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SUPER FORMULAの基礎や Rd.6の見どころ

またもや更新間隔が空いてしまいました…ごめんなさい。>_<
今シーズンは体制やポジションが変わり例年以上に忙しくさせてもらっておりましたので、なかなか更新する時間が無かったわけですが…
最近SUPER FORMULAの知名度(?)が少しずつですが上昇しているようだったので、久しぶりの更新はSFネタにしました。
今回の内容は、SUPER FORMULAを観戦するうえでより楽しめるように事前情報や見どころをお伝えしていきたいと思います。


SF23ってどんな車両?

SUPER FORMULAの車両『SF23』は市販車と違ってオープンホイールカーと言われるタイヤがむき出しのレーシングカーです。分類としてはF1やインディカーと同じタイプで、速さに関してざっくり言ってしまうと国内最速の車両です(笑)
よく300km/h出るのか?トンネルをひっくり返ったまま走れるのか?なんて聞かれますが、どちらも『Yes』なんですよ。これって結構凄いことなんですよね。長くなりそうなので割愛しますが…
さて、そんなSF23は2019年に導入されたSF19をベースとして、アップデートキットを導入した車両となります。どんなアップデートがされたのかをまとめると2項目あります。

・エアロパッケージ
 ◆接近戦を増加させるための後方影響を考えたウイングやフロアの導入
 ◆カウル類は天然素材を用いた材料で製作されている
・ドライタイヤが再生可能原料を用いた新スペックに変更
 ※タイヤは横浜ゴム製ワンメイク

マシーン紹介|SUPER FORMULA 公式WEBサイト

こうやってまとめるとあっさりしすぎているので少し解説してみます。
まずエアロパッケージについてですが、SF14からSF19にかけてラップタイム短縮を狙ってダウンフォースを増加させた結果、目標通りラップタイムは短縮されたのですが、レースに於いて後続車両は前走車両に近づけないという所謂『ダウンフォース抜け』が顕著になってしまったと。そのため、抜きつ抜かれつのバトルが難しいという現状がありました。
そこで、SF23では後続車両への影響が少なくなるように開発が進められています。専門ではないので、あくまで推測ですがダウンフォースの”出し方”が変わっているのではないかと考えています。おそらくSF23はSF19よりもエアロ総量に対してフロアによってダウンフォースを生成する割合が増加していると思います。というのもフロアはグランドエフェクトが効くため、効率良くダウンフォースを生成できるのでリアウイングに比べて気流を上方に飛ばさなくてよくなります。もちろんそんな簡単な問題ではないので、ディフューザーの跳ね上げ高さからウイング形状や翼端板に至るまで後続車両への影響が最小化されるように処理されているとは思いますが…

エアロ総量に対する主要パーツの寄与率イメージ(割合は適当です)

また、タイヤに関しては再生可能原料を使った新スペックが導入されたわけで、今後の環境配慮に必要な開発が先行でスタートしているような印象でしょうか。走らせる側としてはタイヤが変更になった場合、同じ車両でもセットアップを変える必要が出てきますので、特性を早く見極めたチームが強さを発揮することになります。

ではそんなSF23を使ったSUPER FORMULAで行われているイベントがどのような形で行われているのか簡単に紹介したいと思います。主に規則の話になりますが、技術規則やスポーティング規則に関する詳細を更に知りたい方はこの後に貼るJAF モータースポーツのHPからダウンロードしてみてください。

Super Formula基礎知識

1.走行スケジュール

公式練習     :90分
予選Q1 Aグループ:10分
       Q1 Bグループ :10分
  Q2                  :  7分
フリー走行            :30分
ウォームアップ     :  8分
決勝                       :41周 最大75分(←レースによる)
※2023 Rd.6 富士大会を参考
 1大会2レース制の場合は異なります。

2.タイヤ規則

・競技期間中に使えるタイヤはドライもウェットも最大6set
 〇ドライタイヤのうち、3setは前イベントからの持ち越しタイヤで、
        中古でも新品でもOKですが、この規則には載ってません…
  ※2レース制の場合は持ち越しタイヤ数が別途定められます
 〇ウェットタイヤは持ち越し規定がなくSet数の制限のみ
・タイヤの意図的な加熱は禁止(ウォーマーNG)

3.レースに関するルール

・タイヤ交換義務
 ドライ:10周以降~トップが最終周に入る前までにピットイン必須
     2setのドライタイヤを使用する義務がある。(4輪交換義務有)
     但し、ウェットタイヤを使ったら、上記の使用義務は無くなる
     ※ウェットタイヤを使用できるのはウェット宣言中のみ
・ピット作業エリアに同時に出れるのは最大で6名
     
※一般的なピット作業の人員配置
     タイヤ交換担当:4人
     ジャッキ担当 :1人
     ロリポップ  :1人 ⇒車両が出てよいかの指示を出す人
ポイントシステム
 予選は1~3位にポイントが付与される
 決勝は1~10位にポイントが付与される
  ◆ドライバーランキングは予選・決勝ポイントの全戦合計
  ■チームランキングは最大2台の決勝ポイントの全戦合計

