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編プロの編集者が1冊の絵本を出版するまで

こんにちは。わたくし、渋谷にある編集プロダクションで編集や翻訳の仕事をしている、みしまと申します。突然ですが、このたび、はじめて翻訳絵本の出版を目指すことになりました!

このnoteでは、はじめてだらけの編集者とその仲間たちが1冊の絵本を世に出すまでの道のりを綴っていきたいと思います。

「はじめてっていっても、編集プロダクションってそもそも本を作っている会社じゃないの?」

そう思われるかもしれません。でも、いわゆる「出版社」と私たち「編集プロダクション」のお仕事って、結構違うんです。

出版社のお仕事は、いわずもがな、本を作るお仕事です。何もないまっさらの状態から、企画を立てて、書店に並ぶまで一連の工程に携わります。一方、編プロは出版社から制作実務を請け負います。著者が執筆した原稿を編集、校正し、組版(注1)をする。本づくりの「制作」の工程を担当しているのです(注2)。

ふだん私たち編プロが本づくりにおいて関わっているのは「制作」工程。出版社を介してお預かりした原稿を編集、校正、組版したら、出版社に納品します。そのため、それ以降はどんなステップを踏んで書店に並び、皆さんの手にわたるのか、あまりよく知らないのです。

今回、「絵本を出版しよう!」となった時、翻訳したい本は決まっていました(心奪われる絵本に出会ってしまったからです。これについてはまた別の機会に書きたいと思います)。でも、その本を翻訳して、書店に並べてもらい、皆さんの手に届けるためには、どんなことをしなければならないんだろう。まずは、そこを考えるところからのスタートでした。

1冊の本を翻訳して世に出すまで

調べていくうちに、1冊の本が書店に並ぶには、結構たくさんのステップが必要ということがわかってきました。大きく分けて5個の関門をくぐり抜けなければなりません。

①海外の絵本を日本で出版する権利を取得する

今回出版したいと思っているのは海外で出版されている本の翻訳本です。本の著作権は著者にありますし、販売する権利は、著者が契約している海外の出版社が持っています。したがって、私たちが日本で出版するには、出版する権利「版権」を取得しなければなりません。

絵本を出している海外の出版社に連絡すればいいのかな?交渉はどうすれば…?

②日本語に翻訳する

当社には、英語→日本語の翻訳を得意とするスタッフはたくさんいます(私も英日翻訳者の1人です)が、今回出版したい絵本は、英語で書かれたものではありません。よって、その言語が得意な人に翻訳をしてもらわなければなりません。

でも、一度も出版したことのない会社からの依頼を引き受けてくれる方はいるのだろうか…。引き受けてくれる人がいなかったらどうしよう。

③編集、組版をする

翻訳してもらった文章を吟味し、推敲を重ね、文章を練り上げます。その文章を紙面に配置し、実際に印刷される紙面を作り上げます。

うん、ここは得意分野。できそうな気がする!

④紙に印刷して、製本する

絵本の中身ができたら、紙に印刷をして製本します。世の中には数え切れないほどの種類の紙があります。厚さ、手触り、光沢など、さまざまです。また、製本の種類もたくさん。絵本は、表紙の硬いハードカバーがほとんどという認識はありましたが、それぐらいの知識です。加えて、文庫本や単行本と違い、形や大きさ(判型)もまちまちです。

三浦しをんさんの『舟を編む』で、主人公のマジメさんが、辞書に使う紙の「ぬめり感」について熱く語っていたシーンを思い出しました。私たちにそんな感覚、わかるのかな…。どういう基準で紙を選べばいいのだろう…??

⑤全国の書店に本を置いてもらう

作った本は、どうやったら書店に置いてもらえるのでしょう。この絵本プロジェクトには、専任の営業スタッフがいるわけではありません。

全国にある多数の書店を1軒1軒訪問して置いてもらう?いやー、ぜったいに無理!

結局、この5つの工程のうち、私たちが唯一自信を持てる工程は③番だけ!なんとも先行き不安です。

このnoteでは、これらの課題をクリアし、無事に出版するまでの過程を綴っていこうと思います。果たして無事、出版できるんでしょうか?ぜひ応援してください!

注1:組版とは、原稿の文章を紙面に配置し、実際に印刷される紙面を作る作業のことです。

注2:私が勤務する会社における一般的な作業範囲で、会社によって異なりますし、うちの会社でもケースバイケースで変わることもあります。

(つづく)

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