見出し画像

ミンヒジンの世界に潜入する / BE(ATTITUDE) Issue03 Part2 日本語訳

Editor:チョンジョンヒョン、キムジェフン、パクサナ、チンチェミン Contributing Editor:チャウジン Photographer:ソンシヨン

Artist Project
アーティストと交わす深い対話、シリーズでお会いしましょう。

《ビーアティチュード》はアーティストとの深度の深いインタビューを通してその職業の世界と創作に対する態度を共有する "アーティストプロジェクト"を進めています。4番目の主人公は、ADORのミンヒジン代表です。私たちにはSMエンターテインメントのクリエイティブディレクターとして新韓流時代を率いた人物としてよく知られています。2019年からハイブのCBOとして従事し、昨年ハイブの独立レーベルであるADORヲローンチし、CEOを務めています。普段大衆に姿を表さない彼女は、昨年〈You Quiz on the Block(유 퀴즈 온 더 블럭:tvNの韓国バラエティ番組)〉を通して初めて放送に出演し、大きな話題となりました。《ビーアティチュード》はKPOP業界で20年間ネームバリューを積んできたミンヒジン代表を独占インタビューしました。KPOPに対する彼女のインサイトに、アーティクルシリーズでお会いしてみてください!

アーティストプロジェクト 04:ミンヒジン
《ビーアティチュード》は、深みのあるインタビューを通して特定アーティストの制作の世界と創作に対する態度を共有する"アーティストプロジェクトArtist Project"を進行中です。私たちは、その4盤面の主人公としてミンヒジンを選びました。SMエンターテインメントのアートディレクターとクリエイティブディレクターとして活躍し、新韓流を代表するKPOP産業で常に話題を集めてきた彼女は、2019年からハイブでCEOとして従事し、昨年ハイブ参加の独立レーベルであるADORの代表を担い、"ミンヒジンプロデュース ガールズグループ" デビューを陣を取り指揮している最中だ。《ビーアティチュード》は大衆文化評論家であるチャウジンをコントリビュートエディターとして迎え、ミンヒジンキッズとKPOP消費に積極的な内部人員をインタビュワーとして補強し、総5名のインタビュワーがミンヒジン代表と対談形式でインタビューを進行し、二篇のアーティクルを発行する。

Part1. ミンヒジンの世界に潜入する
KPOPブランディングを革新した代表的な人物として、現在ハイブ参加の独立レーベルADORを率いるミンヒジン代表とのエクスクルーシブなインタビュー、その第一編が公開された後、《ビーアティチュード》編集局は驚きを隠しきれなかった。急激に上がっていく閲覧数だけではない。全世界から流入した読者分布図に驚き、発行直後アラブ語、スペイン語、タイ語など多様な言語にインタビューが翻訳される状況に鼓舞された。Twitterを媒介として、第二編に対する期待感のこもった反応が持続的に共有される現象もまた同じだ。韓国語と英語でぎっしりと満たされたコンテンツが、読者にきちんと出会う時、稲妻のような楽しさが湧き上がるという事実を体感したのである。続いて予定されていた発行日を引き伸ばし、Part1を公開した以後、ミンヒジン代表に訪れた変化に耳を傾ける時間を持つことになった。ソーシャルメディアを横断する読者の反応に対する考え、ADORでデビューを準備中のガールズグループに対するわずかな話、インスピレーションを与えるトラックリストなどのコンテンツも追加した。今回公開するPart2を通して、ミンヒジンという人物の考えや態度、そしてより私的な話を共有し、これまで彼女の一挙一動に関心を向けてきた人たちのニーズを満たす、他に見ることのできない機会となることを望んでみる。

(パクサナ)パート1を発行した後、人々の反応が本当に熱烈でした。誤解が解け、真摯な心持ちに感動したりもしたのでしょう。ヒジンさんはいかがでしたか?

したかった話を全てできたわけではなかったのですが、それでも話すことができてすっきりした部分が少しありました。何より消費者の方々と交流した気分になって、私にも意味のある機会になったと思います。以前のインタビューとは少し違った雰囲気で進行されたので、私も自分の話がどう受け入れられるのか気になっていたんですが、温かい心で読んでくださって本当に感謝しています。パート2のインタビューは、編集局で "人間・ミンヒジン" に対してお聞きしたいと言ってくださったので、もう少し楽に話してみようと思っています。テーマが私の個人的な話に焦点を合わせていく予定なので、もしかすると期待してくださった内容とは違ったり、長い話になるかもしれません。だから、念押しさせていただきたいのですが、長文が苦手だったり、私の個人的な出来事に興味がない方でしたら、今、そのウィンドウを閉じるのも良いという意見も、注意深く差し上げておきます。(笑)

(チンチェミン)ヒジンさんがプロデュースするガールズグループに対する関心がとても高いです。ローンチ予定のガールズグループに対するヒジンさんの愛情が人々の期待感を集めていますが、ヒジンさんは自身をどんな育成者として認識しているのか気になります。

気持ちは母親です。(笑)母親代わりの役割であり、友達のような気持ちです。事実その子たちがすごく優しくてきれいで、いつも自慢したい気持ちです。私は、幼い頃にアイドルを好きになってみた経験がなく、スターに幻想を持つタイプではありませんでした。だから以前の会社でも芸能人は、私には同僚や妹・弟、娘や息子のようなイメージに近いと言える存在でした。だから、私が初めて作った会社の練習生たちは、よりそう思う他ありません。むしろいつも冷静な気持ちで平常心を維持しなければと自ら周知させます。何週間か前に、偶然聞いた話なのですが、会社の他部署構成員の方達が 「ADORの練習生たちは挨拶もよくするし、本当に礼儀正しい」と褒めてくださったそうなんです。その瞬間本当に涙がぐらりと回ってきました。「あぁ、親の気持ちってこういうものかな?」と思いました。「パパ、頑張って〜」という歌が聞こえてきた気分とでも言いましょうか。(笑)すぐにメンバーたちのグループチャットにすごい勢いで賞賛メッセージを送りました。

私は表に良く見せるために努力する人が好きではありません。そういうことにあまり騙されもしないです。どんな状況でも誰にでもあたたかい気持ちを持って接する人であることを願っています。見せつけるための親切は、自発性が欠如しているに違いない "仕事" になって、結局疲労感に繋がって、続けるのが難しくなります。内面の真心が大切だと思っています。特に大衆を相手にする仕事をするならよりそうでしょう。人間はロボットではないので、間違いもするし、毎度親切にできない時もあります。表に見せる人柄にこだわるよりは、内面がしっかりしたあたたかい子たちになることを望んでいます。

f(x)_[Electric Shock] © SM Ent.
Super Junior_[Sorry, Sorry] © SM Ent.

