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デザインスクールで学んだ起業家の思考法(エフェクチュエーション原著より)

起業家や新規事業のプロと話をしていると、思考が速すぎてついていけない、話が飛んでるような気がして、理解できないと感じたことはないでしょうか?

”エフェクチュエーション”と呼ばれる起業家の思考について、原著論文 "What makes entrepreneurs entrepreneurial?" (何が起業家を起業家たらしめているのか)の概要を紹介します。

この論文をロンドンビジネススクール出身の教授に教えていただいた時、これだー!!とずっとモヤモヤしていた起業家の思考法がクリアに説明されていて、感動したことを覚えています。

この論文では、著名な起業家の思考を分析し、マネジメント思考(管理職的発想)、戦略思考(コンサル的発想)と対比して説明しています。

次の図で、上から順番にマネジメントの思考、戦略的思考、起業家思考の順に説明しています。

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マネジメント思考は、与えられたゴールを達成するため、すでにある手段の中から最適なものを選択し、実行します。たとえば、プロジェクトのなかで、ある問題が発生したときに、社内のリソースを上手く組み合わせ、管理し、実行することによって、課題解決していく、これがマネジメント思考と説明されています。

戦略思考は、与えられたゴールを達成するため、すでにある手段に追加して新しい手段を組み合わせ、課題を解決します。クライアントから与えられた事業課題に対して、クライアントが考えもしなかった方法(手段)によって課題が解決されるような場面が想像できます。これは創造的な問題解決とも呼ばれています。

この2つの思考方法は似ているところがあり、それは、大枠の課題自体(ゴール)が、既に与えられているという点です。そして、ロジック(論理)を積み上げることによってその課題を解決します。また、プロジェクトを通して、課題を解決した先にある"未来"が予測できる環境下で威力を発揮すると説明されています。

一方、起業家思考は、課題(ゴール)がない状態で出発します。むしろ、成し遂げたい未来を課題(ゴール)として想像し、その未来を信じて、今持っているリソースを組み合わせて、実現していくよう実行していきます。常に実現したい世界に対して、今持っているリソース(お金、技術、人脈etc)を使って、今すぐに何ができるのかを考えて発想します。

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何気ない違いのように感じますが、思考の出発点として、明確に課題を定義して出発するのか、あるいは、不確かな未来に対して、実現すると信じているゴールから出発するのでは、思考回路が全く違ってきます。その違いを、事業がターゲットする顧客を絞り込むまでのプロセスを例に説明しています。

マネジメント思考・戦略思考は、マーケットの定義から始まり、分析に基づくセグメントの絞り込み、自社製品・サービスのポジショニングを決めます。一方、起業家思考は分析(ロジック)を重視しません。なぜなら、課題が定義されていないからです。今すぐに取り組むことができる市場を定義し、組むことができるパートナーを想起し、ささりそうな顧客を定義し、すぐに実行に移し、試行錯誤を繰り返していきます。

事業環境の変化が速くなっている今、より、成功しやすいのはエフェクチュエーションといわれる考え方だと説明されています。

抽象的な考え方の話ですが、この論文を読んだ上で、起業家の方とミーティングしたり、ディスカションしたりしていくと、より理解が深まると思いました。留学時代は、本論文を教えてくださった先生自身が起業家で、新しい事業コンセプトを一緒に議論しながら練っていくなかで、思考方法を盗んでくれ、という授業がありました。

もっと詳しく知りたいと思った方は、英語の原文(フリーでダウンロードできます)のリンクを貼っておきますので、読んでみてください。

Photo at Aalto University Otaniemi Campus, Espoo, Finland

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