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きっとアナタをまた騙す。

私が男だったら、きっとろくな人生を歩けなかった。女に刺されるか、気がつけば独りぼっちで死んでゆく。そんなところ。

でもラッキーなことに、私は女に生まれた。それも、そこそこのルックスで。そして、それは自分でもわかってる。

笑っていることさえ忘れなければ、チヤホヤされる。それが居心地がいいんだから仕方ない。恋人だった男たちは、みんな私とヨリを戻したがる。

今でも好きだよ。もう一度付き合いたいって。

そんな元恋人たちの中でも、あなたは特別な人だった。誰よりも長く一緒にいたけれど、誰よりも迷惑をかけた。たぶん、嘘をついた回数も数えきれない・・・。

そして、その嘘のほとんどをあなたは知っていた。

だから、そんな言葉が返ってくるとは思ってもいなかった。何回も裏切って、数えきれないほど傷つけたっていうのに。

「いいよ、それで」

「いいの?ホントに? きっと辛いよ」

「お前、ワガママじゃん。そうしたいって顔に書いてある」

私はわがままだと自分で思っていない。あなたと一緒にいることで、回りからそう見られていただけ。

なんでも言うことを聞いてくれた、いつも私のことを最優先に考えてくれた。その優しさと思いやりに甘えていただけ。なのに、それがわがままに見えるんだって。

だけど、私はあなたのことを遠ざけた。新しい恋人の元に行くために。そして、あなたはすべてを知ったうえで、私をまた甘やかす。

「お前さ、なんでまだオレを必要だと思うワケ?」

「だって、ずっと一緒にいたから、いなくなるなんて想像できない」

「だけど彼氏でも恋人でもないんだろ? そして友達でさえない」

「そうだね、もう恋人じゃない。だけど、そばにいて助けてほしい。ううん、違うな。見守ってて欲しい。なにかあったら、助けてくれる人でいて欲しい」

「そんなわがままな人っている?」

「いないよね。じゃあ、やっぱりダメかな?」

「オレがお前の頼みを断ったこと、一度でもある?」

「ない」

そうして、私はこの元彼氏を生活の中から消さなかった。消さなかったから、私は色んなことを考えるようになった。

今までの恋人の多くは、私ともう一度付き合いたいって言ってきた。だけど、過去になってしまった人とヨリを戻すことなんてしない。別れるには別れるだけの理由があるんだから。

でも、私が甘えている元彼氏は、戻ってきてほしいなんてひと言も言ったことがない。私のすべてを知っているからなんだろう。

それなら何で、私のわがままに付き合うの? さっさと別れて新しい恋人でも作ったほうが何倍も幸せなんだから。本当にそう思う。そう思いながら、私はそのことを口に出すことはない。

言葉にしてしまったら、本当に元彼氏はいなくなってしまうような気がしたから。

ホント、私って悪い女だ。誰か陰で言っているに違いない「そんなゴミみたいな女なんているの?」って。

だけど、冷静になって分析してみると、私ってこの先、何かに怯えながら生きていくような気がしている。

長くいた元彼氏を捨て、今の彼氏に乗り換えた。今の彼氏のことは本当に大好きだけど、いつかまた同じことを繰り返すんじゃないかって。

そうしたら、私が持っている「この人と一緒にいたい」っていう、何よりも大切にしたい想いも、また消えてしまう時が来るのかも。

そして元彼氏は私に言う。

「お前は人に飽きっぽいからな。そして、自分の気持ちが最優先。でもそれって、一人になった時にキツイだろ?」

「そんなことない! 今の彼氏とはずっと仲良くやっていく」

「じゃあ、今の俺ってなに?」

答えることができなかった。そんな私に彼は静かにこう言った。

「お前の一番いやな部分を俺は許したんだよ」

その言葉を聞いた瞬間、また同じことを考える。

私って最悪だ。こんなに想ってくれる人を切り捨て、そして自分が一番に想っている人のところに飛び込んでいくことさえしない。

でも、居心地のいいところから抜け出せない。自分から苦しい選択をするなんてこともしない。

心のどこかで、悪いなって思っているけど、すべてを素直にさらけ出すことなんてこれからもない。何かを犠牲にするとしたら、それはきっと相手の気持ち。

好きだけど、頼りにしてるけど、必要だけど、それでも私は嘘をつく。

だってあなたは特別な人だから。



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