろ面倒なことと後回しにしていると、シャインは指摘しています。

これまで「自分の力で問題を解ける人」が優秀だとされてきました。学校の試験では、一人で正しい答を出せると高い点がつき、「頭がいい」とされます。そうすると、自分がわからないことを、わからないと人に伝え、助けてもらう人は、一人で解ける人よりも「劣っている」と思ってしまいがちです。そうすると、協力や関係性づくりのことも、どこか軽視してしまうのでしょう。

問いかけというと、「自分で考えるための情報集め」「自分の主張」と思われがちです。しかし、相手のできることに関心を持ち、自分のわからないことを分かち合い、相手との関係性を培いながら、ともに考える「問いかけ」は、一見遠回りに見えますが、多くの問題やトラブルを先に進める突破口になるのではないでしょうか?
                   エンパブリック代表 広石
                     (2017年3月24日記)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

わかってはいても、目の前の「事」に集中してしまうと、つい、根本的に大切なことを忘れてしまいがちです。簡単なことをわざわざ難しくしてしまっているのかもしれないですね。何か出来事が起こった時に、お互いの関係性、つながりでスムーズに解決できると、本当の意味でのつながりを生んで、また次に続いていくのだなとつくづく感じました。(新村)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?