ポイントシステム(公式サイト抜粋)

4.車両規則について(抜粋)

・原則、車両供給者(ダラーラ)から供給された状態を保つこと(改造不可)
・車両とドライバーを合わせた最低重量は677kg
・テレメトリー禁止(F1で使われているリアルタイムでデータを見る装置)
・スキッドブロックは指定箇所の厚みが最小3mm以上(新品は6mm)
・車両供給者が提供した選択部品は変更可能

  ■ガーニーフラップ
  ■トーションバー(フロントスプリング)
  ■アンチロールバー
・規則で許されている自由なパーツ
  ■ダンパー・スプリング・バンプラバー
  ■センサー類の取り付け
  ■ホイール(規程に入っていればメーカー自由)
  ■etc
・エンジンは年間2基まで
  ※メーカーはTOYOTA・HONDAの2社

etc.レギュレーション詳細

・車両規則
https://motorsports.jaf.or.jp/-/media/1/3375/3379/3400/3462/3464/3482/2023_jaf_01_kitei_race_tech_reg_20230407.pdf
統一規則(スポーティング)
https://motorsports.jaf.or.jp/-/media/1/3375/3379/3400/3462/3466/3492/2023_touitsu_kisoku_superformula_20230101.pdf

規則に追加や変更があった場合にはブルテンが発行されるのですが、載っていなかったので今年度はまだ無いようです。(?)

こうやって見返してみると、結構ルールがあってビックリ!
ワンメイクカテゴリーだからこそ、コストが高騰しないように様々な制限がかけられています。ただ、完全な統一ではなくチームオリジナルが許されている部分も有り、それによりチーム間競争が生まれるわけですね^^

では基礎知識を身に着けていただいたところで、SUPER FORMULAの見どころを紹介していきます。既に色んなメディアで紹介されているので、簡潔に。

SUPER FORMULAの見どころ

誰が一番速いのか?

SUPER FORMULAはウェイトハンデシステムやBOPがありませんので、全戦完全なイコールコンディションとなります。イコールコンディション故に、タイムシート上では全車が1秒以内いるようなハイレベルな戦いになります。予選のアタック合戦は最後の最後まで誰がポールを獲るのか目が離せませんよね!
そんな競争の中で最速になるにはドライバー・エンジニア・メカニック・スタッフ全ての力が必要です。各々が百分の1秒を見出すためにあれやこれやと色々試すわけで…(笑)
「あ、このチームはトラフィックを気にして早く動いたな」とか「グリップダウンを気にして1周少ないウォームアップでアタックいったな」っていうようなことは結果に埋もれて表に出にくいですが、このような積み重ねの上に最速が決まってます。予選を見る際には中継映像だけだと状況が分かりにくいと思うので、タイミングモニターと一緒に見ていただけるとより楽しめるのではないかと思います。

SFgoを使った新しいコンテンツ

今年から正式にリリースされたSFgoですが、今まで見られなくてモヤモヤしていた部分が見ることができるようになっています。
学生だった頃、F1ではオンボード中継や無線が聞けたのに、国内レースでは全くなくて、正直……でしたが、ようやくその願いが叶いました(笑)
私は車両の良し悪しやドライバーのテクニックをオンボードから見るのが趣味だったのでこれがあると倍楽しめます!
お客さんからすると、GPS機能もあるのでどこを走っているだとか何号車の後ろにいるからその号車が来たらカメラを構えればいいだとか。活用方法は沢山ありそうです!
まだタイムラグ等もあってリアルタイムで見る際には難しい部分もあると思いますが、そこは今後に期待していきたいところですね。

その他

決勝レースの注目ポイントはオーバーテイクシステムの使い方で明暗が分かれるところや、ピットイン組とステイアウト組のタイムの削り合い(表と裏)といった部分かなと思います。ちなみに、先にピットインして抜くことをアンダーカット、逆をオーバーカットと言ったりします。この戦いで重要になってくる要素の一つにピット作業があります。各チームのメカニックが練習を積み重ねて作業時間を安定&短縮させたり、機材の改良を施して時間を短縮しています。この作業時間の争いも関係者としては興味深いところですね。

ここまでSUPER FORMULAの見どころとして広範な内容を上げてきましたが、 ここからは今週末7/15-16に行われるRd.6富士大会に焦点を絞って紹介していきます。

Super Formula Rd.6の見どころ

2023シーズンRd.5まで終えて

まず今シーズン5戦終わった段階でのランキングを整理してみましょう。

2023 Rd.5終了時点のランキング(1~10位) 公式サイトより

https://superformula.net/sf3/driver_taxonomy/2023/?standings

宮田選手とリアム選手が2勝ずつ、野尻選手が1勝と、この3名がランキングTOP3につけています。そして2位が2回の坪井選手、3位が2回の平川選手と続いています。
個人的な見解ですが、去年と比べて予選・決勝どちらも上位勢の顔ぶれが少なからず変化している気がしています。というのも新型車両の導入年は、レースの週末を含めて学習して走らせ方を発見していくことが多いですから、スイートスポットを見つけたタイミングで急に速くなることもありますし、残り4戦で23(20+3)×4(戦)=最大92ポイント取れますからまだまだ先が読めない状況です。

