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ざっくり源氏物語#3帚木

源氏はすくすくと成長しました。あっという間に17歳。元服もして、楽しい青春を過ごす。はず。
この巻は「雨夜の品定め」で有名な巻になります。
ではスタート!

冒頭です。
光る源氏、名のみことことしう、言ひ消けたれたまふ咎多かなるに、いとど、 かかる好きごとどもを、末の世にも聞き伝へて、軽びたる名をや流さむと、忍びたまひける隠へごとをさへ、語り伝へけむ人のもの言ひさがなさよ。

ここで光源氏、という名前が出てきました。幼児のころ、あまりに美しいので「光る日の宮」と呼ばれていたあだなが姓を賜ったので、それを合わせて光源氏、と呼ばれたよ、という始まりで、通常当時、ひとの名前とか軽々しく呼ばず、住んでいるところ+官位とかで呼ばれます。たとえば光源氏はのちのち六条の大臣とか言われたりするんですけども、ここではわかりやすくするために、文章の参照をする時など以外は光源氏とか源氏、って言っていきますね。
ここはようするに光源氏とかたいそうな名前で呼ばれているが、言えない失敗とかも多く、こんな(『源氏物語』のこと)色恋沙汰が世の中に残るとかなんてみんなおしゃべりなのかしら、という書き出しです。
桐壺の巻までは前書きみたいなもんですね。こっから主役光源氏の活躍(笑)を書くからね、っていうオシャレな文頭です。
このころ、光源氏は本妻がいる左大臣家にもなかなか行かず、浮いた話もそんなに聞かない、真面目一辺倒の坊やでしたよ、と続きます。
なるほど17歳までは真面目で宮中に住んで、妻の家にも遊び歩きもしないとか。ふううううん、って思いますよね。導入で心惹かれました。

左大臣家はなかなか妻に会いに来てくれない源氏を困ったな、と思っていたけど、妻の太い実家として、あれこれ着るものやなんやら調達したり、息子たちは源氏の遊び友達になったりとなにかれとなく世話を焼いていました。源氏が会いに行かずずーっと御所にいるのは理由があるよね。みんなっ知ってるよね。ってやつですけどね。
そのなかでも頭中将は源氏と気が合って、あれこれ二人で遊び歩く親友になりました。中将もあんまり帰らず、しかも遊び歩いているわけですよ。
で、源氏が左大臣家に行ったときも妻の部屋にはいかず、頭中将の部屋に行ってお喋りしたり、一緒に遊んだり勉強したりとすっかり遠慮のない(一応源氏は帝の息子だからね)親友になりました。

さて、「雨夜の品定め」。
源氏は内裏にある雨の夜自分の部屋で手紙を読んでいました。そこに親友頭中将がやってきて、なになに手紙?見せて見せて!!と始まったわけ。見せられるやつを見せながら選評していく男子たち。そうするとお喋りに花が咲く。
というわけで、おしゃべりのネタはコイバナになるよねえ。
あげたテーマはどんな女性がいいか、って話なんだけど、そもそも女性は上中下あるよ、とか言ってバーカ!って感じだよね。
ちなみに上は皇族とか摂関家みたいな感じね。下は下級貴族ってやつですね。でも貴族です。庶民ではありません。

源氏における(?)紫式部が書く「いい女って」という話を見てみましょう。
そもそも中流の定義が必要だ。中流にも種類があると。
その①成り上がり。昔からのお金持ちじゃないから世間的にいろいろ言われるよね
その②没落貴族。もとは高貴とはいえ「世にへるたづきなく」世渡り下手で気位は高いけど、余裕がないので問題ある。
このどっちも中の品(中流)だろう。と。だが!中流っちゅうのはこれだけじゃない。
おまえ(源氏)は世間知らずのお坊ちゃまだからしらないかもしんないけど、③世の中には受領っていって、他人の国を治めながらも中流のものがいる、と。
受領っていうのは地方の統治をする責任者ですね。国司は中央にいて、受領は現地にいる、みたいなイメージです。
「なまなまの上達部よりも非参議の四位どもの、世のおぼえ口惜しからず、もとの根ざし卑しからぬ、やすらかに身をもてなしふるまひたる、いとかはらかなりや。」
つまりそんじょそこらの上達部、かんだちめ、といいまして三位以上の人をいいます。昇殿(清涼殿に上がれる)できる人を殿上人っていうんですけど、その中でも上達部は大臣とか大納言とか、国家運営をがっつりやる内閣の人って感じですかね。ということで、この言い方だと三位以下の人でも評判がよくって、余裕があるから心根もいやしくなく、教養もあって、っていうのは感じがいいよね。というそこそこのお金持ちっていいよね、って話でそりゃあそうだとしかいいようないですよね。
「やっぱ金かあ」と源氏がいうと、一緒に話していた左馬の頭が笑って言います。
「異人(ことびと)の言はむやうに、心得ず仰せらる」またまたあなたとしたことがよくいいますよ!ってことですね。
「家柄がよくって金持ち=なのに感じ悪い。これは論外として、そうやって生まれたら普通、素晴らしい女性だよ。そんなんあたりまえ。だが!!考えても見てくれ、世間に知られていないような鄙びた誰も訪れないようなあばら家に高貴な姫がいたらどうよ!!すごくない?!まったく完璧な人なんてそういないわけで。ってえーとこれはギャップ萌えの話・・・?
左馬頭の話はまだ続きます。
「いやまあお付き合いはいろんな人とできるけど、妻となると話は別よ。男の採用も大変だっていうのに、家の中の主人(このばあい家っていうのはその家が管理している荘園とか、財産とかいろいろ管理運用を担う人)を選ぶんだってなま優しいことではないよね。仕事なら複数で事に当たるけど、家でこれを任される人はひとりだから。だからここはいいけどここがやだ、とか思っているとなかなか決められなくってね。(という女遊びの言い訳?)つまり、「わが力入りをし直しひきつくろふべき所なく、心にかなふやうにもやと、選りそめつる人」
を考えると決まらないんだよね。
ここはようは「俺があれこれ指示だししなくても出来て、信頼と実績かある心にかなう人」っていうかなり高めの要求をしています。
仕事の採用と妻の採用(?)を同列で語るのはどうなの。とはいえ、紫式部がそう思っていたか、当時はそういうふうな感じだったかわかりませんけど、平安貴族(男)が蹴鞠して女遊びしてるだけじゃなかったように、女性も邸の奥で人に顔も見せず遊んで暮らしていたわけではないってことでもあるのかなと思います。
女性(妻)は奥にいて人に姿を見せずただ静かに過ごしているだけではなくて、その家の財産や収入の管理運用、そこに雇われている人々の上司でもある、というなかなかなタスクを負っていたようです。
女性官吏のキャリアについてはまたどっかでお話するかなと思うので、これくらいで、まあとにかくここでは左馬の頭としてはそうらしい。
そもそも妻の実家に通い婚をして、かなり年月が経ってから自分の邸に迎え入れるスタイルなので、求められる能力も時代によって変わりますよね。
さらに女性評は続きます。左馬頭、しゃべりすぎなんですよ?次回は左馬頭だけで終わりそう。そんくらいめちゃくちゃながくしゃべってる。ということで。続きは次回!


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