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文学空間 01

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いくつかの短篇といくつかの詩。
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#短篇

ノクティルカ

 ぼさぼさの髪を背中の半ばくらいまで垂らし、Tシャツやらトレーナーやらを何枚となく重ね着…

ヴァルツバルトの星まつり

 隧道の中は、いつものように薄暗く、ひんやりしていた。向うがわから差し込む光は、闇を截然…

暗殺者のアリア

 かつて足繁く通いつめていた界隈に、久しぶりに行った。ずっと気にかかってはいたが、いざ出…

天使の羽音

 もともと彼女は、女優というより霊媒ないしは巫女に近く、役柄を演じるというよりは自らの肉…

楽園の耳

 外見だけをいうならば、彼はさながら蜘蛛だった。もちろん、そんなことはどうでもいい。なん…

王女と王子、そして道化

 悪臭ただようぼろぼろのドレスをまとってはいても王女はやはり王女であり、垢と無精ひげにま…

ルイーズの店(2020ヴァージョン)

 セカイが滅びてしまったので、食料品を手に入れるにはルイーズの店に行くしかない。ほかに選択の余地はない。ルイーズの店は輸入缶詰の専門店で、まだけっこう備蓄があるのだ。  ルイーズの店は女の子がひとりでやっている。ほんとうの店名はべつにあり、ファサードに気取った横文字で書かれてもいるけど、セカイが滅びた今となってはそんなこともうどうでもいいだろう。呼びたいように呼ばせてくれ。  ルイーズってのはぼくがつけた綽名だ。これだって、別にほんとうの名前があるはずだけど、残念ながらぼくは