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【CEOインタビュー】新発想のクラウドシステム誕生の背景とは。EMLの創業と目指す未来

2022年9月の創業からまもなく2年が経とうとしている株式会社設備保全総合研究所(以下EML)。アセットマネジメントの視点でプラント・工場を支えるという新発想の設備保全統合管理クラウド『EMLink』を武器に成長を続けるEMLは、どのように誕生したのか。CEOの相原章吾に、これまでのEMLの歩みと今後の展望について話を聞いた。

「製造業を黒子として支えたい」事業開発に魅力を感じ起業を決意

――相原CEOは元プラントエンジニアだそうですね。EMLを創業される前のご経歴をお聞かせください。

相原 大学で物理を専攻していたことから技術職に興味を持ち、化学系プラントの設計・建設を行っている千代田化工建設に新卒で入社したのが私のキャリアのはじまりです。プラントエンジニアという職業を選んだのは、プロジェクトで物事を進めることが好きな自分にフィットしていると考えたからです。環境・エネルギー事業に携われるということや海外で働けることも、その企業を選んだ大きな理由でした。

しかし海外でエンジニアとして働く中で、「ものづくりは技術力があればうまくいくわけではない」と痛感しました。特にアメリカで携わったあるプロジェクトの影響は大きなものでした。そのプロジェクトで赤字を抑えるため奔走した経験から、「市場・業界構造の見極めや顧客との付き合い方、付加価値の出し方などは技術力だけではカバーできない」と強く実感したのです。その経験から「技術力は高くてもうまく戦い切れずに困っている企業の役に立ちたい」と考えるようになり、帰国後に製造業向けコンサルティング会社に転職しました。

――「業界に貢献したい」という思いを強く感じるエピソードですね。

相原 そうですね。私は製造業をとても尊敬しています。ものを作るということは非常に高尚なことであり、製造業は社会安定や経済繁栄の要だと考えているのです。製造業の中でも特に設備保全や設備の投資計画を立てる部署は、非常に目立ちにくい存在でありながらも明確に製造業を支えています。そんな製造業を支えている方々を黒子として支えていく存在になりたいと考えています

――コンサルタントという立場から製造業を支えることもできたと思いますが、なぜ起業しようと決意されたのですか?

相原 きっかけはその後、ドローン系のスタートアップ企業に転職したことでした。技術を基に様々な事業を開発して展開していくという経験の中で、サービスを作り、集客し、顧客に満足してもらうことのおもしろさを知りました。「自分が注力すべきことはこれなのではないか」と思い、製造業に携わる事業での起業を決意しました。

半年で製品化を実現。盟友と共に切り拓いた創業の道

EMLinkリリース直後に行なった展示会。

――EMLやEMLinkの構想に至った経緯をお聞かせください。

相原 EMLとEMLinkの構想に至ったきっかけは、起業を決意したタイミングでたまたま共同創業者の上野(COO)と飲んだことでした。上野はコンサル時代の同僚だったのですが、私同様に化学系の製造業出身者であったことから、飲みの席では自然と製造業の現場の話で盛り上がりました。

当時の苦労話をしている中でふと、「これはまだ製造業の現場でみんなが困っている問題なのではないか」と気付いたのです。そこで現場へのヒアリングや市場調査をしてみたところ、我々が新卒で現場に入ってから10年近くが経ってなお、状況があまり変わっていないことが分かりました。「これは今後も製造業が直面し続ける構造的な課題なのではないか」と考え、「この課題を解決する事業を起こそう」と上野と2人で決意したのがEMLのはじまりです

――業界の課題に対し、使命感を抱かれたのですね。

相原 そうですね。2人共プラント出身かつコンサル出身であることから業界知識や課題感への理解があり、事業設計の方法や市場の見方も学んできていました。それに加え私はスタートアップで事業開発を、上野はプラント業界向けの技術サービス業を経験したということもあり、「2人が経験してきたことをきちんと整理して業界の課題感を特定すれば、この問題を解決できるのではないか」と感じました。この2人だからこそ機動的にEML創業に踏み切れたと思います。おそらくどちらか1人だけであれば、創業は随分遅れていたでしょう。

「設備保全総合研究所(Equipment Maintenance Laboratory)」という名前にも、「奥深い設備保全を技術的要素・人的要素の両面でしっかりと科学し、成果を社会や産業全体に還元したい」という我々の使命感からくる思いが込められています。

――お2人とも業界知識があったとはいえ、起業は未経験。ご苦労も多かったのではないですか?

相原 そうですね。EMLinkはデジタルシステムですから、作るには当然プログラミング知識が必要です。2人ともプログラマーではありませんから、プロトタイプを作る段階では本当に苦労しました。本やオンラインスクールで一からプログラミングを学び、3ヶ月かけてなんとか作り上げたのは、非常に簡易的なプロトタイプのEMLinkでした。それを手に資金調達に奔走したところ、弊社のビジョンに共感してくださった投資家から資金提供を受けることができ、プロのITエンジニアの手による開発がスタートしました。起業前に想像していたよりも苦しい日々でしたが、上野と互いに鼓舞しあってきた結果、起業から半年ほどでβ版をリリースすることができました。

――知識ゼロから簡易的とはいえ3ヶ月でプロトタイプを作るとは、すごいスピード感ですね。

相原 きっと我々と似た考えを持つ人が多くいると思っていました。出遅れれば厳しい戦いになりますし、お客様への価値訴求や丁寧なサービス提供が難しくなります。そのためアセットマネジメントの思想やセキュリティ面にはこだわりつつ、スピード感も重視して製品化を進めました。

