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セックスレスの裏にひそむ性機能障害

1年間に45回。

これ、なんの数字かというと、2005年におこなわれた世界的調査で判明した、日本人夫婦の平均セックス回数なんですって。
(ちなみに世界平均は103回)

45÷12は、3.75。ということは日本人夫婦はだいたい一か月に3~4回のセックス頻度が平均ってことですね。

これを多いと感じるか少ないと感じるかは人によるんですが、世界の人たちは月に8.5回してることを考えると、日本人は世界平均の半分以下しかセックスしてないってことがわかります。

この背景には、国民性やジェンダーの問題など、いろいろな要素があるのだとは思うのですが、もしかしたらそのひとつに性機能障害という側面があるのかもしれません。

性機能障害とは、人間の身体に備わっている生殖機能がうまくはたらいていない状態のこと。男女ともに、器質的な原因と、機能的な原因があります。

器質的なものに対しては、手術が適応となる場合もあります。しかし機能的なものであれば、カウンセリングや薬物治療、あるいは鍼灸治療などで血流を良くすることで改善する可能性が高いのです。

人に相談しづらい性のお悩み。夫婦や恋人、パートナーであるはずの相手にすら、実情を言いにくかったり、むしろパートナーだからこそ、傷つけたくなくて、黙ってしまうこともありますが、性機能のことで思い当たるお悩みがあれば、まずは泌尿器科か婦人科へ受診。そして、鍼灸治療も選択肢の一つに入れてみてくださいね。


女性の性機能障害

女性の性機能障害は、問題としてあまり表面化はしていないこともありますが、内容を見るとけっこうたくさんの人が当てはまるのではないかと思います。

女性の性機能障害:

①性的関心/興奮障害
②オルガズム障害
③性器・骨盤痛/挿入障害
④物質/薬剤誘発性機能障害
⑤特定の理由による性機能障害、例えば、性嫌悪による性機能障害
⑥特定の理由のない性機能障害

ざっくりいうと、性的なことへの関心が薄れてしまい、その結果、性的興奮が起こりにくくなってしまうこと・絶頂に達することができないこと・性行為中に痛みを感じてしまい、挿入が困難になること……などですね。

わたしは、臨床で産後の女性と接することが多いのですが、産後は性欲が落ちる女性が多いです。2人目も欲しいとは考えているけれど、セックス自体を愉しみながら子作りしている人は少なくて、周期に合わせて義務的にしている人が多いなと感じています。

性欲の低下、性的な刺激への嫌悪感、こういったことも性機能障害にあたるんですね。

で、女性の性機能障害は実は、自分だけに原因があるというよりも、パートナーの影響を受けている、という傾向が強いようです。なので、女性だけで悩まないで、必ず相手といっしょに問題解決に取り組んでくださいね。

女性が男性とセックスするためには、相手に「ときめき(性的な情熱)」と、「相手への親しみの情(共感や尊敬などの好意)」の2つがそろわないとむずかしい場合が多いです。

セックスレスの夫婦などは、後者の親しみはあっても、前者のときめきが低下していることにより性的な欲求がうまれていない可能性もありますね。
(先日も、結婚してからもちゃんと相手をときめかせろ!みたいな記事を書きました)

こうした女性の性機能障害の治療方法は、いくつかあります。

①性教育を学ぶ
性に対して正しい知識をつけることで、自分も相手も、前戯や体位などを改善できる余地があります。

②病気の治療を優先する
婦人科や泌尿器の病気があると、性交時の満足度が低下するといわれています。これらの病気がある場合は、まずそちらの治療を優先することで、徐々に性の満足度も改善するかもしれません。

③カウンセリング
なぜセックスに苦痛を感じているのか、など、性機能障害の原因を対話によって探り出す方法です。多くはカップル両方で取り組みます。

④薬を使う
テストステロンやエストロゲンなどのホルモン補充、バイアグラなどのPDE5阻害薬、漢方薬などの有効性が報告されています。

⑤骨盤底筋トレーニング
骨盤底筋を上手に意識すると、周囲をゆるめることができるので、無駄な痛みを感じにくく、かつ快感を感じやすくすることもできます。

⑥潤滑剤を使う
病院で手に入るものもいろいろあるようです。ただ、けっこう合う合わないがあるようなので(使ってもやはり痛みが出るとか)、いろんな種類を試しつつ、やはりカウンセリングや相手との話し合い・工夫を主体においたうえで補助的に使うのがよさそうです。


