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「ぴりーこぱんのたんじょうび」⑧

8:ぴりーこぱんの、とうがらし

 われわれは、うごかなくなったぴりーこぱんをだきしめた。
「お星さまにいのちをさずけてもらったばかりだというのに、どうしてこんなことに・・・」
わたしはなげいた。気まぐれに空からおりてきたお星さまは、また気まぐれに空に帰ってしまうのだろうか。わたしたちはこの子の親として、お星さまにみとめてもらえなかったのだろうか。
「お星さま、どうかそのままお帰りにならないでください!この子がふしぎな力をもっていようと関係ありません。この子はわたしたちの大切な子どもです」
ぐーさまは空に向かっていのりをささげた。わたしもそれにならい、ひっしでいのりつづけた。
すると、いのりがとどいたのだろうか。どこからかふしぎな歌が聞こえてきた。

 ぴりーこぱんにあえるのは しらないよ しらないよ
 なんじにくるのか なんじになるのか わからない わからない

光かがやくものが、こちらに向かってとんできた。
見ると、ぴりーこぱんがはじめにへんしんしていたのと同じ小鳥が、何か光るものを足につかんでいるのだ。それは、小さな赤いとうがらしだった。小鳥はわれわれの前におりてくると、とうがらしを地面において言った。
「ぴりーこぱん、おとしものだよ」
「ぴりーこぱん?まだこの子に名前はつけていないはずだけど・・・」
ぐーさまが言うと、
「さっきあそんでたときに、このこがじぶんでぴりーこぱん、っていったんだ」
小鳥が答えた。わたしたちが知らないうちに、この子は自分で名前をつけていたのか。本当にふしぎな子だ。
「へんしんしてとんでったときに、このとうがらしをおとしていっちゃったから、とどけようとおもってさがしてたの」
われわれは目の前のとうがらしを見つめた。

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「ひょっとして、とうがらしがなかったせいで、この子はこんなことに?」
ぐーさまが言った。へんしんが止められなかったり、弱ってしまっているのは、この子の体の一部であるとうがらしがなくなってしまったせいなのだろうか?
「どうだろう、わからない。だがもしそうだとしたら、これをこの子にもどせば、あるいは・・・」
かならずうまくいくというほしょうはない。だが、ためしてみるしかなかった。わたしはふるえる手で、とうがらしをぴりーこぱんのバンズの中にそっとさし入れた。
小鳥が先ほどの歌をまた歌った。

 ぴりーこぱんにあえるのは しらないよ しらないよ
 なんじにくるのか なんじになるのか わからない わからない

「さっきも歌っていたけれど、その歌は?」
ぐーさまがきいた。
「さっきあそんでたときに、ぴりーこぱんがうたってたうた。だいすきみたい」
もしかしたら、大すきなこの歌を歌えば、ぴりーこぱんはもどってきてくれるかもしれない。わたしとぐーさまは、いっしょにこの歌を歌った。

 ぴりーこぱんにあえるのは しらないよ しらないよ
 なんじにくるのか なんじになるのか わからない わからない

「ぴりーこぱん、もどっておいで。まだわたしたちは親子になったばかりじゃないか。これからいっしょに、すてきな思い出をたくさん作っていこう」
わたしはけんめいに、ぴりーこぱんによびかけた。
「かわいいかわいい、わたしたちの大切なぴりーこぱん。あなたにはこれから、楽しいことがたくさん待っているよ。お友だちも、待っているよ。お空に帰るのは、まだ早いでしょう?そのきれいな目を開けてちょうだい」
ぐーさまも、なみだながらによびかけた。
それから二人で何回も、何回も、ぴりーこぱんの歌を歌った。ふと顔をあげると、いつの間にか町のひとたちがあつまって、いっしょに歌ってくれていた。
「みなさん・・・町をめちゃくちゃにしてたいへんなさわぎを引き起こしてしまったのに、どうして・・・?」
われわれのことばに対して、町のひとたちはわらいながら、くちぐちに言った。
「赤ちゃんのやることにはらを立ててもしかたないよ。なかなかのあばれっぷりだったけどね」
「やってはいけないことは、これからみんなで教えてあげればいい。まずは、この子を助けよう」
「えらい目にあったけれど、なかなか楽しかったよ。元気なすがたをまた見せておくれ」
ひとびとのまなざしは、あたたかった。
「ありがとうございます。ほんとうに、ありがとうございます・・・!」
わたしたちは、町のひとたちと心を一つにして歌った。ぴりーこぱん、帰っておいで。と心の中でよびかけながら。

 ぴりーこぱんにあえるのは しらないよ しらないよ
 なんじにくるのか なんじになるのか わからない わからない

ぴりーこぱんの体が、かがやきだした。まぶしいけれど、目をさすようなするどさはなく、とてもやさしい光だった。かがやきがきえると、ぴりーこぱんの目がゆっくりと開いた。ぐーさまとわたしは、やさしく名前をよんだ。

「おかえり、ぴりーこぱん」

ぴりーこぱんは、ニッコリとほほえんだ。ひとびとから、よろこびの声があがった。

つづく

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