見出し画像

叱るって役に立つ?

Twitterで意外と

  • 怒る、叱ると学習が阻害されるよ

  • 不適切行動への対応は無視決め込んでるよ

という話が盛り上がったので、その辺について書きます。

ちなみに1〜4歳くらいまでを想定しています。
言語理解が早い子はまた対応が異なると思うので、あしからず。

叱っても子供が不適切行動をとる理由

詳しくはこの本を読んでみてください。
トドラー以降の睡眠にも簡単に触れられているしサラっと読める良書なのでぜひ。

子供のことを叱れば叱るほど、不適切な行動を繰り返されて、あげく自分もカッとなっちゃって結局自己嫌悪…みたいなことありませんか?
実はこれ、子供が頑固だからとか、親が堪え性がないとかそういう問題じゃなくて、ただの脳内神経伝達物質の働きなんです

皆様ドーパミンって聞いたことございません?

ドーパミンは、面白いことや新しい情報が入ってくると分泌され、直前にとった行動を強化する働きがあります。これは学習にとっても役に立ちます。新しい情報が入ってきたらドーパミンがでて、その行動を続けたり繰り返したりするように仕向けるんですね。例えば子供がテレビを見始めたら、ドーパミンがでて、見続けるように仕向けられるので、子供はなかなかテレビから離れられません。

これと同じで、子供が不適切な行動をとったとき、親がイレギュラーな行動(新しい情報、過剰な注意を引く行動ですね)をとると、ドーパミンがでて、また親の反応を見たいがために同じ不適切行動(もしくはエスカレートした行動)をとります。

ここで注意して欲しいのは、子供は「親を挑発しているわけではない」ということなんです。シンプルに本来は学習行動促進のためのドーパミンが、でてほしくない場面ででちゃってるだけなんです。

しかもなお困ったことに、なんとこのドーパミン、実は我々保護者の脳内でも叱るときにドバドバでてます。

怒っている時、保護者は?

子供が何度も同じ不適切行動を繰り返す時、実は保護者も口では「やめなさい」と言っていても、脳内では「やるぞ…またやるぞ…ほらやった!」と過剰な反応や期待をしています。つまりドーパミンがでてます。これにより、直前の行動である「叱る」をエスカレートさせます。
そしてまた子供は不適切行動を繰り返す…という負のスパイラル…

でもいかがですか?脳内ではこんなことが起こってるんだ〜ってわかると、あっまじで叱るの無意味⭐︎ってわかるし、子供もイヤガラセしてるわけじゃないし、私もイライラするの仕方ないんだなって思えて気が楽になりません?

怒った時、子供が恐怖を感じるようになるとどうなるか

先ほどは「怒られて面白がる場合」についての仕組みをお伝えしました。
では子供の理解がすすんで「怖い」「怒るのをやめてほしい」と思うようになったらどうなるのでしょう?

こちらの本ではより詳細に叱られるとき、叱るときに人の脳内で起こっていることが書かれています。

怖い!そのときの脳の防御システム

これは子供に限らずの話。人間が怖いとか不安とかのネガティブな感情を経験した時、脳で起こること。

  1. 扁桃体:脳の中でもかなり原初から存在し、生存に深く関わる部位。不安や恐怖が「予測される」ことに反応して、身体に「身体をすくめろ」などの信号を送る

  2. 島皮質:不安や恐怖、苦痛「そのもの」に反応する。物理的な痛みはもちろん、社会的な痛み(疎外感や孤独感など)にも反応する。

こうした扁桃体を中心とした脳の回路を「防御システム」であるとする説がある。
ルドゥー博士によると「危険を察知して、危険な状況を脱して生き延びる確率を、最も有利な方法を用いて、最大にするような反応を引き起こす」[*]ためのもの。

ここで理解すべきことは、この防御システムが働くと人間は「逃げるか、戦うか」の2択を瞬時に判断する体制に入ってしまう、ということ。戦闘準備にしろ逃走準備にしろ、体に命令することは変わりません。つまり、鼓動を早める、発汗させる、瞳孔を開く、などです。なんか聞き覚えありません?そう、緊張してるときと同じです!
で、想像してほしいんですが、緊張してるときって学習に適していると思いますか?
適してないですよね。これは脳科学的にもすでに知られていて、この防御システムが働いている時、学習に必要不可欠な前頭前野の活動が大きく低下します。
つまり、まじで怒ったり叱ったりして相手になんらかのストレスやネガティブな感情を与えることって、無意味なんです。というか学習に有害です。

[*]下の本です

「叱る」とき実は親は快楽をえている

これ、そんなことない!って思いますよね。でも実は「叱る」ことってすごく脳にとっての報酬になっちゃうんです…こわい…我々の脳で何が起こっているか見てみましょう。

報酬系って聞いたことございます?
報酬ってついてますが金銭的なことではなくてもよく、脳にとって「ご褒美」になることはなんでも報酬になります。例えば有名な話だと、男性が美人を見た時に見たこと自体が報酬となるので、美人にお返ししたい衝動にかられる、というのがあります。こういうのを「報酬系が働く」と言います。

小学生のとき、やたら偉ぶって「〇〇はやっちゃいけないんだよぉおおお」とかいうタイプの人いませんでした?いや確かにそういうルールだけどお前言い方wみたいな。実はこういう「社会の秩序を守るための指摘や叱る、処罰するなどの行為」というのはそれ自体が社会的報酬になってしまうんです。これを処罰感情の充足、といいます。

叱るのが快楽になる理由、まだあります。
実は叱ることによって子供を一時的にでも従わせることができると、自己効力感を持ててしまうんです…自分が叱ったり怒ったりすることで子供をコントロールできてしまう闇…

しかも、「叱る」「怒る」ってもうその時点で対等な人間関係ほぼ崩れてしまってるんです。上司や友人に叱ったり怒ったりするのって、よっぽど何かあったとき(騙されてるとか、危険なことしてるとか)だけですよね?つまり自分の立場が子供より優位だと思っているからこそなせる技なんです…悲しくないですか?

というわけで、処罰感情の充足と自己効力感により、短期的な結果(報酬系が働いてしまう+ワンチャン子供が言うこと聞く)が長期的な効果(怒らずに叱らずに学習された行動規範)を上回ってしまうんですね。
だから人類は叱るのをやめられない…でも…頭の中で起きていることを考えると、叱るのは意味なさそうです。

個人的な結論

つらつらと書いてきた背景から、私がだした結論は「子供には大切な友人に接するようにしよう」でした。そもそも大切な友人にできないことを、子供だからという理由だけでやってるのやべーな、と。
私はかなり自分の母親のことを母親として尊敬してる(今の理論から見てもかなり適切な対応をとっていた)んですが、母は特に育児書とか読んでないんですよね…
母に秘訣を聞いたところ「1人の人間として対等に扱うように気をつけた」らしいので、結局これにつきるのかもなぁ…なんて思ったり。

じゃあどうすればいいの?

皆さんから今にも叱らずにどーすればええねん!というお声が聞こえてきそうです。基本的に私は危険でない限り娘の不適切な行動は完全にスルーしてました。ただこの辺は時と場合によってかなり対応変わるので、また別記事で書こうと思います。

追記

書きました!


サポートありがとう!サポートしていただいたお金は湯水の如く娘のお洋服へと消えていくでしょう…