見出し画像

真夏、深夜三時の悲劇

最近暑くなってきたなと思ったらあっという間に6月。蚊も出てきて、蚊に刺されて腫れた膝が痒いが、徐々に傷が治りにくい体になってきているので絶対に掻くまいと必死に我慢している。

春の頃、未だ来ぬ夏に思いを馳せて「エモいな〜」とか思いながら『蚊に刺されの痒さ』やら『首筋を伝う汗』やら書いていた私が懐かしい。夏の訪れがすぐそこに来た今になると全然エモくないわ!と叫びたくなる。

今日は(書くことがないので)そんな夏の思い出を一つ。

私が小学生だった頃、夜寝ていると部屋の外から母のやかましい叫ぶ声が聞こえる。あまりのうるささに、「明日も学校なんだけど……」などと思いながら起きると、ドアを隔てて聞こえてきたのは、ジジッジジジッという音。と、母の叫び声。私は一瞬で察し、ドアをガッと開けられないように押さえてから、「なに!?どうしたの!??」と聞いた。

「せ、セミが!!!あれ、なんで開かないの、ちょっと!助けてっっ!!」

生憎私も命は惜しかった。私は虫の中でセミが一番苦手なのだ。芋虫やミミズ等の、毒がない虫なら大体触れる私も、セミだけは(ゴキブリと蛾も無理)形容し難い恐怖に襲われるのだ。薄情な娘は、母を見殺しにして只只必死に自分の部屋のドアを押さえていた。

しかし、いつまでもそうしている訳にも行かない。その日の家には私と母しか居ないのだ。何より、早く対処しないと明日寝坊する確率が上がる。ということで、恐る恐るドアを開け、顔だけ出して様子を見ることにした。

目の前には、左手に虫取り網、右手にゴキジェットを持った母。その斜め下、私の靴の上には、虫取り網に閉じ込められたセミが居た。私達親子は「ゴキジェットはあのゴキブリを殺せるんだから最強」という謎の自信を持っていた。ところが、驚く事に、セミには効かないらしい。母はもはや笑っていた。私は涙目だった。同時にじわじわと腹が立ってきた。なぜこやつは私の靴にとまっている、私の靴がゴキジェットだらけになるだろ!!!!!!!

最終的に、母が私の靴ごと外に出して解決した。あの日の事は大人になっても忘れないだろう。現に六年程経った今でさえ鮮明に覚えているのだ。それ程強烈な出来事だった。

どうしてそんな事になったのか聞くと、昼に玄関にセミが死んでいるのを見つけ、一応本当に死んでいるのか砂(ハムスターの床材)を投げて確認したところ、反応が無かったので、深夜どかしてしまおうと箒で掃いたら、あの耳障りな音と共に飛び去って行った……と思ったらUターンして玄関に入ってきたと言う。……なんて奴だ。

その事件は、セミの狡猾さとゴキジェットの効力の限界と母と娘の絆を再確認することが出来た。

これを読んだ方も、セミには充分気をつけるといいだろう。何度も言うが、ゴキジェットは効かない。

p.s.嫌いな虫ランキングは一位セミ、二位ゴキブリ、三位蛾です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?