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オリエンタルラジオ中田敦彦 TVでのスーパープレイ 7選

どうやら私は、オリエンタルラジオが好きらしい。

昔からの熱心なファンというほどではないが、それでも昨年「オリラジアカデミー」のオープニング映像には、思わず涙ぐんでしまった。2分の映像に二人の歴史が満ちていて、心を奪われた。

もちろんオリラジアカデミー本編もすばらしく刺激的で、面白かった。歴史学的な視点で、社会情勢の変遷が、テレビ史に与えた影響を整理するのは、新鮮だった。他で聞いたことがない話。

私は、オリラジと世代が近いこともあり、自身の社会人生活の苦楽と重ね合わせるように、その浮き沈みをずっと目で追ってきた感がある。栄光からの転落、その後の紆余曲折や葛藤もさらけ出して、つどコンテンツに昇華させている二人。これだけずっと剛腕のスターなのに、ときおり負け姿も見せて、共感も得ているのが稀有だ。そして成功者となった今も、先を見据え、野望をまっすぐ表明しながら、世間を騒がせる方法を常に探っている。本人たちの仕掛けた企てはもちろん、想定外のトラブル、ゴシップなども含め、何をやらかすか読めないのが面白い。

あと、2人ともキャラの輪郭が明確で、それが、ネタも平場も面白さを作っていると思う。ネタが人間性と合っている。ちゃんと、PERFECT HUMANとチャラ男のコンビでもあるのだ。

ここではオリラジの、特に中田敦彦さんを中心に、約15年間の地上波での活躍を振り返って、個人的に印象深い、活躍シーン7選を挙げてみようと思う。


■1. アメトーーク!エヴァンゲリオン芸人(テレビ朝日)

「でもゲンドウは動かない!」

2008年放送。アニメ作品の魅力を熱く語るシリーズ。いまやアメトーークの看板コンテンツのひとつだが、その黎明期に中田さんは活躍していた。

番組中盤で、エヴァのワンシーンを、ランジャタイばりの動きと一人語りで再現するシーン。丸々2分半、テンポとリズムで見せきる中田さんの活弁が、大舞台で炸裂していた。

※未見ならば、ぜひ観てほしいが、残念ながら、2023年1月現在、この放送回はアメトーークCLUBにもアーカイブがないため、観るにはDVDを買うしかない。

■2. しゃべくり007(日本テレビ)

「相方を売ります」

2011年放送。ギリギリ007という企画で、藤森さんが自身の夜の奔放さを、身を切って暴露しまくる。しゃべくりメンバーの悪ノリに、オリラジが食らいつき続け、生まれた伝説回。とにかく笑った。

これが以後の藤森さんチャラ男ブームの皮切りだった。その時期について、中田さんは自身を日陰者扱いして語るが、実は、チャラ男ブームを仕掛けたのもまた、明確に中田さんだと思う。


■3. 芸人ベストパフォーマンス(MBS)

「8年分の10分」

2012年放送。千原ジュニアさんMCのネタ番組。ショートネタブームに対抗し、長尺のネタをテレビでそのままオンエアする‥という、MBSらしい骨太な番組。オリラジはキャリアの全てを詰め込んで、10分間の漫才に挑んだ。

オリラジはそもそもM-1準決勝に5回も勝ち進んでいるネタ巧者なのだが、他の活躍が色濃いので、漫才のイメージは薄いかもしれない。チャラ男、武勇伝をフレーバーにしつつも、濃密な正統派漫才。ネタとして素直に面白い。

■4. 爆笑問題の検索ちゃん ネタ祭り(テレビ朝日)

「許可する」

2013年放送。年末恒例のこの番組。この年、上演されたコント「カリスマ」が、のちのPERFECT HUMANの原型だったように思う。中田さんがカリスマ的存在に扮して、大袈裟な見得を切るコント。あえてのツッコミ不在と、行きすぎた演出に、動揺する共演者。それもコントの一部になっている。面白すぎて、何度も見返した。

