ライブ映像を撮影する時のカメラワーク

Agp StudioというYouTubeチャンネルを運営しているemotalmtzkと申します。

この記事ではライブ映像を撮影しまくった自分が日々思って実践している、ライブ映像のカメラワークについて書いていきます。

はじめに

正直どう撮るかがライブ映像の肝の部分だと思います。

ライブ映像の良し悪しを決める順番は
バンドのかっこよさ>>>音質=カメラワーク>画質
だと思っています。

正直バンド側がカッコよければ適当に撮っててもカッコイイです。
それを一つも二つもブーストさせるのがカメラワークです。

カメラワークに関しては、好みが分かれる部分です。
感覚的なものも多く、うまく言語化しきれない部分もあるかと思いますが、これを機に整理して書いてみます。

実際にはこれの中から曲の雰囲気に合うものやバンドに合うものをリアルタイムで取捨選択している感じです。

ちなみに上手、もしくは下手側の最前で1カメ撮影すること前提の話が多いです。

メリハリを付ける

広角で引いて全体を撮るのか、ズームして寄って一人を撮るのか。
これらのメリハリをつけることを意識します。
ずっと一人ばかりアップにしていても窮屈に感じてしまうし、ずっと全体を撮っていてもメリハリがなく感じます。
ライブハウスであまり動けないスペースで、しかも1カメでこれを実現しようと思うとズームレンズが必要になります。

ズームの作法

そもそも映像作品と呼ばれるもの、映画やドラマ、ミュージックビデオなどではズームレンズを使ったズーム表現が少ないです。
(ほとんど見かけないけど、ドラマなどでズームレンズを使ったカットがあるとビックリします。)
ズーミングの表現は、ドキュメンタリーやバラエティー番組では見慣れているかと思います。どちらかというと生っぽくなってしまうのがズームの表現です。
ズームのスピード感やカメラの動きに合わせたズームなどをすることで、バラエティー感やコメディー感を減らせることもできると思っています。

意識しているのは以下の通り
・速く動かしすぎない
・直線的なズームを避ける
・パンやチルトと組み合わせる
・寄りすぎない
・でもここぞという時には寄ってみる

こんなところでしょうか。

直線的なズームをすると途端にバラエティー感が出てきます。もちろん意図してわざとやるのもアリです。

速くズームするのも表現としてはアリなのかも知れませんが、出来るだけ避けています。曲の雰囲気に合っていないズームほど「分かってない」感が出てしまうものはないです。

例えばしっとりとしたパートで極端に速いズームはしないと思います。

ズームをして、画角を変える時はパンやチルトと組み合わせることが多いです。
ある一人にズームインをしていて、全体に戻りたい時は、少しカメラを動かしながらズームアウトをするとダサい感じになりにくいと思います。

ボーカルを映す

バンドの花形は基本的にボーカルです。
お客さんとして見ている場合、歌っているパートでは一般的にはボーカルをメインで見ていることが多いと思います。
(バンドマン目線では、ひたすらギタリストを注視することはありますが、これは稀でしょう)

なので基本的にはライブ映像でもボーカルを写すようにします。ただ、ボーカルのみを撮っていればいいわけではなく、時にはギタリストやベーシスト、ドラムなど楽器隊にも目を向けます。

歌っているパートでは、「ボーカルを含む全体のカット」と「ボーカルがメインで映っているカット」が8割のイメージで撮ることが多いです。

後は、歌い出しはボーカルを映すようにするというのを心がけます。
知らない曲の場合は、難しいと感じるかもしれませんが、曲に集中すると分かるようになってくるかもしれません。

自分の好きなジャンルやよく聞いてきたジャンルの方が曲展開の「当たり」を付けられるようになってきます。次のパートを予想するようにして音楽を聞いてみてください。

曲を感じながら、バンドの呼吸に合わせる感覚で撮っていると自然とボーカルの歌い出しに間に合うようなカメラワークが出来るようになってきます。
もちろん、外してしまうこともありますが(笑)

