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姉妹本「ソーシャル・プロジェクトを成功に導く12ステップ」って、どのような本?

書籍「SDGs人材からソーシャル・プロジェクトの担い手へ」のできるまでを紹介しているシリーズの3回目。今回は、この本が「ソーシャル・プロジェクトを成功に導く12ステップ」の姉妹本として制作されましたことから、前著「ソーシャル・プロジェクトを成功に導く12ステップ」は、どのような内容なのかを紹介し、そこから今回にどうつながったのか、紹介したいと思います。

社会問題は原因が一つではない”複雑な問題”

「ソーシャル・プロジェクトを成功に導く12ステップ」は、悪魔退治(今なら鬼でしょうか)の話から始まります。
ある村で悪魔のために、たくさんの人が飢えや貧しさで困っていました。そこに勇者が来て、悪魔を倒したことで、村はみな豊かな暮らしができるようになりました。
このようなストーリーが成立するのは、「悪いのは悪魔」と明確になっているからです。多くの物語は敵のトップがいて、ゲームにはラスボスがいて、それを倒せば、平和が訪れます。ラジオのような機械なら、壊れた部品を取り換えれば修理完了です。しかし、今起きている社会問題はそうはいきません。それは、実際の社会問題は何か一つの原因で起きている訳ではなく、社会問題は多様な要素・要因が相互作用しながら生じている“複雑な問題”だからです。
このような問題を解決するにはどうしたらいいのか、それがこの本のメイン・テーマです。

”複雑な問題”には”複雑な解決策”を
それがソーシャル・プロジェクト

 “複雑な問題”は、一つの原因に還元できません。それだけでなく、良かれと思っていた解決策が、後々、悪影響を与えることがあります。
例えば、食べ物がなく困っている人がいるとします。死にかけている人に食べ物を上げることは必要ですが、そのままかわいそうと食べ物をあげ続けていると、その人は「食べ物はもらわなければ生きていけない」と考え、依存して生きていくようになるかもしれません。助けるはずが、困難な状況から自力で抜け出しにくくしてしまうのです。
これは助成金などでも同じことがよく起きます。困っている人の一時的な支援のはずの助成金が、「助成金がないと事業ができない」という事態を起こしうるのです。
食べ物や助成金を与える取り組みと同時に、自分で生きる力、生きやすい環境の整備、相談で着る相手などを整えていくことも必要です。多数の要素が影響し合って起きる“複雑な問題”には、多数の課題解決策が相互影響しあう“複雑な解決策”が必要です。これを“コレクティブ(集合的)な解決策”と呼ぶことができます。そして、多様な主体がコレクティブな協働によって取り組むプロジェクトは「ソーシャル・プロジェクト」と呼ばれます。

多様な主体と協働するための協働ガバナンスと12ステップ

ただし、このコレクティブな解決策は、一筋縄ではいきません。
“複雑な問題”は最初から全体像が見えない場合がほとんどです。実際に動いてみたり、ある解決策を試してみて初めて表面的な問題の奥にあるものが見えてきたり、解決策に必要なことを理解できるようになったりします。
これまでの課題解決策は、動く前に課題分析をし、間違いない解決策を定め、実施計画を立てていました。そして動き始めたら計画通りに実行し続け、成果を生み出すことができました。そのような線型的な進め方は、特に変化が激しい状況での“複雑な問題”には通用しません。
最初から決めるのではなく、動いてみての失敗と成功から素早く学び、問題理解も解決策も、どんどん更新していく必要があるのです。“複雑な問題”には、多様な主体との協働を循環型で進めていく必要があるのです。
その進め方の基本的な考え方を図にまとめたのが「協働ガバナンス」の図であり、そのステップを12にまとめ、それぞれのポイントをまとめたのが「成功に導く12ステップ」なのです

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問題解決のパラダイム転換が必要

これが書籍の概要です。この説明だけだと具体的にわかりにくい。そう感じた方は、ぜひ書籍を手に取ってみてください(笑)。
この書籍は、佐藤真久さんの現場経験と世界の実践を踏まえた理論と、僕の現場で取り組み、数多くの実践事例から考えてきたこととを組み合わせて、社会問題の解決に必要なことをまとめました。
ただ、書籍を出してみて感じたことは、このシリーズの(1)でも書きましたが、この本の内容はある人には「そうそう!」ということであっても、別の人には「違和感がある」ということでした。そして、「悪者探しはしない」「コレクティブな協働」「事前の計画ではなく動きながら」「プロジェクト・マネジメントより協働ガバナンス」「動いてみて素早く学ぶ」などの言葉は、伝わる人にはすぐ伝わるのですが、「わかるけどそう動けない」という人、言葉の意味を違うように捉えている人も多数いると感じました。
前著の第2章でも、「問題」「問題解決」などの言葉の意味が違ってきていることを解説したのですが、ただ言葉の意味や手法の違いということではなく、問題解決のパラダイムの転換を自覚してもらうことが大切なのだと考えました。

ソーシャル・プロジェクトの担い手の考え方・動き方は持続可能な世界へのトランスフォームにも不可欠!

そして、問題解決のパラダイム転換が、今、とても大切だと考えている理由は、持続可能な世界を創るための私たちの考え方・動き方のパラダイム転換と呼応しているからです。
世界で起きている問題をシステム思考で捉え、自分の物事の基にある常識を自覚し、感情や共感を大切にしたコミュニケーションを通して、今までの常識を捨てて、より深く問題を理解し、多様な視点・知恵を持ち寄る新しい解決策を生み出していく。
その実践方法(Do)としてのソーシャル・プロジェクトに携わる人には、自分の考え方、動き方の基になっていること(Be)を丁寧に見直していく必要がある。だからこそ、Doに対するBeの本が姉妹本として必要だ。そう考えた結果、書籍「SDGs人材からソーシャル・プロジェクトの担い手へ」が生まれたのです。

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