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EML が考えるプラント設備保全

こんにちは、EMLの相原です。

弊社はプラントの設備保全DXに関するサービスを提供している会社です。 創業者2名はプラントのEPC(設計・調達・工事)、並びにO&M(運転、保守)の出身で、自身も実体験として持つプラント業務の困りごとを解決すべく、デジタルアプリやDX実証プログラム、業務変革支援といったサービスを開発・展開しています。

初回は、「EMLが考えるプラント設備保全」についてお話します。


プラントとは

「プラント」の種類は多岐に渡ります。石油精製、石油化学、化学(中間品、最終品)、医薬品、飲料、塗料、金属精錬などの生産施設に加え、発電、上下水、廃棄物処理といった施設も該当します。また、半導体や自動車などの工場に付随するユーティリティ設備も一種のプラントと言えます。

プラントは、実に多様な設備から構成されています。塔(反応釜)・槽・熱交換器といった静止機器、ポンプ・圧縮機などの回転機、配管、タンク、制御弁・遮断弁・安全弁、計装機器、遮断器・変圧器といった電気機器など、非常に多くの種類があります。

またプラントの特徴として、「一品一様」があります。プラントはオーダーメイドで設計・建設されるもので、全ての設備構成が等しい二つ以上のプラントは存在しません。プラント増設やバックアッププラントのケースにおいても、設備構成こそ類似するものの、設置場所や運転条件、気温や風雨といった外部環境からの影響の受け方などの違いにより、各プラントは唯一無二の状態を持つ存在になっていきます。一つとして同じものは無く、一つ一つのプラントが独自の特徴(クセ)を持つ、まるで「生命体」のような存在です。

 

それらのプラント全てに共通することは、その安全・安心な運営は「人の手による設備保全」に支えられているということです。設備保全は原則として、点検と補修・工事のサイクルで行われます。

プラントの点検とは

多くのプラントでは、可燃性物質や高圧ガス・蒸気、あるいは毒物・劇物を製造したり貯蔵したりしています。これらの物質の扱い方法を誤ると、放出や漏洩を引き起こし、爆発や火災、人体や環境への悪影響といった甚大な事故へと繋がる可能性があります。

多くの設備で構成された、一品一様のプラントを安全かつ安定的に稼働させるためは、設備の点検が非常に重要になります。プラントの状態は決して、設計情報を起点に一意に求められるものではありません。状態変化への変数が多く、どのように老朽化していくか、どのようなリスクを包含していくか、の全てを確実に予想・予測することは出来ません。そこで、定期的な点検を実施することで、事象を早期に発見し、何が起こっているのか、今後何が起こる可能性があるのか、を出来るだけ具体的に推測することが不可欠となります。設備ごとに求められる点検項目・注意事項は様々ですので、その管理工数は量・種類共に膨大になります。

 

点検は非常に重要ですので、いくつかの法律でも実施義務が課されています。例えば、消防法、高圧ガス保安法、労働安全衛生法のボイラー及び圧力容器安全規則では、プラントの形態(位置、構造、設備、内容物など)に応じて、法定検査や定期自主点検について規定しています。

プラントの補修・工事とは

点検の結果、振動や異音、錆びや塗装剥がれ、漏れや異臭などの異常が確認された場合は、大事に至る前に補修や工事を行います。特に異常が顕在化していなくても、法定または自社/サプライヤ基準に則り補修・工事を行う場合もあります。補修・工事の内容は、その後のプラントの安全運転・安定稼働において非常に重要な情報となりますので、設備ごとにきちんと記録を残し、過去の履歴がいつでも分かる様に整理しておく必要があります。消防法や高圧ガス保安法における官庁申請においては、これらの記録を添付することがあります。

「人の手」による設備保全

点検や補修・工事では、過去の知見や人間の五感を存分に活用する必要がありますので、多くの作業は「現場」で「人の手」により進められます。プラント現場には高所、狭隘部、(事務所からの)遠隔地、腐食が進んだ設備に挟まれた空間などが多く存在し、また、稼働中の大型機器の近傍では騒音や振動下での作業となり、場合によっては過酷な作業環境での業務を余儀なくされるケースも少なくありません。

また、点検や補修・工事を外注する際には、作業仕様書を添付した見積書を作成します。一品一様な設備に対する一品一様な業務依頼となりますので、過去の類似業務の仕様書・見積もり情報などを参考に、都度、作成することがほとんどです。情報収集や分析、整理には非常に手間がかかりますので、「外注準備作業が大きな作業負荷となっている」との声も多く聞かれます。

 

上述の通り、プラントの設備保全は原理的に、多種多様な膨大な作業を人の手で行うものです。そのため、リスク評価と併せて生産性向上を図り、設備のクリティカル度に応じてBDM/PM*1方針を設定したり、測定・解析の自動化を導入したりといった取り組みが進められてきました。また、業務が属人化しがちであるため、知見や技能の正しい承継に向けて、組織としての形式知化に関する多くの取り組みが進められてきた業界でもあります。昨今のデジタルを含む新技術の多くは、これらの取り組みをより促進・加速するものとして期待されています。

*1 BDM(Breakdown Maintenance):事後保全、PM(Preventive Maintenance):予防保全

プラント設備保全でのEMLの取り組み

プラント設備保全とは「設備と人の協働」であり、今後の社会の維持・発展に向けて、そのノウハウは大事に承継され、進化させなければならないと考えています。

弊社はプラント設備保全業務について、科学・工学であり、コミュニケーションや集団知が問われる社会学であり、また五感を最大限に活用する一種の芸術でもあると考えています。冒頭でご紹介したDX関連のサービスに加えて、産学連携での研究にも注力しています。

本コラムでは引き続き、プラント設備保全を取り巻く社会課題や、解決の一手として注目されるデジタルの潮流についてご紹介する予定です。ご期待ください。