本紹介<20>読書感想文「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」
「夏に読めば良かった」と思ってしまいました。コロナの影響で国内ですら気軽に旅行できない情勢の中、10度の小雨が降る寒い東京で、この本を読んだことを後悔しました。なぜなら、夏休みの開放的雰囲気の中で行く旅行の醍醐味を痛烈に思い出してしまったからです。旅行に行きたい、としみじみ思ってしまいました。
今日は「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」をご紹介します。
1.本の概要/人見知り×シニカル×少しの感傷
人気お笑い芸人のオードリー若林正恭さんがキューバ、モンゴル、アイスランドの旅の様子を紹介する紀行文です。本好きで有名な若林さんらしい、ボキャブラリーが豊富で小説のような語り口に、お笑い芸人さんらしい笑いやシニカルな要素がたっぷり詰まっています。かと思うと、ホロっとさせるような感傷的な場面も出てきて、いい本に出会ったという感想です。
2.旅の醍醐味/緊張と冒険と。熱気。
旅には普段とは違う環境や言葉が十分に伝わらず緊張したりすることもあります。でもそんな中で勇気を出して、冒険や挑戦してみたくなるというのが、旅の醍醐味だと私は思います。
若林さんの人見知りと冒険が入り混じったお話に私はとても親近感が湧きました。
出掛けたい場所があることって、人を幸せにするんだな。セントラル公園の前の人通りがまばらになった。サンダルの音を響かせながらホテルの部屋に戻り、ベットに入る。
「明日も、まだ行ったことがない所に行ける」
キューバの熱気と若林さんの高揚感を最高に感じるには、季節は夏であり、旅先で読めば良かった、と思いました。その位、“熱さ“が文字を通して伝わってくるのも、この本の魅力だと思います。
3.旅/生きてるって実感したい
逆に、親父が近くにいる(ような気がする)ことに戸惑っていた。
亡くなって遠くに行ってしまうのかと思っていたが、不思議なことにこの世界に親父が充満しているのだ。
現にぼくはこの旅の間ずっと親父と会話をしていた。いや親父が旅立ってからずっとだ。
若林さんの一人旅先がどうしてキューバだったのか、は本の途中で語られます。大変失礼ながら、「お笑い芸人さんらしい、明るく気軽な旅エッセイ」だと思って読んでいた私は、お父さんとの事が語られる部分に不意打ちを喰らい、涙を堪えながら読み入ってしまいました。
全ての理由が分かってから、改めてまた最初から読み直したくなる作品です。
昨日の「さざなみのよる」に続き、図らずとも最愛の人の死を扱う作品のご紹介となりました。人が人を大切に想う優しい気持ちを扱った作品は、悲しさや儚さだけでなく、心に温かさが残るものだと感じた作品でした。
人間は欲張りな生き物だ。安定と安全を求めるくせに、それに飽きると不安定と危険が恋しくなる。死にたくないけど生きてるって実感したい。
こんな寒い日ではなく夏に、東京ではなく旅先で、モヒートを飲みながら、また読もう!と思った本です。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました!
Emi
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