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現役エンジニアが教えるセットアップ術【其の二-車高設定編】

こんばんは。Emperor-Dです。今回も引き続きシムレーサーが使えるセットアップ術を進めていきたいと思います。前回の記事をまだ読まれていない方はまずそちらから入ってみてください。

前回、基礎パフォーマンス評価をした結果、エアロレベルはHDF(High Downforce)が良いということがわかりましたので、HDFセットアップをベースにして、今回は車高設定編に入ります。

車高設定に関して

まず、車高設定の具体的な評価を進めていく前に、簡単に車高設定を考えるのに必要な情報を紹介したいと思います。
F3の場合はウイングがばね上にマウントされているので、ダウンフォースによって車体が下側に押し付けられて車高は徐々に下がっていきます。そのためダウンフォースがある車両の車高は静止状態(1G)だけでなく、車速に応じて車高をどうすべきかを考える必要があります。

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この図は速度で車高が変わっていくのを図とデータを用いて表したものです。文章よりは、多少わかりやすくなってますかね?

この車高設定を考えるためには、車高やレイクによってダウンフォースが増えるのか減るのかというデータを収集する必要があります。ただし、今回はあまり難しいデータ分析はしないように進めたいので、タイムが速いほうが高パフォーマンスとして評価していきます。調べていく内容としては次の4種類です。

①レイクを付けたほうが速い or 遅い
②車高が高いほうが速い or 遅い
③ディフューザーやウイングがストールする車高はどこか?
④エアロバランスが変わらないようにする前後車高の調整幅は?

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詳細を説明すると…
①・・・一般的にはリア上がりの状態が全体のダウンフォース量は増える傾向ですが、レイクがつくほどエアロバランスはフロント寄りになり、ステアバランスはオーバーステア傾向にシフトしていくのでバランスを取るのが難しくなりやすいです。
②・・・車高設定を変えると主にフロントウイングとディフューザーが地面に対して距離が変わり、ダウンフォースが増減します。一般的には車高は低いほうがダウンフォースが出る傾向にはありますが、そうではない車も稀にありますので注意が必要です。
③・・・ストールというのは、車高が下がってディフューザーやウイングと地面との隙間がある一定以下になると空気が流れなくなる現象のことを意味します。こうなってしまった場合、ダウンフォースが失われてしまう事態に陥ります。走行中に急にスピンしたりするのはこの現象の可能性もありますので、そういったことが起きるポイントがないかを探っていきます。
④・・・グラウンドエフェクトの影響を強く受けるフロントは1mmの車高調整感度がリアよりも大きい傾向にあります。これが同じようになる車高を調べておけば、空力バランスを変えずに車高を上げ下げでき、路面が悪いサーキットやフラットなサーキットにも簡単に対応ができるというデータになります。これは後述するAero calculatorで直ぐに調べられますので、参考にしてみてください。

と、これくらいの情報があれば、車高設定編に進めるでしょう。
では、実践を交えながらやっていきましょう。

基礎パフォーマンス評価-車高設定編

まず、HDFセットアップ標準のセットアップで走った時の車高を見ておきましょう。1G車高はフロントが15.3mmで、リアが48.0mmとなります。
上の説明にも書きましたが、車高は走行中に絶えず変化しており、スプリング等で車高変化の仕方を変えることもできるのですが、基礎パフォーマンス編では1Gの車高だけに注目して進めていこうと思います。

まずはレイクの感度を計測するために、フロントとリア車高を別々に変更して、パフォーマンス変化を調べていきましょう。評価方法は何通りもありますが簡単な方法としては、エアロバランスを変えないように、車高とウイングをセットで変更するのが良いと思います。iRacingのセットアップ画面にあるAero calculatorという便利なツールを使えば簡単に調整できます。

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このツールに前後の車高とウイング角度を入力すればエアロバランスや、ダウンフォース、ドラッグの情報を見ることが出来ます。ここでキーとなるのが、”計算する時の車高はいくつにすればよいのか”ということです。何度も出てきていますが、走行中はダウンフォースによって車高が変化しておりますので、車速によってレイクが異なるため、エアロバランスも変わります。そのため、どの車速の車高でエアロバランスを合わせるかで、違う車速域でのバランスにも影響してしまいます。
ではどの車速に合わせるのがよいかというと、"コース一周の平均車速"がいいと思います。この車速でエアロバランスを合わせておけば1周を走る上で一番エアロバランスを崩しにくくなります。
今回だと 4.309kmのサーキットを89.916secで回るので平均車速は172.5km/hとなります。その時の車高をグラフから読み取るとフロント車高12mm / リア車高29mmで、エアロバランスは45.2%でしたのでそれを基準に調整します。

