HPゲージと回復魔法 6月20日(木)日記

18:11
電車の中。
何もせずにただ「居る」だけの大切さについて、日記部員にした説明がとても納得してもらえた。

たとえば1週間でみたときに、
平日全部1日「1」がんばったら合計「5」になる。
でも、月火が「0」で水「2」木「2」金「1」でも、合計5になるから、0の日があってもいいんじゃね?と思っている。
つまり、「2」を出すための「0」。
これが朝昼晩って1日の中でも言えるし、24時間分割しても言えそうじゃないか?
さらに1時間を10分に分けてもよい。
それを統合失調症などの精神疾患のある人は人生単位でやってんのかなと思った。

これはあくまでも私の感覚。
実際、自分がお医者さんに言われたことともつながっている。
自分が限界を迎えて心療内科に飛び込んだ時、ガス欠状態だと言われた。
体力的にも精神的にもすっからかんということで、「うつ状態」と診断された。
それでも私は「早く治すには何をしたらいいんでしょうか」と、何か「する」をしようとしていた。
そこでお医者さんは、はっきりと、「何もしないでください」と言った。
とにかく寝て、目が覚めてもダラダラしていてください、と。
もちろん薬も出たけれど、ひたすら寝ることが一番効くとのことだった。
何かしないと、と焦ることも症状のひとつだと言われて、「何もしない」日々をひたすら繰り返した。

実際、物理的に何もできなかった。
1日布団の上までしか動けないし、ウーバーを頼んでも玄関まで取りに行くのすら辛かった。
でも、その動ける範囲が少しずつ増えていき、近くのコンビニまでいけるようになり、駅前のスーパーまで行けるようになり、先輩が心配して誘ってくれた河原でのささいなピクニックに行けるようになった。
でもここで少しでも調子に乗ると、すぐまた動けない日々に戻ってしまう。その繰り返しを何度も味わった。
そのうち、復職までこぎつけたあたりで、自分のHPゲージが見えるようになってきた。
このゲージは、働くだけじゃなく、遊んでも減る。
それどころか、家で本を読んだり、リラックスのためと思って決行した温泉旅行でも減ることがわかった。
逆に、何もせずにぼーっとしたり、寝ることでゲージが回復する。

これが、「する」と「居る」の違いなのだと、今ならわかる。
「する」は体力を使うし、「居る」は回復する。
温泉旅行はこれのあいのこで、温泉に入っている瞬間は「居る」ことができるから、ゲージが回復するんだけど、それ以外の「する」肯定が長すぎて合計すると減ってしまう。
本を読むのも結局頭を使っているので「する」に入ってしまう(流れるように読める小説とかならいいのかもしれない)。

こうやって考えると、「する」のバリエーションはめちゃくちゃ多いのに、「居る」は極端に少ない。
もしくは、温泉とか焚き火とか、「居る」をするために、それ以上の「する」をしなきゃいけない。
私はこの「居る」の種類をもっと増やしたい。

昨日の日記で書いた通り、安心して「居る」ためには誰かに身を委ねられる環境である必要がある。
例えば、電車の中でスマホを触っていないと落ち着かないのも、周りに知らない人しかおらず、とても安心できる場所じゃないからだろう。
いっそのこと寝てしまう、というのはアリだけど、何もせずにただ座って「居る」だけの人って、東京で見たことないかもしれない。

その点、タバコを吸う人にとっての喫煙所は、かなり「居る」に近い。
喫煙所の場合、"タバコを吸う"という目的が合致している人たちの間には、どことなく「今俺たちは一緒に仕事をサボっている」という共犯関係のようなつながりを感じているんじゃないだろうか。
また、"タバコを吸う"という、ひとつまみの「する」があるおかげで、時間が過ぎていくことへの罪悪感も多少薄れている気がする。
『居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書』の東畑さんが、「居る」ことの辛さから最初に逃げ込んだのも喫煙所だった。

でも私はタバコを吸わない。だからちょっとうらやましい。
そこでふと、トイレに希望を見出せそうな気がした。
トイレは完全に1人の空間だから、何者にも脅かされることがない。
そしてスマホを外に置いてきてしまえば、ネットの海からも自分を遮断できる。
そんな場所が家に絶対ついてると思うと、使わない手はない気がしてきた。
トイレカバーをふわふわにしたり、好きなポスターを貼って居心地のいい空間にして、目の前にお香を焚いて煙を眺めるのはどうだろう。
他人に見られたら病んでるように思われるかもしれないけど、その他人はトイレには入ってこれない。
誰にも言わずに、SNSにもつぶやかず、うんちしたくなったらうんちもできて。
1人の時間に浸るためにうってつけなんじゃないでしょうか。

そろそろ"若者"と名乗れなくなってきた30代。
必要なのは「HPのマネジメント」だなと思った。
そのために、回復魔法を何種類も持っておくことは、豊かな時間を過ごすための立派な能力だと言えるだろう。

家に帰ったら、テーブルの上にティッシュが一枚広げておいてあって、上に鼻毛が2本乗っていた。
翔ちゃんに「お前は鼻毛をテーブルに置いておく人間だ!!!」と言ったら「そうだ!!!」って言ってました。

今日のおすすめ🌿
ホテルプロデューサー龍崎翔子さんの記事。
体を回復させることに特化した4泊5日のプランについて。長期滞在すればするほど、全体の時間に対する移動の割合が減るから、その分休む時間の割合が増えていい。
ホテルにいる間って、休むことに罪悪感を感じなくていい。
紹介されているリトリートプランは、人に心身を委ねられる安心感のデザインとしてすごい。

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