(キムジェフン)お話しを聞いてみると "トレーニング" という過程に興味が湧いてきました。どんな方向性を持っていらっしゃるのでしょうか?

20年余りの期間仕事をしてきて、これまで業界の様々な問題に直面して、私なりのノウハウと哲学が生まれた部分があります。よくキャスティングやトレーニングを実際の制作過程と分離したりもするのですが、私は完成度の高いクリエイティビティcreativityのためにキャスティングおよびトレーニングの過程がかなり重要だと考えています。過去クリエイティブディレクター時代では、どうしてもトレーニング過程に介入することはできませんでした。だから、別途レーベルをローンチしてキャスティング、トレーニングを含めた全過程を担当したかった、ということです。やはりアイドルを志望する子たちの平均年代が幼いので、特により重要だと思っています。自然にトレーニング過程中に生じる、色んなささいなことにもかなり気を遣っています。

これまで組織内で様々な予期できない変動事項が多かったので、おそらく外部的にも混乱されていたと思います。合同ガールズグループプロジェクトとして始まりましたが、以降ADORガールズグループプロジェクトに変化したので、本格的には2021年9月からADORガールズグループプロジェクトの全体進行システムを管理するようになりました。その最初のボタンが、トレーニング段階でした。一番初めにしたことは、健康・生活コンディション点検と、宿舎・練習室コンディションチェックでした。デビュー組になると、色々な準備が必要になるので、普通の学校生活が難しくなります。でも実際に学校生活をしなければならない時は学校が嫌でも、いざ学校に通えなくなると心残りや剥奪感を感じるようになったりもするんです。人は経験できなかったことに対する未練を持つものなので…だから可能なら、それの代わりになる環境を作ってあげたいと思っています。私はうちの練習生活が小さな学校生活と似たようなものだと思っています。だから、学校の代わりに会社で勉強しているんだと思います。私たちが練習する内容が音楽、美術、歴史、語学領域と似ているんです。ある意味、興味がある分野をもっと集中的に勉強するようになるのと同じでしょう。一緒に練習する友達、トレーナーたちをを通して関係性、社会性も勉強することができます。だから、私たちの組織の関連構成員の方たちにも、みんなが先生の役割をしなければならないということを強調しています。

そういう脈絡で、曲の歌詞を書く時間を持つようにもなりました。一種の国語、文学、作文の時間だと考えています。まず、私が音盤に対する全体コンテンツと曲の方向性に関して説明してあげて、該当する各自の経験を短くお互いに話をする時間を持ちました。メンバーたちの経験を聞く過程も意味があって楽しいですが、提出した内容に可能性が見えて感心しました。なので、少ないながらも曲の歌詞として一部載せるつもりでもあります。学びの過程としての選択だということです。幼いので未熟ですが、未熟だから勇敢でもあるんです。秀でた歌詞ではなかったとしても、ありのままの自分の感情を正直に解放した過程と内容は、そのままで本当に尊くて輝いています。才能の有無や可否を軽々しく判断するより先に、時間を取って絶え間なく観察する期間も必要だと思っています。実際にやってみなければわからないし、すぐには才能がなく見えたとしても、続けて練習していたら才能を発見する場合も多いんです。そういう場合を逃したくない、ということです。

소녀시대_[The Boys] © SM Ent.
f(x)_[Pink Tape] © SM Ent.

(チャウジン)メンバーたちはヒジンさんに対してどう思ってるんでしょうか?

それは私にわからないでしょう。はは。私がどんなに楽に接しても歳の差と、代表という位置だからこそ少し難しいでしょう?(笑)呼び名が与えるぎこちなさがあるんです。 "代表" という呼び名はすごく堅くて嫌なんですが、かといってヒジンさん、PDさん、ディレクターさんと呼ぶには全部同様になんだか変で、そのまま私たちの間では呼び名を "代表" として整理することにしました。ですが、うちのメンバーの中の一人が私にチャットを送ってきたんですが、誤字で "テピュニム"(*テピョニム:代表)と送ってきたことがありました。実はその表現が一番笑えて可愛いくて気に入ってます。ははは。

急に思いついたんですが、私がもうある程度歳取ってみると、うちのメンバーたちを無意識的にとても赤ちゃんのように話してるんじゃないかと思うんです。メンバーたちに対して簡略に説明して差し上げるのが良いと思います。実際会ってみると、才能と素質、情熱がものすごくて、ただ幼いだけの感じとは違うんです。それぞれの才能と魅力が全て違う、ということが特徴の一つです。やはり一緒に練習してきた期間がある程度あるので、お互いにとてもべったりしていて、言語的に全てのメンバー個々人が韓国語、英語を皆使いこなすことができるので、多様なファンの方との接点がより広くなるんじゃないかと思います。

(チョンジョンヒョン)メンバーに対してのお話をもう少し聞けますか?

