産地によって日本茶の味や香りはどう違うのか?

産地によって、日本茶の味や香りには大きな違いがあります。
南国である沖縄県から北は雪深い北陸地域まで、様々な土地で日本茶は栽培されています。
また同じ地域でも山間地なのか平坦地なのかで、日本茶の個性は大きく異なります。

1.山間地のお茶
山間地のお茶は『山手(やまて)』のお茶と言われることもあります。
土地の香り(『地香(ちか)』『山の香り』)を持ちやすく、香木を思わせる芳しさが印象的です。
また味も濃くなりやすいため、玉露などのお茶は舌の上に重みすら感じるような甘味と旨味を、
煎茶はより野性的で荒々しい苦味と渋味を持つようになります。
山間地は日中の気温の差が激しく、また他の木や山の起伏、霧の発生によって日光が遮られやすいため、
その厳しい環境が、個性のより際立った日本茶を育てるのです。
静岡県の一部地域や京都府南部周辺地域が、このようなお茶の産地です。

2.平坦地のお茶
平坦地では、旨味や苦味のバランスが良く、飲みやすいお茶が育ちます。
そのため『深蒸し煎茶』という、まろやかで飲んだ後に満足感のある煎茶を作るのに適しています(山間地のお茶では『深蒸し煎茶』は濃すぎるお茶になりがちです)。
また、山間地のお茶に比べて周辺環境の影響が少ないため、品種の違いも素直に現れます。
安定した品質のお茶が作られやすいという長所もあります。
静岡県の大半の地域と九州の大半の地域が、このようなお茶の産地です。


3.東の地域のお茶
日本の東の地域では特に静岡県が有名ですが、『深蒸し煎茶』が多いことが特徴です。
『深蒸し煎茶』とはその名の通り、お茶の製造工程の中で、茶葉を蒸す工程の時間を長めにして製造されたお茶です。
そうすることによって甘味を強調する成分が出やすくなり、コクがあるマイルドな味わいとなります。

また、東京都の上に位置する埼玉県では『狭山火香(さやまひか)』という香りのあるお茶が製造されています。
お茶の製造工程中の、茶葉を乾燥する工程で生まれる『火香』と呼ばれる焼き菓子を思わせる香りが特に、埼玉県のお茶では特徴的なのです。

日本東北端の北海道では、その寒さを利用し多種多様なお茶の穏やかな熟成を行い、また違った個性のお茶を製造している場所もあります。

実は日本の東の地域は日本茶産地としての歴史が浅く、また元々は熱帯の植物であるお茶の木にとって育ちやすい環境ではありませんでした。
しかし江戸時代の終わり頃の、浪人となった侍の静岡県の開拓と、それに続くお茶の品種改良や上にあげた製造工程の改良という数々の努力によって、今では日本茶に欠かせない産地に育ちました。

とりわけ東の代表的産地の静岡県は清水港という貿易拠点で栄えたこともあり、ワインで言うとフランスのボルドーと言ってもいいでしょう。


4.西の地域のお茶
特に産地として有名なのは、宇治茶のある京都府および八女茶のある福岡県です。
その両者に共通するのは抹茶や玉露などの『覆い下茶』の存在です。

『覆い下茶』とは、日光を遮って育てられたお茶です。
お茶は日光を遮られると、旨味を増すという特徴があります。
抹茶や玉露という旨味、甘味を楽しむお茶にとっては欠かすことのできない技術なのです。

もともと日本茶は、大陸に近い九州地方(福岡県のある)から広まりました。
やがて戦国時代に首都であった京都市と、貿易の拠点であった大阪府の両方に近かった京都府南部(宇治周辺)が一大産地となりました。

日本の西の地域ではそんな歴史と、文化によって醸成された『覆い下茶』に代表される栽培法の進化が特徴であると言えるでしょう。

代表的な京都府はワインで言うと、歴史の古いイタリアンワインの産地と似ています。
また、歴史のある八女茶もありますが、近年で特に大規模かつ多品種のお茶の産地に成長した九州地方は、ワインで言うとカリフォルニアワインの産地と例えてもいいかもしれません。

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