民主主義を通じた資本の力の等身大化

マルクス批判から一転して資本主義を見てみる。

資本の力が強くなり過ぎている、という感覚は持っており、それはマルクス的な資本蓄積理論もさることながら、個人的には資本による他資本の支配というところに起因しているのではないかと感じている。会計的には他社株は資本の部に計上され、労働を迂回して配当だけが利益として計上される。これについては、労働がそのシェアを求めることができるか、と言えば、理論的には営業利益を対象に交渉となると、営業外利益となる出資先会社からの利益を労働側が得るのは難しい。マルクス的には、一旦蓄積された資本が、労働を迂回して再投資され、出資先会社によって労働側のシェアが切り下げられた上で戻ってくることで、資本分配率を上げる効果を持つのだと言えそう。子会社、関係会社であれば、その会社に頻繁に出かけ、業務の手助けをすることもあるだろうが、その分についてはいわばタダ働き、ということになるのかもしれない。

この、マクロ的労働分配率を下げるあり方をどうするのか、ということで、やはり、法人による出資ということで、口だけ出して労働せずに、あるいはタダ働きさせて、利益を確保するという仕組みは不味いのだろうと感じる。法人による他法人の資本支配は禁止した上で、関係は人的交流契約のようなもので、複数所属になろうが、それぞれの法人から労働した分だけ労働側が分配を受けられるような仕組みにならないとおかしい。資本側は、取引関係を安定させたかったら、長期取引契約のようなもので契約を安定させ、その上で人的交流契約によって取締役の中にシェアを確保することで経営に参与し、その契約を明示的に裏付けする、という対応が必要になるだろう。

これは、外資の誘致といった産業政策にも大きな影響を与える。資本による直接外資の誘致ができなくなり、長期契約と人的交流の推進を行う必要が出てきて、契約関係、つまり所管の裁判所であるとか、労働側の要求次第ではコンサルティングに対して実際の商品のある意味でのノルマ的なものなどを課して実需契約を結ぶ制度の整備、つまり事実上コンサルティングは販売代理店契約のようにしてゆくこと(もちろんコンサルティングにも様々な形式があるのでそれによってサービスの提供義務づけ、相互長期契約などの様々な形態はありうるだろうが)、そして人的交流の面から外国人労働者への対応ということを考える必要が出てくる。このあたり、マルクス主義的には、出資による”反動革命”と相対化させることで、外国人労働者による”革命の輸出”リスクを相対化する、という理論構築が可能なのかもしれない。

直接民主制とグローバル代表制民主制の併用の可能性


最適権力圏として直接民主制の範囲というものを設定したが、特にグローバルな範囲で能力が高く、それでは収まり切らない、という人は多くいるだろう。そういった人材をどう活かすか、ということで、株式会社、特に上場会社においては、持株に応じた代表制間接民主主義を導入して株主の中から立候補と互選によって役員を決めるというようにして、腕に覚えありの経営者が民主主義と競争の原則に基づいて、常に切磋琢磨する、という仕組みは考えられるかもしれない。持株会が過半数を握っていれば、労働者が経営者を選ぶ権利を確保できることになり、民主的な仕組みとしては比較的にうまく作用するのではないだろうか。

それは、連邦における代表者や事務職員の採用にも適用できるかもしれない。地域が直接民主制で動く時に、例えば外交をどうするのか、という問題が出てくる。地域の外交自体は、さすがに地域内の人材でなければ地域益を確保できないのではないかと感じるが、その地域の参加する連邦や条約機構については、その中の民主的に選ばれる代表者候補や事務職員の中に域外の人がいるということは、連邦や条約機構が強制力を持ってのしかかってくるのではなければ、その視野を広げるという点で十分に考慮の範囲に入ってくる。事務職員の採用に民主的な仕組みというのはなかなか難しいが、人事権を民主的に選ばれた委員会に所属させれば、ある程度の民主的人事制度は可能になるのではないだろうか。それは、既存の国連を中心としたグローバル人材ネットワークを大きく多様化することになり、条約機構が増えれば増えるだけその人材ネットワークが多様化するという利点を持ちそう。

このように、グローバル人材の交流やネットワークを民主的な枠組みの中に取り込むことで、資本による労働支配を和らげ、それによって資本の力を強めるという圧力を緩和してゆくことができるのではないだろうか。

資本の力はあまりに強くなり過ぎているので、これだけでそれを等身大の大きさに戻せるとは思えないが、不均等にその力を強めている要素を一つ一つ取り除いてゆく必要があるのではないだろうか。

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