みんな一人一人について触れたいのですが、そうはできないので、う〜ん…こういう時は普通、マンネ(*一番年下の子、末っ子)を選んで話すんでしょう?(笑)うちのマンネは、クールで洗練された子です。私の家に遊びに来た日、一緒にご飯を食べて書店にも行って、あれこれ話をしながら街中を歩いたのですが、ぎこちなさもしばらくしたら、友達と散歩しているような感じにまでなりました。才能と素質が本当に溢れています。若いのに思慮深くて、その歳世代のあどけない姿まで。その日の澄んだ天気まで相まって、爽やかな気分になったことが思い出されます。一度はメンバー全員がコンテンツと方向性に対して聞くのも兼ねて、私の家に遊びに来たことがあるのですが、私が家で聴いていた音楽を聴いて、そのおちびちゃんがとても素敵だとしきりに感嘆してメモしてたんです。ははは。同年代の子たちが知っている曲でも、聴いたことのある曲でもなかったんですが、心から気に入っているのを見て、ふと自分の幼い時代が思い出されてなんだか妙な気分でした。不思議だったんです。世代を飛び越えた、変な同質感を感じて。気持ちではメンバーたちみんなに対して全部話したいのですが、話そうとしたらキリがないでしょう。本当に、難しいながらも面白くて、可愛いくて、不思議な驚きの連続です。

(チンチェミン)メンバーたちの話を聞いていると "ミンヒジン キッズ" という言葉が思い出されます。もしミンヒジンキッズに言ってあげたい言葉がありましたら、お願いします。

うちのチームメンバーの中のキムナヨンさんが使っていた言葉です。私が作ったコンテンツを好きで楽しみながら育ったそうなのですが、一緒に仕事をするようになってとても不思議だと言ってました。私も不思議で、感動的でありながらも気恥ずかしい気持ちです。私の口から表現するのは変だし、言葉自体が本当に恐れ多い感じです。数年前の記憶が浮かびますね。ある講演でスピーカーとして参加したんですが、講演が終わった後、学生たちが訪ねてきてサインをお願いしたんです。私にサインなんていうものは、決済用でしか他人にしてあげたことがなくて、全然慣れておらず恥ずかしくて縮こまってしまったので、実際にできなかったんです。その子たちは私に会って感激してうるうるしたと言って泣くんです。う〜ん…その時感じた気分が忘れられません。胸がいっぱいになって、なんだか感動という言葉では足りないくらいの気分にぐっときたんです。私が何でも、会ったという理由で涙まで流しているのかと、その気持ちが私を驚かせたんです。隣の家のオンニ(*お姉さん、年上の女性)と同じで、「泣かないで」と慰めました。その気持ちがありがたくて、じんとしました。たまに業務のミーティングで会う方たちが、ご本人をそう表現したりもします。あるいは娘息子、甥っ子姪っ子がそうだと。うちのチームのナヨンさんがそうであるように、その子たちもどの分野でもよく成長して、才能ある社会の一員として役割を担う姿を思うと、う〜ん…なんと表現するべきかわからないんですが、少し胸があふれる気分です。とても感謝して、私が持っているありがたい気持ちが伝えられるように、ものすごく良くしてあげたい、という気持ちだけです。

f(x)_[Pink Tape] | f(x)_[Pinocchio] | 少女時代_[The Boys] | Red Velvet_[Ice Cream Cake] | Red Velvet_[Ice Cream Cake] | 少女時代_[The Boys] | NCT U_[第7感] © SM Ent.

(チンチェミン)《ビーアティチュード》との最初のインタビューが発行された後、ヒジンさんに訪れた変化はありますか?とてもささいなことでも構いません。

変化を説明するなら、前置きが少し必要になるかと思います。少し長い話になるかもしれません。変に聞こえるかもしれませんが、私は相当な期間、嫌われて(?)いるという気分をかなり感じながら過ごしてきたんです。先立ったインタビューで少し明かされたのですが、事実に基づいた批判や批評以外で、基準や根拠なく誹謗中傷をしたくて理由をつけたケースを相当に長く経験してきたように思います。実際私の制作ではない場合も多くて、流したりもしてきたのですが、無視して放置してみたら、ある瞬間フレームになって、仕掛けられた罠になったような感じがしました。私の仕事に対して、あるいは私に対して正確に知らない人たちが、私を評価することにいちいち対応できないでしょう。反論や訂正をしたとしても、またその相手が受け入れる態度がないとできないことでしょう。ですが推測も長い間放置していたら定説になって、名前だけ知っていて私をよく知らない人たちがもっと簡単に罵倒したりもして、悪循環に繋がるようでした。

初めから誹謗中傷を目的にしていたなら、事実確認をしたとしても意味はありません。実際他人の真実には大して関心がないでしょう。「私はみんながそう言うからそうだと思った」と言うケースをよく目の当たりにします。アイロニック(*皮肉)でしょう。自分に対するモニタリングをあまりしない方なので、それだけでも後になって知れてよかったと言えばよかったのでしょうか。(笑)他人にとってはすぐに過ぎていく他人のことですから、理解ができないことでもないのですが、あれやこれやと数年間、気苦労がひどかったんです。今はかなり良くなりましたが、一時はパニックと不安が酷くなって精神科診療に相談を受けたりもしていました。インタビュー第一編が公開されて、閲覧数に驚いたジョンヒョンさんがこんな言葉をお話しされました。「あぁ、こういうのがエンタメ業界で働く感じなんですかね?」私が諸刃の剣、だと答えました。おおよその人たちが有名になることが羨ましいからなのか、その反対の一面には興味がないみたいです。だから、他人が誹謗中傷で苦しんでいることにも総じて鈍感なんでしょう。多分こういう私の話が疑わしい方もいらっしゃることでしょう。どんな業界でも明と暗が存在します。私が、向けられた関心を楽しむタイプではないうえに、強迫的に仕事をしてきたので、苦痛を倍に感じるようになった気もします。

少女時代_[Hoot] © SM Ent. | f(x)_[NU ABO] © SM Ent. | EXO_[EX’ACT] © SM Ent. | EXO_[XOXO] © SM Ent.

(パクサナ)ものすごく意外です。予想より困難が大きいものだったんですね。

組織の惰性を壊して新しい結果として達成に至ることは、特に個人にとっては並大抵の苦しみではありません。ものが出来上がる過程で会社・同僚・消費者皆を説得しなければならない多重苦を経なければならないことはもちろん、初めには手が出なかったことも、いざ成し遂げてみるとこれまでの苦しみが虚しくもすぐに当然のことだったと思えてきたりもするんです。そうやって組織が整備されて、なかったシステムが作られて、会社が一段階成長できた契機を用意するのに貢献しました。これを主導した個人としても、その過程で十分に達成感を感じることができました。ですが、私はこの過程で内・外部的に多様な仕事を経験して、傷ついてきたみたいです。功は会社に、過は個人に(*成功は会社に、過失は個人に、の意)降り注がれるだけのような気がしていました。こういう至難が長くなって意欲も消えて、気持ちが難しくなりました。結局、燃え尽き症の一つの要因になって、退社決定にもある程度影響を及ぼしたと思います。私に対する言及が初めからなければ良かったんですが…前回のインタビューでお話ししたように、大衆文化の仕事をするディレクターの苦労だと思えば、苦行をする気分で過ごせたんでしょうけどね。むしろ少し適当に仕事をしていたら苦痛が多少薄まったと思うんですが、私はそうはしていなかったので、虚無感が酷かった時は離職ではなくいっそこの職を降りようかと悩んだりもしていました。

(パクサナ)心が痛みます。最近はいかがでしょうか。克服されたんでしょうか?