最初はフロント車高からテストしていきましょう。
ベースのHDFセットアップに対して、フロント車高を3mm上げてみましょう。これに対してエアロバランスを合わせるにはフロントウイングのフラップアングルを5度つけてあげればエアロバランスはキープできますのでそれをパターン1とします。
次にフロント車高は上げた状態でリアウイングのアッパーフラップアングルを8度減らしてエアロバランスをキープしたパターン2を見ていきましょう。
フロント車高は15mmまでしか設定できないので、下げる側は無しになります。このテストはレイク比較というよりエアロテストに近くなってしまってますが、バランスを合わせないと評価が難しいので今回は目を瞑ります。
テスト内容を表にすると次のようになります。

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走行した結果、速い順に並べるとパターン2>HDFベース>パターン1となりました。この結果を分析するためにAero calculatorのデータを見てみると、パターン1はベースセットアップに対して、全体のダウンフォース量(Downforce trim)が減少しドラッグ(Drag trim)は増加、つまりエアロ効率(L/D)は悪化しています。これがタイムが良くならなかった原因だと考えられますので、フロントのダウンフォースを増やしたい場合は、フラップアングルではなく車高から調整するのが良さそうですね。
対して、パターン2は全体のダウンフォース量は減少していますが、ドラッグも減少しており、エアロ効率は良くなっていることからタイムが良くなったのだと推測できます。これだけではタイムにどの要素が大きな影響を与えているかデータ不足なので、続いてリア車高のテストに移ります。次のテストのベースは現時点で最も速かった、パターン2とします。

リア車高は最大で50mmまでしか設定できないことから下げ方向のみのテストとなります。(本当は上げ下げの両方やりたかったのに…)
リア車高を下げるとエアロバランスはリア寄りになることからリアウイングのアッパーフラップを寝かしていくのを3パターンやってみました。

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結果としてはテストした3つのセットアップは全てベースより速いのですが、リア車高を10mm下げてフラップを5度寝かしたセットが最速でした。これらのセットアップは、エアロの効率が上がることでラップタイムが向上したのだと思います。ただ、最後のパターン3は、パターン2とエアロの効率が変わってないのにタイムが落ちてしまっています。正直0.1秒以下の差となると私のドライビングの誤差のような気もしますが、パターン3だけはコーナーのボトムスピード付近から加速していくところで曲がらないなと感じていたので、恐らくレイクが減少しすぎた影響だと推測されます。そのため、サスペンションセットアップを変えない現状の評価だとパターン2がベストでした。

最後に、フロントとリア車高を上げ方向と下げ方向にエアロバランスを変えないように同一方向に変化させてパフォーマンスに差が出るのかを調べていきます。

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結果はフロントとリア車高を下げた仕様が最も速く、車高を上げたのが最も遅いという結果になりました。ここまでくるとあることに気づかれた方も多いかもしれません。このコース、ラップタイムとエアロの効率に相関関係がありそうだということに...

相関チェック

エアロ効率・ダウンフォース・ドラッグに対するラップタイムをそれぞれ2軸のグラフにしてみるとエアロ効率だけは実際に相関関係がありそうですね。

ということで、検証のために追加でレイクのテストをしてみます。

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リアの車高を上げる代わりにフロントフラップを3度寝かしてみました。結果としてはL/Dが上がり、ラップタイムも改善したので、結論は間違ってなさそうです。

最初と最後のセットアップでロガーデータを比較すると次のようになります。

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コーナーの車速はあまり変わらず、ストレートでタイムが稼げるようになってますね。

まとめ

最後に今回の基礎パフォーマンス評価-車高設定編のまとめです。
今回のテスト結果から分かったことは次の通りです。

①フロントのダウンフォースは車高で稼ぐとエアロの効率が良い
②リアのダウンフォースは低い車高とリアウイングアングルを減らして
 バランスを取るのが良い
 ※ウイングアングルを増やすとエアロの効率が下がるということ
③レイクを減らしすぎるとエアロ効率が良くてもタイムは出ない
④エアロの効率がラップタイムに対して影響大(相関性有り)

現時点での最終的なセットアップはこのようになってます。

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かなりボリューミーな検証でしたが、徐々にタイムが上がっていくのを見ると楽しくなりますね。次回は基礎パフォーマンス評価で最後の項目となる、タイヤ内圧編です。乞うご期待下さい。

もし内容が参考になったらサポートして貰えると嬉しいです。 継続的に活動を続けるモチベーションになります🥺