そして更に先を読めなくする要素として、このRd.6前に富士スピードウェイで公式テストが行われたことが挙げられます。各チーム、前半戦の振り返りや今後に向けてパフォーマンスアップを狙ったアイテムをテストしていたことでしょう。例年シーズン中のテストが無かったためシーズン序盤の勢力図は変わりにくい傾向だったと思いますが、これによってシャッフルが行われる可能性も高まっています。
小声になりますが、私の担当車両は今のところ調子が悪い側にいるのでシーズン中のテストによって立て直せるチャンスが来て嬉しいですね!当然全チームそう思ってるでしょうからそんなに甘くはありませんが…>_<
客観的にテストをみるには、タイムくらいしか判断材料がありませんが、とあるチームの車両は2台ともが常に上位にいて調子が良さそうでしたね。テストはSFgoのオンボード配信が無くて見れないのが残念でした…(笑)そのチームは昨年もてぎも速かったですし、後半戦の中心になりそうな予感がします。

富士スピードウェイについて

今回の戦いの場となる富士スピードウェイは、SFを走らせる上でエンジニア的に一番悩ましいサーキットであると言えます。
というのも、

●約1.5kmのストレートがあるセクター1はドラッグ感度が大きい
▲コカ・コーラコーナーと100Rのあるセクター2はダウンフォース欲しい
■曲がりくねった低速コーナーの多いセクター3はメカニカルグリップ重要

富士スピードウェイ コースマップ(公式サイトより)

とこんな感じで、セクター1と2の時点で背反する項目なので両立は難しいし、ストレートが長くて最高速が高いので、足回りは硬くせざるを得ないのにメカニカルグリップもいるの!?といった感じで、落としどころが難しいのです。なので全セクター速いというのはなかなかありませんし、ステアバランスが全コーナーで良いっていこともほぼありません。特に夏場は気温が上がりダウンフォースが減少するので不安定になりやすく、更に難易度が上がります。
 ※こうやって書いておけばバランス悪くても許してもらえるかも^^/

なのでセットアップする時は1つのセクターに重点を置いきつつ、いかに他のセクターでネガを小さくできるかという考え方でやっていることが多いです。その辺りは各号車のセクタータイムに注目してもらえるとどこで稼いでいるのかが見えて面白いかもしれません。

Rd.6の展望

今週末は7/12現在だと雨予報はなく、気温は30℃前後と熱いコンディションでの開催となりそうです。富士はストレートでタイヤが冷えてしまうことから、低い気温だとウォームアップに悩まされますがその心配はなさそうですね。予選においてはアタックが何周目に行けるのかによって取れる戦略が変わってくるのでここも重要です。開幕イベントの状況を考慮すると今回は1周か2周のウォームアップどちらにするか悩みどころになりそうです。
また直前のイベントがテストだったこともあり、今回の持ち越しタイヤ3setのうち2set以上新品にしているチームが大多数だと思われます。そのため、フリー走行で通常より多くニュータイヤを投入してパフォーマンス確認をしたり、決勝で使うという選択肢もあります。残り4レースしかないため、ランキングトップを追いかける側の車両は、ニュータイヤを多く使ってでもポイント差を縮めたいと考えていることでしょう。

決勝に関しては41周(187km)となりますが、高い気温と路面温度でのタイヤのグリップ低下(デグラデーション)がどれくらいあるかが戦略決定の鍵となりそうです。富士は菅生に比べてタイヤへの負荷が高いことからタイム低下はより顕著になると推測していますが、実際はどうか…
そこら辺を本当は富士テストで確認したかったのですが、残念ながらテストは曇り空で気温も20℃台だったことからデータは取れませんでした。もちろん条件は全チーム同じなので、仕方ありませんが…
あとは、決勝のピットインにかかるロスタイムは約39-40秒程度です。
 ※SFgoから測定したピットレーンロスとピット作業の合計時間
これに加えてタイヤのウォームアップ分で更に数秒ロスが発生します。レースを見る際に、ピットイン組とステイアウト組のどちらが前に出るのかはこのロスタイムを参考に見てもらえるとよいかと思います。

まとめ

いかがだったでしょうか。中の人なりにSUPER FORMULAの基本から見どころまでを書いてみました(笑)
ぶっちゃけると、この記事はセットアップが決まらず現実逃避で書いていたのですが、そろそろ本当にセットアップを決めないとマズいので今回はこの辺で!
今回規則関係でいうとセーフティカー等についても触れられなかったのでまた機会があれば書きたいと思います。その他にもリクエストがあればTwitterやコメント頂けると嬉しいです。次回はいつになることやらですが…
出来るだけ頑張って書こうと思います。


もし内容が参考になったらサポートして貰えると嬉しいです。 継続的に活動を続けるモチベーションになります🥺