男性の性機能障害

男性の場合は、性機能について女性よりも調査がすすんでいます。それだけ悩みも顕在化しやすいのかもしれません。

男性の性機能:

①性欲があること
②陰茎が勃起すること
③膣内挿入と射精が可能であること
④オーガズムがじゅうぶんにあること

①性欲をあまり感じなくなってきている人は、男性ホルモンが低下している可能性があります。疲れている、心理的ストレス、過去の嫌な体験、うつ病などの病気による事情で性欲は減退します。取り除ける要因があるなら、なるべく排除してみましょう。

筋トレすると男性ホルモンが出るので、性欲は維持されやすいです。男女ともに、下半身を鍛えるトレーニングは日常的にしておきたいですよね。東洋医学的にみても、下半身の筋肉を鍛えている人は思考がまとまりやすくなるんです。頭(上)を使うなら、足(下)のバランスをとっておきたい、みたいなイメージですね。

②の勃起障害については、経験がある男性も多いと思います。
Erectile Dysfunctionの頭文字をとってEDと呼ばれています。
まったくできない、時々できない、中折れする、硬さが不充分である、などの軽度な症状のものも含めると、1130万人もの男性が当てはまるようですよ。

ここも、心因性のものが大きく関わっているので、できればパートナーといっしょに受診したり、なるべくストレスやプレッシャーを感じにくい生活を送るのが大事ですね。女性の方も、相手がEDだと、話題にするのも悪いのかも……って遠慮してしまいがちですが、本人も悩んでいるならなおさら、ふたりで解決に取り組んだ方がいいと思います。

③の射精障害では、膣内射精障害が最も多いお悩みのようです。膣内射精障害とは、オナニーだと射精できるのに、女性に挿入すると射精できなくなってしまうこと。原因のほとんどは、間違ったオナニーのやり方をしているせい。これらがあると、不妊症の原因にもなるので、妊娠希望のご夫婦は早めに改善したいところ。最近では、TENGAを使った治療法が推奨されています。

そのほかには、早漏・遅漏などがあります。これは射精のタイミングを自分でコントロールできない状態のことですね。どちらにしても、相手女性の性機能障害につながりやすく、性行為の満足度にも関わってくる問題です。


大切なのは、本人の幸せと相手の幸せ

セックスしなくても死にはしません。
だけど、セックスするしないは別としても、自分の性機能がちゃんと保たれているかどうかって、本人にとっては大事な問題なんです。

自分の性を肯定し、楽しく、幸せに生きること。
これがどんな人にも必要なことです。

性の問題は、非常にセンシティブだし、人を選ぶ話題であることは間違いありません。だからこそ、悩みは顕在化しにくく、「まぁいいか……」って心の奥底に閉じ込められがちなのです。

人によっては、「いい年して、まだセックスしたいの?」って言われることで恥ずかしくて、性欲があることそのものを隠したり、よくないことだと感じたりする人もいます。

でも、性欲は生きる活力そのものです。
別に種の保存にはまったく関係なくたって、性的興奮を感じたり、性的快楽を得ることはだれにでも与えられている権利。小さいこどもだって、若い人だって、高齢になったって、楽しみは多い方がいいですよね。

ないなら別にいいや、という位置づけに追いやられやすい性欲・性機能ですが、少しでも悩んでいることがあれば、適切な医療機関を受診してみてください。

わたしたち鍼灸師も、患者さんの性の問題でお力になれることはたくさんあります。毎日をたのしく生きるために、性欲・性機能についてのご相談も気軽にしてみてくださいね。赤ちゃんがほしい!って妊活中の方も、どうせなら楽しく気持ちよく取り組みたいですもん。

来月は、男性の不妊症をメインに治療しておられる鍼灸師の先生と、セミナーも開催します。ちなみに男性の性機能を向上させると、妊娠率も上がります。この事実、すべての赤ちゃんを望むご夫婦に知ってほしいな^^


いただいたサポートは、子どもたちのために遣わせていただきます😊いつもありがとうございます!