退社したら少しは良くなると思っていました。ですが、退社を決定した後、転職をする過程でも同様に繰り返されました。私は金銭的補償のために退社と転職を決めたのではありません。転職する会社に対して漠然とした期待や憧れがあったわけでもありません。心理的なつらさから逃れることが優先目標だったので、他の人たちのように退社前に前もって転職先を決めてもいませんでした。世間を支配する一般的で普遍的な基準や目標とは違う、私のある基準と理由があるかもしれないじゃないですか。その理由を必ずしも他人に話す必要もないですし。いずれにせよ人生を生きていく価値基準はみんな違うし、また私という人に対する理解がないでしょうから、そういうものだと思ってきましたが、個人的なイシューである転職に対してまでとんでもない推測と噂がついた時は、どうしようもなくて感情的に諦めがつきました。「あぁ、ただ私のことが嫌いなんだ」と考えるようになりました。

外からは私が "人間SM" だと感じたと言われました。転職している時に聞いた話です。個人的にはすごく驚いたし、不思議でした。外部の認識と違って、私には長い間在職したわりに、会社と縮めることのできない一定の距離感が常にあったんです。補償や待遇の問題ではありません。若くして理事というタイトルを得たのに退社した理由に関する質問をよく聞くんですが、理事として名前が載ることは実際、私には対して意味のある出来事ではありませんでした。役員のタイトルより私の仕事の方がもっと重要でしょう。私は組織に無条件的な忠誠心を持つタイプではありません。義理を大切にするならともかく。組織内の人の間での義理はとても重要です。この二つは全然違う概念でしょう?私は私の仕事にロイヤリティがあると思っています。とにかく、ありふれた転職までもイシューにしないと気が済まない状況に、本当に心が難しかったです。毎時薄氷の上を歩いている*気分でした。

*薄氷の上を歩く:危ない場面や危険な状態に瀕していること、緊張状態にあること。

だから今回インタビューを進行して、反応を伝え聞いて、感情が入り混じって複雑な気分でした。気に入ったフィードバックをもらえたというよりかは、私の期待より、共感と理解を受けた感じのようで。理解してくださって期待してくださる全ての方々がありがたかったです。それで、インタビューを通して "変化した点" というなら、 "2回目のインタビューをもう少し楽にできそうだ" ということと、断絶されたとばかり思っていたコミュニケーションの可能性に対して小さな発見があったということでしょうか。私は今の仕事で制作者、消費者の関係というものが妙に慣れない関係だと感じていたんです。その距離感が嫌だったみたいです。心を尽くして制作するので、不必要な疑いを受けたくなかったんです。また、消費者の意見をまとめることが私の仕事の基本ですが、遠い関係だったら意見を聞くことができません。以前は私が前に出て話せる立場ではありませんでしたが、これからは少し違うようにもします。何せ私は正直ですから。これまでしてこなかったこういう話を打ち明ける理由は、過ぎて行った苦痛を吐露しようとした訳ではなくて、本心を知ってほしいからです。過去に対する理解なく、現在を直視するのは難しいですから。まず私が心から近づけば、遠くに感じていた消費者の方たちともいくらでも通じることができそうだ、という内心の期待と確認が生まれた部分が個人的に励まされます。手のひらを合わせてこそ音が出る(*互いに手を取りあえば物事がうまく進むの意)ものでしょう。

(チョンジョンヒョン)また、変わっていないものは何でしょうか?あるいは訪れてほしい変化は?

それにもかかわらず変わらない誤解や憶測があるみたいです。人の心というものは、一度嫌いだと思ったら、事実がどうであるかとは無関係に全てが嫌いになってしまうものでしょう。それぞれの理解度はみんな違いますから。だから、訪れてほしいと思う変化は、偏見が解消されることを願っているということです。お話ししたように、私が少し強迫的な性格なので、考えることが多くて毎度疲れます。本当に全てのことに力を尽くすタイプなんです。全力で仕事をして一生懸命理解させたくて、最善を尽くして誤解がないように伝えようと努力しています。役職に対するそれぞれの固定観念があるじゃないですか。私は皆さんの固定観念の中のディレクターやCEOとは少し違うかもしれません。私に関心のある方たちでしたら、既存の会社や代表というそれぞれのフレームに私を閉じ込めず、私が進めている仕事の過程を少しじっくりと見守ってくださったら嬉しいです。初めから色眼鏡をかけて従来のフレームを被せたら、何事もちゃんと見えません。自分の人生を歩いていて無茶なチャレンジをする人はそう多くありません。ちょっと楽な道を選んでもいいのですが、わざわざ疲れてでも誰も行かない道に方向を決めて進んでいるところです。私個人の選択であるだけに、それを理解してくれという意味では絶対にありません。ですが、腕組みを少し解いてくださったらすごく嬉しいとは思います。ちょっと緩める感じで。

大部分が《ピンクテープ》について言及して、期待してくださったりもします。ですが、実際似た作品が出たら自己複製だという評価をされるだろうし、全く違う作品が出れば 「期待してたけど意外だ、残念だ」と評価されることも予想できます。だから、あれもこれも嫌だとなり得るリスクの大きい仕事であることをわかっているだけに、どの時よりも慎重に取り組んでいます。正直にどんな気分かというと、雨が降りしきる場所で「雨に打たれず雨の間をすり抜けて目的地へ到着してください」みたいなミッションを遂行している感じとでも言いましょうか。(笑)会社を運営する立場になったので、新たな悩みが生じました。利潤を追求することが企業の優先価値であるので、目の前のさまざまな選択においてジレンマが生じることもありますが、少なくとも私の決定の優先順位は "最小限の良心" になると思います。"挑戦"が本当に美しくて意味のある価値だと信じる方であるなら、あえて願わくば、これからも不必要な誤解や憶測は抑えていただいて、信頼で見守っていただきたいという願いがあります。