その3年後に、二人は紅白歌合戦に出場した。そんな未来、誰も想像していなかっただろうが、もしかしたら本人たちは密かに爆発を企てていたのかもしれない。PERFECT HUMAN はその後、YouTubeで7900万回再生され、時代を象徴するマスターピースのひとつとなった。

■5. しくじり先生(テレビ朝日)

「問われているのは『覚悟』なんです」

 2014年放送。中田さん本人も、テレビで自分が輝いたピークのひとつとして語る、この番組。自身の過去の失敗談を、授業形式で語って、教訓を伝えるバラエティ。オリラジ自身のしくじり歴を語った回も素晴らしいが、個人的には深夜枠の最終回、ゴールデンタイム昇格に向けて、番組にエールを送る授業をした回が印象深い。


この放送を観てから私は、誰かに期待を寄せられたとき、迷わず「お任せください」と返すようになった。

■6. 俺の持論(テレビ朝日)

「才能は、コンプレックスの裏側にある」

2017年放送。中田さんは番組内で「才能の見つけ方」というタイトルのスピーチを披露した。後年、YouTube大学やSA-CUSなどでも披露された、熱いトーンの自分語りだが、テレビで最も鮮烈に表現されたのは、この日だと思う。画面用スライドも自作して乗り込んだという熱の入れ様。

自身が吉本でお笑い芸人として過ごすなか、漫才という様式にこだわるあまり、自分の特性と合わないまま、さまよってきた末の結論。辿り着いた先で作ったのが「ジャンル不明の演芸」であるPERFECT HUMANだと思うと、実体験ならではの力強い説得力がある。共感と教訓に満ちていて、本家TEDで流れていたとしても違和感ない名作。

■7. あちこちオードリー(テレビ東京)

「死ぬまで、自分の話をするんだろうな、という確信がある」

2022年放送。テレビを離れ、教育系YouTuberとしての成功、海外移住を経た中田さんが、再びオードリーと相対する。

かつてオードリーへのコンプレックスがあったという中田さん、正統派漫才師を侍と例え、対する自分の芸を「こっちは忍びの者。煙玉みたいなもの」と表現する。成功した今だからこそ、正直に振り返られる。本音同士がぶつかりあう音が鳴り響く、まさに裸のトークバラエティだった。

これは今でもParaviで観れる

https://www.paravi.jp/watch/102882

■おまけ. サンデージャポン(TBS)

2023年放送。吉本退社を経たのち、またテレビの中心に立ち寄ったオリエンタルラジオ。貴種流離譚での、祖国への凱旋シーンを思わせる美しさがあった。

凱旋を出迎えた父は、爆笑問題。中田さんの学生時代からの憧れであり、「爆報!THEフライデー」でも、長らくレギュラーを共にし、苦しい時期を見守ってくれていた存在。温かいトークが心地よい。番組中、中田さんのボケに、藤森さんがツッコむ、コンビらしい構図も、実に自然で良かった。

※ ※ ※

二人は、これら以外にも事件には事欠かない。ラジオの生放送中に喧嘩したり、藤森さんが有名アナウンサーと交際したり、中田さんがいいとも共演者だったベッキーさんを5年後にワイドショーコメントで切りつけてみたり、茂木健一郎さんのお笑いオワコン発言に同調して所属事務所から疎まれてみたり。それも含めて、18年ともなると、全て面白がれる逸話に昇華されてくるのが良いところだ。いまや、生き様全てをショーにしている。本当の意味で武勇伝だ。

YouTubeで、2023年の展望を二人で語りあう動画も、面白い。ドッキリとトークテーマが符合しているし、それでいてサムネイルは非常にキャッチー。見事な構成。


この私の記事は「ロナウジーニョやメッシのスーパープレイ集」のように、芸人のスーパープレイをまとめた資料があればいいな‥と思って書いてみた。全て放送回をご覧いただけるといいのだが、昔のバラエティ番組は、動画のアーカイブがないのが残念だ。

ちなみに調べた限りだと、こういう切り口の記事はあまり見当たらなかった。バラエティ番組大好き勢は一度、好きな芸人で試してみてほしい。なにより、考えるのが楽しいから。

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