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正午の肖像

正午の肖像

あの木陰で休もうよ 眩しい正午
真っ黒な睫毛を焦がす
いずれは穏やかな斜陽になる
あなたは穏やかな斜陽になるから

あの木陰で休もうよ 眩しい正午
曖昧な輪郭を浮かす
いずれはこの町が背景になる
わたしはこの町の肖像になるから

夕べには骸になるのに
あなたは満たそうとしてくれるの
幸せなときは いつも残り僅かなのに
それでも 君は今生きているのさ

さぁ腰を下ろして 木陰で休もうよって
微かな木

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わたしたちの失意

わたしたちの失意

居眠りしそうな 午後の視聴覚室
窓の外をそっと眺めて 穏やかな斜陽に惹かれた

あゝ生まれ落ちた時から
ずっと喉が渇いていたんだ

あのとき もし翼が生えていたのなら
この世の外へ旅立っていたのかな

Memento mori Carpe diem!
その指先で呪文を唱えて 憧れの姿に変身しても
自堕落な心は きっと洗われないだろう

だからいっそ身を委ねて 沈んでゆく夕陽のように
それはとても心

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思い出の意味

思い出の意味

何度も見返した映画の結末を
どこか君は透かしている 
湖の畔に寄り掛かって
ずっと夕日を眺めていた

町並みも木々も 月並みな日々も
君の表情も移り変わった

それがあまりにも美しくて 虚しくなった

君は透かしている 真っ黒な眼差しで
ありふれた日々と 読み掛けの本の続きを

分かっている
満面の笑みを浮かべて
泡のように消えた
思い出の本当の意味を

何度も見返した映画の結末を
どこか君は透か

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アルベールロビダのために

アルベールロビダのために

死ぬまでに眺めたかった
エッフェル、ルーヴル 、ノートルダム
二十二世紀のパリを幻視した

On Your Marks... Get Set,

螺旋階段に囲まれたエレベーター
レドショッセに着いたら
そこは空想的な挿絵のなか

「アールゼメティエ駅はメトロ11号線」
とアナウンスは同じ口調で繰り返した

カラフルな風船売りが出迎えた
パサージュの古書店に陳列する骨董品たち
床のタイルの模様はホロ

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