しかし、スピード感を重視して作ったことによる弊害もありました。実は現在のEMLinkは、β版完成後に作り直されたものなのです。β版のままでも問題なく運用はできたのですが、「このままで今後世の中に信頼性がある産業インフラとして広げていけるのか」という疑問が生じてしまったのです。苦渋の決断でしたが、β版を運用しながら半年ほどかけて現在の仕様へと作り直しました。愛着のあるものを壊すことは辛い経験でしたが、その判断をしてよかったと思っています。

元エンジニアだからできる現場理解度の高い製品づくり

EMLinkのダッシュボード画面。プラント・工場の保全業務を一元可視化して管理できるようになっている。

――EMLinkの大きな特徴を教えてください。

相原 一番はアセットマネジメントの思想を軸に作られている製品だということです。EMLinkは単なる業務管理ツールやペーパーレスツールではなく、「製造業における設備管理の最適化や、設備に対する投資意思決定を支援するツール」という位置づけで作っています。新機能を開発する際にも、常に「この機能で設備管理や投資の意思決定が最適化されるのか」という観点で優先順位を付けて開発を進めています。

――EMLinkの強みはどのような点だとお考えですか?

相原 一番の強みは開発力だと思います。EMLでは現場エンジニア出身者を中心に構成されるビジネスチームと、ITエンジニアで構成される開発チームが緻密に連携して開発を行っています。EMLの開発サイクルは、ビジネスチームが顧客から持ち帰った精度の高いヒアリング結果を開発チームと精査し、制作したプロトタイプを顧客からのフィードバックを受けて改修していくという流れです。このサイクルにより、顧客の悩みや要望に深く寄り添った製品ができるのです。

これは開発チームの技術力が非常に高いだけでなく、ビジネスチームの特徴も大きく関係しています。我々のビジネスチームの強みは、精度の高いヒアリングにより顧客の悩みや要望を解像度高く理解できることです。「製造部と保全部でこのような書類のやりとりをしているようですが、こんな問題が起きやすくないですか?」と顧客の状況から具体的な問題点を予測したり、「その問題ならこんな機能があれば改善しませんか?」と顧客の悩みの根本を理解した提案を行ったりと、顧客とのヒアリングでは非常に深い悩みや要望にまで踏み込んだディスカッションを行っています。これは我々が顧客と同じ問題に直面してきた元現場エンジニアであるからこそ実現可能なことだと思っています

EMLinkで広がるアセットマネジメント。目指すは産業のプラットフォーム

――正式リリース(2023年4月)から1年ほど経ちましたが、EMLinkに手応えは感じていますか?

相原 まだまだ成長段階ではありますが、お客様から喜びの声をいただくことが多く、手応えを強く感じています。EMLinkのようなシステムはデータがたまらなければうまく機能しないものなので、使いこなしていくためには導入いただいたお客様側の努力が必要になる場面もあります。しかしどの企業の方々も、EMLinkを社内普及させるための努力を惜しまず取り組んでくださっています。そういったお姿を拝見すると、EMLinkという製品にとても期待を寄せてくださっているのだと手応えを感じます。

――今後の目標やビジョンをお聞かせください。

相原 EMLでは「社会・産業インフラを黒子として支える」をミッションに掲げ、社会・産業繁栄の要である製造業を支える設備保全に携わる方々を支えていきたいと考えています。そのために大きく3つのビジョンを描いています。1つめはEMLinkを多くの工場に導入していただき、工場のアセットマネジメントを実現していただくことです。そのため来年には顧客を170〜200社ほどにまで増やせるよう、顧客基盤の拡大に力を入れています。

2つめは工場単位ではなく会社全体でのアセットマネジメントを実現することです。工場はデータが極端にサイロ化しやすい傾向にあるため、全ての工場を同じシステムで管理しようと思うとコスト面や運用の手間で断念してしまう企業も少なくありません。そんな課題を解決するため、複数工場のデータを横串で連携できる新機能の開発を進めています。この新機能でより多くの企業にアセットマネジメントを実現し、会社全体での生産活動を最大化していただきたいと考えています。

3つめはEMLinkを利用した化学業界の産業プラットフォームを構築することです。工場経営にはその企業だけでなく、検査・補修・工事や設備・備品購入、資金提供など様々な外部の企業が関わってきます。アセットマネジメントを実現できれば、そうした外部との上手な連携も可能になると考えています。今後EMLinkを化学業界の産業プラットフォームとして発展させ、産業全体で人・物・お金を効果的に融通し、産業全体を活性化させるような存在にしていきたいです。

――最後に、3年目に向けた抱負をお聞かせください。

相原 まずは顧客基盤の拡大という課題にむけて、しっかりとお客様に向き合い、より多くのお客様に価値をアピールしていけるよう活動していきたいです。開発面の目標としては、今よりさらに効率的にデータを収集できる仕組みや、蓄積したデータを基に将来を予測するような機能の開発を進めています。3年目に向けて、この2点には強く取り組んでいきたいですね。

プラント・工場の課題解決ならEMLinkにおまかせ

設備の急な故障や発注漏れなど、予期せぬトラブルに見舞われることも多いプラント・工場運営。EMLinkはそんな予期せぬトラブルを予防し、迅速に対応するために開発された設備管理システム(アセットマネジメントシステム)です。プラント・工場運営に関する多種多様なデータを蓄積・一元管理してリンクさせることでトラブルを未然に防ぎ、業務を効率化。「紙やExcelによる煩雑な管理から脱却したい」「社員同士の情報共有を簡易化したい」「無駄な業務やコストを削減したい」など、プラント・工場が抱える様々な課題を解決に導きます。

プラント・工場を知り尽くした元プラントエンジニアが手掛けるEMLinkなら、現場ごとに異なる課題に寄り添い、その現場に最適な管理システムをご提案します。安心の無料トライアルも可能。まずはお気軽に資料ダウンロードフォームよりお問い合わせください。