もちろん、カメラのモニターにだけ注視するのではなく、時には自分の目で見ることも大事です。歌い出しの直前にマイクに意識を向けるのをくみ取ってカメラを動かします。

ボーカルの呼吸(ブレス)に合わせる

ボーカルの節に合わせてカメラを動かします。
ボーカルのブレスの時に少し画角を変えるという感じです。

ボーカルの手を画角に入れる

手の動きの表現が魅力的なボーカリストがいます。その場合は、きちんと手も画角に入れてあげることで、魅力的なカットになります。

ボーカルの場合、つい寄りすぎてしまうこともあります。魅力的なバンドほど寄りたくなっちゃうのは自分だけでしょうか。
ただし寄りすぎてしまうと、手を上げられると手が画角に入らないこともあります。その時は、ズームアウトやカメラ位置を調整してあげると良いです。

よく写真の構図解説にある三分割構図を意識して少しカメラ位置を調整できるとなお良しだと思います。

ボーカルのロングトーンに合わせる

ボーカルのロングトーンに合わせてゆーっくりズームイン、もしくはズームアウトをするのも雰囲気が出て好きです。

めっちゃ動くボーカリストに付いていく

ハードコアバンドのボーカリストで左右にめちゃくちゃ動く人がいます。
歌っているパートではボーカルの動きに合わせます。

上手、もしくは下手の最前で撮影している場合、ステージでの左右の動きは自分から見て前後の動きになることがあります。なので、ボーカルの人のサイズを変えないようなイメージでズームイン、アウトとパンを使って付いていきます。

もちろん、ずっとそればかりだと飽きてしまったり、うるさくなりすぎるのでやりすぎ注意です。

パン

パンのスピード感にも気を付けます。速いパンは時にはかっこいいですが、
あまり頻繁に動かすと見ていて疲れます。

ズームの部分でも書きましたが、パンしながらズームアウトするのも好きです。
また、パンの途中で戻ってしまうのはダサいので極力避けています。

手元からの顔

自分の撮影するライブ映像ではかなり頻繁にやっています。もはやクセと言ってもいいかもしれません。

演奏する手元にズームインさせておきカメラをチルトアップさせて顔を映します。また、この時、チルトさせながらズームアウトさせることで、ギターやベースを画角に入れておくのも好きです。

水平に気を付けすぎない

撮影したての頃は水平に撮ることを出来るだけ意識していました。

が、とあるカメラマンと一緒に撮影させてもらって、素材を見ていた時に、カメラを大きく傾けて撮影しているのに気づきました。

インパクトがある画になってかっこいいですが、やりすぎると少しナルシスティックになる気がするので注意です。
あとは、明らかに似合わないバンドもいるのでバンドや曲の雰囲気に合わせます。

ただし、基本的には水平に気を付けた方が安定して見えるので、意図しない限りは傾けるのは避けます。
もちろん、カメラ内の設定で水平機は表示しておきます。

動かしすぎない

手持ち撮影するので手振れには気を付けます。一般的に広角の方が手振れは目立ちにくくなります。

ノリノリになって撮影しているとカメラを動かしすぎる時があります。
後で見てみると少しやりすぎたと感じる場合があるので、時には落ち着いて手振れを抑えて動かさないようにします。
この時、広角の方が手振れは目立ちません。

手持ちでビタ止めしたいときに活躍するのがLUMIXの手振れ補正ブースト機能です。
自分の場合は、ファンクションボタンに割り振って、動かしたくないときは随時オンするようにしています。

フォーカストランジション

あまり立ち位置が変わらないバンドの場合は、マニュアルフォーカスを積極的に使います。
自分(カメラ)から見て、直線上に複数のバンドメンバーがいる場合は、フォーカストランジションを使うと、グッとカッコイイカットが作れます。

難易度はグッと上がりますが、ハマると気持ちいいです。

バンドマン、下から撮るか上から撮るか

基本的にライブハウスのステージは客席から見て少し高くなっています。
もし客席側から撮影する場合は、どうしても下から撮影するため、煽っている目線になります。

この時、自分が撮影しやすいウエストレベルよりも少し下げてみるのも一つの手かもしれません。

また、自分がステージ上にいる場合は、バンドマンと同じ目線になります。

下から煽った画角にするのはもちろん、上から見下げるような画角もアリだと思います。広角で上から撮影するとアクションカメラで撮影しているような感じになるので、時々そういったカットを入れるのも好きです。

1カメで撮影している場合、カメラを上げ下げしている時も、ライブ映像として使わなけらばならないことも考えておかなけばなりません。
映像に大きな影響を与えないように徐々に動かしていくか、もしくは素早い動きでカメラを動かすかはその時の状況によりますが、頭に入れておきます。