 (キムジェフン)話を聞いていると、本当に負担が大きかったんですね。

負担はどうしようもない私の役目だと思っています。むしろインタビューをきっかけに、消費者の方たちをはじめとしたファンの皆さんに、本当に感謝していると言葉をぜひお伝えしたいです。私のADORのチームメンバーたちが教えてくれたんですが、前回のインタビューと関連して、これまで間違って伝わった内容について国内・外のファンの方たちが一つ一つ事実関係を訂正してくださっていると聞きました。(感激)このことだけでなくても、これまで韓国と海外各国のファンの方たちに本当に感謝の気持ちが大きいのですが、この場を借りて感謝の言葉をお伝えしたいです。私のチームのファンの皆さん、あまりに感謝していて、実際のところなんと表現すればいいかわからないくらいです。まだ正式にメンバーが公開されていないのに、大きな関心を送ってくださって、心から恐れ多い気持ちです。驚くことに本当にいろんな国から多くの応援を送ってくださっています。私がブラジリアン音楽を好きだからかって?(笑)ブラジルをはじめとして本当に全部お話ししたいのですが、一つ一つ挙げるのが難しいくらい、多くの国から期待と激励をしてくださることに言葉が出ないほどです。期待が大きければ、また失望も大きくもなるので、負担が大きいです。果てしない期待よりは余裕を持って楽しんでいただけることを願います。私も最大限ポジティブに考えようとすごく努力しているところです。たまにぐっと息が詰まる時もありますが、「こんな関心の中でプロジェクトをローンチする仕事はまたなんてラッキーなんだ!」と考えてポジティブな方向にマインドコントロールをしています。とにかく負担感ののせいで感謝の挨拶を差し上げないこともバカみたいだと思えてきて、お伝えします。一生懸命やって、時が経っていい結果として、本当に全ての皆さんに恩返ししたい気持ちです。

Red Velvet_[Russian Roulette] © SM Ent. | Red Velvet_[Rookie] © SM Ent. | EXO_[12월의 기적] © SM Ent.

(チンチェミン)"ミンヒジンについてどれくらい知っていますか?"という質問にヒジンさんの周囲の人たちはどんな返答をするでしょうか?大衆の人たちは?

私が何であろうと、私に対して必ずしも全て知っていなければならない理由はないでしょう。でもどうやら、ファンの方たちに消費者として会ってみて、全責任者である私に理解が生まれればビジネスが遥かにやりやすくなる気がしたみたいです。特に最近は。だから前例のなかったこういう長いインタビューもやっているんです。私なりに私のファンの方たちと親しくなるためにかなりの努力をしているところです。ですが、こうして正直にインタビューをしても、歪曲されてあれこれいろんなことを言われることもまたわかっています。もしくは私の言葉が長いので、短く要約されて広まって歪曲されることもあるでしょう。でもやらなければ、やらなかったからこそ誤解が生まれもするので、「どうせいずれは言われることなら正直に話してみよう!」と方向を決めたんです。普通、会社の役員や代表に対する偏見を持っていたりもするじゃないですか。ご存知だと思いますが、むやみに世代や職業、職責でグルーピングして人を裁くのは意味がありません。人・バイ・人(*ケースバイケース、人によって)でしょう。

私がアートディレクター出身なので、マネジメントや音楽を心配する意見もよく聞きます。もう多様なハイブリッド制作が一般的だと思われている時代ですよ。説明するのが恥ずかしいくらいに、時代を逆行する偏見だと思います。私がこれまで明かしていなかったからなんでしょうか。私はこれまでアートディレクターにだけ限定して仕事をしてきたとは思っていません。その時その時で私ができるところまでビジュアルの領域を超えて、多様な試みをやってきました。以前の会社でも絶えず楽曲選定と方向性に対する意見を出してきました。音盤名を変えたりもしたし、私が意見を提示して他に例を見なかった投票までに至り、変わったタイトル曲もあったんです。"10 Corso Como"*と協業制作したコンピレーションアルバム*も私の企画でした。多様なDJたちとコラボしたプロジェクトだったんですが、それももう2013年のことですね。明らかにしている仕事以外で成し遂げた経歴は、外部には知ることができないとは思いますが、もうすでに、音盤と無関係な経営陣やマネージャー出身制作者が音盤を制作してきた前例の歴史が長いじゃないですか。これまでのものが変形されて紛らわしいってことなんでしょうか。2022年なのに、差別的偏見が存在することに今更ながら驚きます。

*10 Corso Como(ディエチコルソコモ):イタリア・ミラノで始まったマルチショップ。アート、ファッション、音楽、デザイン、食といった「五感を満足させるスローショッピング」がコンセプトのセレブ御用達のショップ。

*コンピレーションアルバム:ベストアルバムをはじめとした、特定のテーマや雰囲気、意図に沿って編集されたアルバム・音盤。

10 Corso Como Seoul Melody

(チャウジン)社会の至る所で暗黙的に偏見が存在します。だからなのか、より音楽が気になりますね。

大部分の方がコンテンツとデザインに期待していらっしゃることと思います。私がレーベルをローンチして全権の保障を受けようとした理由は、制作の全ての分野が相互に連結されて、全てが重要な役割をするからです。音楽をはじめとした多様な分野で、新しい提案をしてみたかったんです。気分の良い事実は、メンバーたちが私たちの音楽を相当に気に入っているという点です。ブラインドで聞いた時に出た反応です。その後、私たちの曲であることを明かした時、みんなが歓喜しました。私たちADORチーム員たちも同様にです。もちろん私たちが好きだからと言って万人が好きだという保証はないのですが。大衆的人気は表に出す前までは誰もわかりません。だから、ある意味「もっとやりたいことをやらなくては」と思うんです。やってみる前までは誰もわからないものですから。以前にも、私は音楽が気に入らなかったら仕事が少ししんどい方でした。だから、自分たちが満足する音楽で仕事をするということは、それだけで喜びになるので、みんなの制作の満足度において重要な要素になります。特に画を作る人たちは誰よりも音楽、サウンドに敏感で影響を受けるしかないですから。なので、以前にも良い曲が持つ特有の雰囲気を強調したくて、音楽のためのティザーやトレーラー映像を作った場合もありました。例えば、シャイニーの《Odd – View》トレーラーシリーズがそうです。良い画は良い音楽に出会った時、鑑賞が遥かに大きくなります。音楽が一番重要だという意味よりかは、いろんな領域が相互に調和するとき、鑑賞の快感が最大化されることができるということです。だから、多少遠く感じていた事業の領域までも重要になるということなんです。

