衣紋凛

与えられた時間、お金をただ消費し続ける毎日に漂い続ける遭難者。

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最近の記事

素敵な商品のニッチな使い方

「今ね、単体で素敵な商品を組み合わせて、思いもよらないような使い方を研究してるのよ。」  午前10時半、テーブルに紅茶とお茶菓子を前にして、いつものように唐突にショウコさんは話し始めた。 せい子さんは、はい。と軽く相槌を打ってその先を静かに促す。 「単体で素敵な商品とは、まず見た目が美しいこと。機能的なこと。雑誌なんかでよく取り上げられてそうなもの。ね。 それで、あんまり人は使わないような使い方を研究してるの。」 まあ、研究と言っても単に思いつくに任せてるだけなんだけど

    • 1円にもならない事への情熱

      「せい子さん。1円にもならない事への情熱ってどう思う?」  午前10時半、週2回のショウコさん宅への訪問は今日で6回目だ。 ショウコさんは、本来たいそうなコーヒー中毒者らしいが、せい子さんがあまりコーヒーが好きではないと聞いて、いつもルピシアの季節の紅茶を出してくれる。ティーカップを載せたトレイをいそいそと持ってきて、椅子にスライディングしながら、ショウコさんはいつも唐突に話し始める。 「1円にもならない事って例えばなんですか?」 「うちね、子供が少し大きくなってから、

      • イエナカ未踏峰

         「幸せとは・・・生活の中に美を見出す事だと思うのよね」とショウコさんは言った。  午前10時半、よくあるごく普通の一戸建ての家のリビングに40代女性2人が、テーブルに向かい合って座っている。 「え・・・。そうですか。ショウコさんは今生活に美を見出されているのですか?」   せい子さんは驚きと戸惑いをわざと感じさせる口調で尋ねたが、ショウコさんはふふふっと意味不明の笑みをこぼし、そう。と言った。 せい子さんが、ショウコさんの家に訪れたのは今日で2度目だ。週に1回午前10

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