カッコイイところを捉える

ギタリストのジャンプなど、派手な動きはバンドマン的には映してもらいたい瞬間です。
時には目視で「この人何かしそう」を感じておくのも大事です。

メインボーカルが別にいて、コーラスをするギタリストも映してくれ!と思うので曲を把握している場合は、積極的に映してあげると喜びます(自分なら)

一つのバンドを撮りまくること

複数回ライブ映像を撮っているバンドは、メンバーの動きも予想しやすくなってきます。
もちろん曲も覚えてくるので、歌い出しをきっちり合わせたり(時にはあえて外したり)することが出来るようになってきます。
自分の場合、曲を全て覚えていくことはしませんが、出来るだけ撮影予定のバンドは事前にライブ映像を見たり、曲を聞いたりして少しでも予習をして脳内シミュレーションをすることが多いです。

ちなみに初めましてのライブハウスを撮影する場合もYouTubeに上がっているライブ映像を見ます。
照明の雰囲気やステージの広さなどを事前にイメージしておくと余計な緊張も薄れます。

ミスは映さない

バンドにもよると思いますが、ミスや気の抜いた動作は映されたくないです。

もちろん、マルチカムで別のカメラがあれば、そういった部分を切れるので助かります。

ミスは分かると思いますが、ここで言う気の抜いた動作というのは例えば、顔を掻くとかそういう仕草です。

ライブ映像を撮るようになってから、こういう気の抜いた動作が気になるようになってしまって、バンドマンとしても気を付けなければと思うようになりました。

自分が演奏していないパートも、実は自分は休符を弾いているんです。その曲に参加しているのです。そういうところって意外とお客さんに伝わるものです。この心がけって意外と難しいですが、バンドマンとしては気を付けたいです。

番外編:FIX(定点)

三脚を使うFIX撮影です。普段自分はこれのみのライブ映像を作ることはありません。
ただし、手持ちカメラ+FIXのマルチカムはやります。

後ろから全体を写す定点カメラの設置は意外とハードルが高いと思ってます。

基本的にライブハウスでは客側が暗く、狭いことが考えられます。
仮に三脚を置けるスペースがあったとして、後ろからステージ全体を映す場合、お客さんの後ろ姿も映ります。
客入りが少しさみしいライブの場合は、バンドとしてはあまり見せたくない映像になる可能性があります。

逆に満員のライブの場合は、人も多いので大きい三脚を置くとかなり邪魔になる場合があることも考えなければいけません。

ということで後ろからの定点カメラは結構難しいです。

手持ち+FIXの二台体制の場合、ドラムカムを設置することもあります。
むしろこちらが多いです。
ステージに余裕があれば、ギターアンプの後ろなどに設置することが出来ます。あと、ドラムカムはドラマーが大好きなのでかなり喜ばれます(笑)

カメラは広角の方がドラムカムとして映える気がしてます。
長回しができるアクションカムもアリです。ただしアクションカムの欠点は、ダイナミックレンジに余裕がなく、暗所に弱いというライブ映像に向かない点です。
DJIのAction4なら結構イケる気がしてるんだけど、どうなんだろう。試してみたい!!!

Bロール

映像の初めなどでライブ映像とは違うカットを入れるのが好きです。
よく使うのは、次のようなものです。
・ライブハウスの看板や外観
・イベントの内容が書かれた看板
・バンドのエフェクターやアンプ
・ライブハウス内の印象的なインテリア

ライブ前の時間で撮影しておくといいです。
長さは自分が思ってるより長めにしておくと使いやすいです。
REC始めと終わり直前はブレる可能性が高いので、そこを使わない前提で考えておくとよいです。
また、同じ被写体でもバリエーションも多めに撮っておくと後で選べるのでいいです。
思いつく限り寄ってみたり、引いてみたりして色々撮っておけば後で選べます。

まとめ

ツラツラと書いてきましたが、うまく伝わりましたでしょうか。
上のポイントを頭に入れながら、Agp Studioのライブ映像を見てもらえると「ああ、これがアレか」と思ってもらえるかもしれません。

良かったらチャンネル登録して色々見てみてください。

何度も書くようで申し訳ないですが、ライブ映像ばっかりは好みによるものが多いのでこれが正解ではないと思います。

自分も他の人が撮影したライブ映像を見ながら、これなら自分にも取り入れられるかも!というカメラワークを真似している最中なので、参考にしてもらえると嬉しいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?