SHINee_[Odd] Comeback Trailer © SM Ent.

(チャウジン)急にヒジンさんが進められていたブランディングPTが思い出されますね。ヒジンさんは既存の仕事を異なるやり方で紐解くノウハウがあるように見えます。あれは会社説明会でしたが、新しい試みとして感じられました。

2021年に発表された "HYBE: New Brand Presentation" の最初の企画案を作成して発表進行シナリオを構成した時、以前にはなかったフォーマットだったので、完成された成果物として出るまで、周辺のことまでいろんな心配がありました。完成された制作物として見る前までは、とにかく企画者たちの頭の中にだけある画でしかなかったので、他の人が完璧に理解するには限界があるということも理解できます。今は自らこういう説得の過程を当然のように受け入れているようでもあって。慣れてきたみたいです。(笑)私たちのチームのキムイェミンディレクター、シンドンフンバイスプレジデント(*VT、副社長クラスのポジション)とPT発表当日まで徹夜で準備しました。発表会の後、一番快感を感じた瞬間は、会社外部の人たちから「私はなぜ他の会社の説明会を楽しく見ているんだろう?」という反応を聞いた時でした。普通、会社説明会ってつまらないじゃないですか。期待していない状況を通して、満足感をプレゼントしたという事実が一番意味のあるものでした。ですがやっぱり辛くても既存の偏見を破れば、新しい可能性が生まれて、それによって生じる喜びがもう一度仕事をさせる動力になったんです。私は基本的に人を楽しませて、驚かせたい欲求がある人間のようです。私たちのADORガールズグループを通してそれをまた実現してみたいですね。

HYBE: New Brand Presentation

(キムジェフン)インタビューを進行しつつ、ヒジンさんがチームメンバーたちをとても信頼されているのが伝わります。職場の同僚と個人的な連絡を交わすくらいに親密になることは珍しいと思うのですが、ヒジンさんは他人とどうやって友達になるんでしょうか?ヒジンさんが考える友情というのが何なのか気になります。

言及されたついでに、同僚たちについてお話ししたいです。キムイェミンディレクターはなにせ表に出るのを好まない性格なので、私がこうしてインタビューしたことを知ったら、絶対に "ものすごく" 私に難癖つけると思うんですが。(笑)以前の会社で新人社員として入社して、長く私と仕事をしてたんですよ。世間や仕事を見渡す価値観が似てるんです。イェミンさんは私と相当に長い間重要な仕事を一緒にやってきました。エクソの ‘Pathcode’ プロジェクトでも寄与した部分がかなりあって、外部にはあまり知られていませんが、私が私を含め、イェミンさんまででたった3人でTFを切り盛りして進行した仕事でした。‘Pathcode’ プロジェクトもf(x)のArt film制作と似たケースだったんです。当時の状況上、私が戦略的に必要だと判断されて主体的に進めた仕事でした。外部にはプロジェクトにかなり多くの人が動員されたものと思われたりもしていました。業務に投入される人力の数と結果物のクオリティーの相関関係は必ずしも比例するとは限りません。与えられた時間内で正確な理解力と相当な集中力が必要でしょう。このこと以外でも私と一緒にいろんな仕事を共にして、悩みと苦難の時間を共に絶えてくれた、誠実で才能に溢れたディレクターです。いろんな難関を一緒に乗り越えてきたので、自然に友情が生まれるしかなかったみたいです。

一緒にやったミュージックビデオの監督や、他のスタッフの中でもこうして友達になるケースが多いです。私が引きこもりなほうでもあるので、比較的社交的な性格ではなく、とにかく仕事に集中して生きてきた時間が長かったので、そうなるしかなかったとも思います。シンドンフンVP(副社長)は、"人間・道徳の教科書" みたいな方なんです。(笑)私が心の疲労でつらかった時、まるでかかりつけの精神科医のような助言で助けになってくださりました。一人一人ありがたい我らがADORメンバーたちと同じように、痛みを分け合ってくれる知人たちがいてくれたので、今まで堪えることができたんだと思います。今文を読んでいる私の知人の中で「もしかして私も?」と思っていらっしゃる方たちは、みんな該当してますよ。(笑)この場をお借りして、本当に心から感謝の言葉を伝えたいです。苦難が好きな人はいません。ですが、その困難を一緒に乗り越える瞬間、関係の進展という価値ある贈り物が与えられます。多分未来には、私たちADORガールズグループメンバーたちとの幼い友情を交わすことができるでしょう。

(パクサナ)ヒジンさんの家に訪問した時、ずっと聞こえてきた〈The Girl from Ipanema〉を最近よく聞いています。単純に考えると、普段よく聴く音楽はKPOPとは距離が遠いように見えます。好みと今の仕事との距離感について気になってきましたね。

