金融緩和と実体経済

日銀が新たな?公開市場操作を導入したようだ。10年物国債を0.25%の利回りで無制限に買い取る「指し値オペ」という物らしい。この手法が新しい物なのかどうかは、日銀ウォッチをしていたわけではないので知らないが、いずれにしても小手先の手法をどれだけ変えたところで対して影響はないのだろうな、という気はする。

金融緩和が実体経済に効いていない理由はただ一つ、緩和が金融市場の中でとどまり、実体経済に届いていない、ということに尽きる。だから、そこをなんとかしない限り、どれだけ、どんな方法で金融緩和しようと、それは他の金融市場、典型的には日経新聞2月14日付夕刊の記事の最後に出ているように、為替市場に流れて、そこから円安を通じて輸入物価上昇につなげるという、非常に迂遠な、しかも単なるコストプッシュインフレにしかならないやり方でしか実体経済に影響しないということになってしまう。

金融緩和を直接実体経済に届けるためには、金融機関が金融市場でゲームをするのではなく、きちっとそれを実体経済に回すようにしなければならないのは理の当然。お金を実体経済に回すための金融緩和なのに、それを他の金融市場経由で、などということを考えていたら、いつまで経っても実体経済には届かず、その間に緩和の効果もどこかへいってしまう。だから、日銀も、金融機関、特に銀行も、その存在意義を保つのだったら、やるべきなのは金融市場での取引をしないこと、それに尽きるのではないか。もちろんグローバル金融機関がいきなりそのようなこともできないだろうから、例えば国際業務をしていない地銀や信金に対して金融市場での取引をしないことを条件に低利で融資し、破綻の保険も準備するなどして、実体経済で流れている貨幣の量自体を厚くしてゆくことを考えないと、金融政策は単なる金融市場政策にとどまり、実体経済からどんどん乖離してゆくことになるだろう。

物事をメカニズムで動かそうとするのならば、それがうまく動かない時に、メカニズムのどこに問題があるのか、ということを適切に把握して対応しないとうまく動くわけがない。それをせずにメカニズム通りに動かないのは現実がおかしいのだ、というような現実逃避の対応をしていればいつまで経っても現実とメカニズムが噛み合うはずがない。もっと言えば、社会はそもそもメカニズムではないのだから、それにメカニズム的な考えを持ち込むのならば、より適切にメカニズムのチューニングをする必要があるのだろう。市場を通じた金融操作がその適切なチューニングに当てはまるのか、今一度考える必要があるのではないだろうか。

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