主流市場に私のような人間も一人くらいいなくては、業界に面白みがないでしょうから。考えの違う人がたくさんいないと、業界がぐずついて変化しないでしょう。うちのマンネのメンバーも私が聴いている古くて見慣れない曲を好きになったじゃないですか。「こういうスタイルがウケるんだ」、「こういうのが正解だ」と主張する人を見ると、個人的にちょっともどかしいです。本当にそういう公式があるならば、一部ではなくみんなが成功するでしょう。今の仕事を楽しくするために、知らず知らずのうちに自然に好みが投影されてるんだと思います。私が聴いて良くて、好きなものを紹介してみたいです。大衆文化をつくる観点から、その接点に対していつも悩んでいるんです。世間には良い音楽が溢れてるじゃないですか。そして、その良さが必ずしも一つのスタイルとして帰結されるわけではないと思っています。だから、そういう多様性を紹介したいとも思います。そういう面で、私が音楽プロデューサー出身ではないので、むしろ固定化したスタイルから脱してもっと多様な音楽スタイルを取捨選択できる可能性が大きいと見ることもできるでしょう?良いものは時間が経っても変わらずに良いんですよ。なのでADORの音楽総括プロデューサーは、私がものすごく認めていて信頼している方として選びました。一緒に一生懸命制作中です。私は意外に傷つきやすいのですが、好奇心が強くて無謀な面があります。だから他の人がやらないからこそ、私がやってみようとしています。"良いもの" を提案するために努力していきます。

© «W Korea» | Taemin_[ace] © SM Ent.

(パクサナ)インスタグラムのコメントを見ると、ヒジンさんの家に対する皆さんの関心が高いみたいですね。生活と仕事が共存する家という空間に対するヒジンさんの考えが気になります。

意識できていなかったのですが、住んでみると私の生活方式がそもそも少し一般的ではなかったことを今になって自覚しました。(4次元病*が嫌いなので、そういうタイプでは絶対にありません!)会社に対するやり方もそうだし、仕事に対するやり方もそうで、人との接し方もそうです。同様に家との接し方もそう見たいです。投資的観点というよりは、私が楽しい家を作りたかったんです。どうせ全部作り直すだろうという考えだったので、初めから高い家を選ぶ理由がないでしょう。そして家を約1年あまりの間、空っぽの状態からゆっくり作っていきました。そういえばこの家でもう12年も過ごしてますね。私の友人たちはもちろん、私のチームメンバーたちも私の家に遊びに来たり、ここで仕事をしたりするのが好きなんです。私もそれが本当に楽しくて。私の家に驚いていらっしゃる方たちが共通してする話があるんですが…あ、《ビーアティチュード》の方たちもそうですよね?この家に来ると時間と空間を超越した感じだと。だからみんな明け方まで騒いで行かれるんですよ。
ははは。違う話になるんですが、ハイブの新社屋設計も同様に留まりたくなる空間に焦点を合わせました。優しいふりでしている話ではなく、心から私たちの構成員がみんな会社で幸せでいることを願う心で進行しました。慌ただしくて忙しかったのですが、いつの間にか1年が過ぎましたね。

*4次元病:いわゆる「不思議ちゃん」のような変わった人。天然発言や突飛な行動をする人の意。

(キムジェフン)コンテンツを作る立場で、ヒジンさんは "良いもの" に対する眼識が高くないはずがない、と思うのですが、幼少期と青少年期に初めて出会った "良いもの" について覚えていらっしゃいますか?音楽や本、あるいはどんな経験でも構いません。

私が、好きな音楽をおすすめするのが本当に好きなんです。ははは。音楽を本当に愛しています。音楽というのは場の雰囲気や気分を支配するじゃないですか。過去のある瞬間が思い出されたりもして。良い音楽を共有して、恋に落ちることがよくあるのがそういう理由だからじゃないですかね?私が幼いときは今と全然違う環境だったので、音楽を探して聴くdigging(*ディグる、掘る、音楽を探し出すこと)も能力のうちでした。私は本当に早熟な方で、幼い時は本、音楽、映画に完璧にハマって過ごしていました。相対的にマンガはあんまり見てなかったと思います。でも『ラフ』や『スラムダンク』のようなヒット作は楽しんで見ました。(笑)とにかく私はジャンルに限定して音楽を聞くというよりは、ただ私が好きな "ある雰囲気" があるんです。幼いときはラジオを聴いて気に入った曲が出てくれば素早く録音ボタンを押して、作った音楽テープが家にたくさんあります。小学生の時だったか中学校の時だったかよく覚えてないのですが、ラジオでアントニオ・カルロス・ジョビンAntônio Carlos Jobimの〈Desafinado〉を初めて聴いて、横になって涙をダバダバと流した記憶をまだ鮮明に覚えています。まるで全ての楽器が分離されたように、それぞれの和音とリズムが聴こえるんですが、それ同士で作り出されたものすごい調和が絶妙に幻想的に感じました。〈The Girl from Ipanema〉はまるで私の主題歌(?)のような曲なんですよ。(笑)とにかく私が好きな何曲かを、嬉しい気持ちでおすすめします。ですが、「ADORガールズグループの歌はこういうのだ!」と推測や誤解はしないでくださいね。私はそんな単純に伏線を張る人間ではありません。はは。もちろん好みがある程度反映されてはいますが、これは私の好みなだけで、ビジネスとはまた違う話ですから。(笑)

Tracklist from Min Hee-jin © BE MOV

Tracklist from Min Hee-jin↗

Metti una sera a cena by Florinda Bolkan, 1969
惑星 by Pizzicato Five, 1988
Under Control by The internet, 2015
Meaning of you by Yang Soo-kyung, 1990
Margery, My First Car by VULFPECK, 2016
Only Trust Your Heart by Stan Getz, Joao Gilberto, Astrud Gilberto, 1964
Underwater Boy by Virna Lindt, 1983
The Blue Rose by Francis Lai, 1975
Monet by Beenzino, 2021
Mirage by Toro y Moi, 2017
Betty by Ed Lincoln, 1970s
Homage by Mild High Club, 2016
Chompy’s Paradise by BADBADNOTGOOD, 2016

(チョンジョンヒョン)ヒジンさんはビジネス的に、多くの人が消費する作品が、制作者にも成果物の成功を判断する基準になると考えていらっしゃいますか?

個人ごとに成功を判断する物差しが違うじゃないですか。それに従って評価が変わってくると思います。自己満足が優先とは言いますが、共感のない作品はやもすれば個人の満足だけで転落する可能性が高いので気をつけなければなりません。作品の密度や完成度とは無関係に、人気や名声でヒットに繋がるケースもまた虚像につながるので、結局成功のものさしは自己検閲になるしかないと思います。自分で自分を省みようとすれば、苦しくなるしかないと思います。忍耐のない果実はないって言うじゃないですか。歳をとると大人たちの言葉には全部意味があったんだなって。結局この世界には簡単に楽になれて、満足いく通りにだけなる道はないと思っています。私だけでも、外から見たら有名性や年収のせいでうらやましさの視線があるかもしれないですが、ずっとお話ししている通り、すごくつらい時間を過ごしてきたんです。私が苦しみの中で発見した一つの楽しい光は、 "みんなのものさしが違うから、ある意味無意味になるかもしれない" 成功というものにこだわるというよりかは、自己満足と自己内省の間で自ら幸せを作っていく解法を探しにいくことが重要だという事実でした。孤独でつらいですが、自分だけの解法とやり方を悩みながら見つけたとき、"ネクストステップnext step" が見えてくるんです。その "次" のステップというのも結局みんなに該当するわけではなく、自分だけのためのステップなんです。ただ人生がそんな気がします。絶えず自分だけの次のステップを探しにいく過程です。

(チョンジョンヒョン)毎日会社で夜を明けることが日常だと、喜びも痛みも常に共存する日々を過ごしてきたことでしょう。そして、まだ同じ業界に残っていらっしゃいます。自分だけの哲学がなければそもそも不可能な仕事だと思っています。ヒジンさんが一番重視する "仕事の哲学" は何でしょうか?ここまで仕事ができる原動力が気になります。

私の友達、同僚たちによく言う言葉があります。「あぁ、私はなんでこんなに必死に仕事してるんだろう?」(笑)自問自答もよくするんですが、実は私は自分の人生に大きく望むものがないみたいなんです。ちょっとカゲロウのように生きている感じもしますね。遠い未来に何かを成し遂げなければ、もしくはこういう人にならなければ、というのが特にないんです。ただ短期目標を達成することが最優先です。その目標を達成したらどうせ主位の条件に合わせて変わってくるので、自然にまた新しい目標ができるんです。期待感として進むというか。願いではなく、想像をしてみます。「わぁ、これを達成したら、そのときはどんな風に変化しているんだろう?」と。好奇心が動力みたいですね。だからたまに、人生という一種のパフォーマンスアートをしているような気分になったりもします。私の人生を材料として、やってみたいテストをしている感じ?仕事は、すごく好きだからやるというよりは、ある意味その手段として役割を果たすものだと思っています。どうせ仕事をしなかったら人生はつまらないし退屈になるでしょうから。その過程で発生するしかなかった意外性を面白さとして感じてるみたいです。

それとは別に、責任感はただ生まれ持った気性のようなものです。この二つが絶妙に噛み合って、私をよく知らない人たちは仕事を愛するワーカホリックとして私を見ていると思うんですが、実は私は、自分がする仕事そのものをすごいことだと思ったりとか、ものすごく愛しているとか、プライドに溢れているとか、そうなってるわけではないんです。当然に、長い時間をかけて一生懸命やってきた仕事だとこれまで話してきたように、私の仕事にロイヤリティがあるだけです。おかしな表現に聞こえるかもしれませんが、自分の仕事に対する義理があるってことです。そして、責任感は仕事で得るようになったものではなくて、生まれ持った気性なので、職業倫理にまで自然と伴ってくるものなんです。この二つは生まれつきで形成された概念だと思っています。なので、形態的には似たように現れるものかもしれませんが、仕事をすごく愛することとはまた少し違った概念でしょう。とにかくポジションの重みが変化していくことと同時に、以前のテストが今は実践試験になった気分です。だから緊張したりもします。何卒、皆様を楽しませることをはじめとして、私の人生、そして関連する全ての人たちの楽しい人生のために、今回の試験で私が無事に合格することを切に願ってみます。


Artist
ミンヒジンはSMエンターテインメントのクリエイティブディレクターとして活躍し、少女時代、シャイニー、f(x)、EXO、Red Velvet、NCTなど所属アイドルの実験的なコンテンツを主導した。2019年ハイブのCBO(最高ブランド責任者)として合流しハイブブランディングと新社屋空間デザインを総括した。2021年下半期からハイブが新規ローンチしたレーベルであるADOR(All Doors One Room)の代表を担い、現在最初の新人ガールズグループデビューを準備中だ。2022年アメリカのエンターテインメントメディア《バライエティ》で "グローバルエンターテインメント業界で影響を与えた女性" として選定された。

Editor
チョンジョンヒョンは、国民大学校で視覚デザイン学を勉強している韓国文化観光研究員RAとして社会生活を開始した。《月刊デザイン》《SPACE 空間》《ノブレス》でエディターとして仕事をし、デザインマガジン《CA》と《ハフポストコリア》で様々なコラムを書いた。住居建築を扱う《ブリック》副編集長、編集委員、クリエイティブディレクターを執り行った。現在デザイン・建築ジャーナリストとして《朝鮮日報》《ジエディット》《LUXURY》などに文を寄稿している。《ビーアティチュード》の編集長でもある。

Contributing Editor
チャウジンは大衆文化評論家として、見、聴き、読み、書いてきた人物だ。ファンダムとコンテンツ/音楽産業、クリエイター生態系を扱う。ニュースレターTMI.FMを通してメディアとコンテンツ産業に対するコラムを書いており、様々なメディアで音楽とライブスタイルに対する文を寄稿している。『インディペンダントウォーカー』 『音楽産業、状況が変わった』 『青春のサウンド』 『大衆音楽の理解』 『アイドル:H.O.T.から少女時代まで』などの本を書き韓国コンテンツ振興院から発刊する音楽産業白書およびフォーラムなどに企画諮問を担当している。ネイバーオンステージ、韓国大衆音楽賞、現代カードミュージックライブラリーなどのコンテンツを企画・制作した。

Photographer
ソンシヨンは、ソウルを基盤に活動するフォトグラファーである。アメリカ・ニューヨークのスクールオブビジュアルアート(SVA)で写真を専攻していた。様々な音盤のカバー制作に参与し、ドイツの《Zeit Magazin》、アメリカの《W》、韓国の《マガジンB》などと協業した。

元記事はこちら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?