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DXによる世論調査の可能性

令和3年(辛巳)12月10日の日経新聞31面経済教室Analysisで、「世論の的確な把握 大前提」という記事が出ていたので、それについて少し書いてみたい。

現在の世論調査の問題点

科学的で信憑(しんぴょう)性の高い世論調査とは、調査設計の段階からデータ分析に至るまで、方法論的な裏付けや透明性があり、再現性の高い調査だ。自然科学で要求される様な高い基準が、社会科学での調査でも要求される。

令和3年(辛巳)12月10日日経新聞31面経済教室Analysis

との問題提起。確かにその通りなのだろうが、そもそもが、調査という形で世論を集める、という形が適切なのか、ということがある。質問に対して答える、という形の調査であれば、最初から調査側の主観的恣意によって質問内容が定められ、それに沿ったリアクティブな形でしか回答は出てこない。そしてそのリアクションはエージェントによって大きく左右される。つまり、誰からの質問か、ということが回答に有意に影響する可能性が非常に高いのではないかと考えられる。それは、同じ様な質問内容でも新聞社やテレビ局によって出てくる数字が違うということからも明らかだろう。それを考えると、調査を行う時点ですでに自然科学的な観察とは違った主観の入り込む余地どころか、主観無くして成り立たないことになっているのだと言える。自然科学で非常に極端な例を挙げれば、事前に晴れるとか雨が降るとかの情報を入れ、洗濯物を干しますか、というデータを集めて選択指数を出す、といった、これ自体すでに自然科学的ではないと思うが、とにかくその様な自己フィードバック機能が働く様な調査が果たして再現性の高い調査になりうるのか、ということだ。自然科学的であろうとするのならば、ありのままの状態を観察して、そこからデータを得るなりなんなりして、そこから仮説を立て、それを証明する、ということが必要になるのではないだろうか。

こうした透明性が、世論調査では必須だ。調査手法なども含めた公開データを用い、分析や解釈の内容に反論できる環境を整える。そうしたオープンな多事争論こそが民主主義国の世論の中身を明らかにし、国民が望む政策対応を顕在化することにつながる。

令和3年(辛巳)12月10日日経新聞31面経済教室Analysis

まさにその通りであり、そのためにデジタルインフラをいかに構築するのか、ということが重要となるのだろう。政策のためのDXの肝はまさにこの辺りにあるといって良いのではないだろうか。

自然科学的世論調査の可能性

では、その様な世論調査を可能にするDXはいかにして可能なのだろうか。それは、なるべく自然な状態での有権者の意思を観察することが必要となるだろう。つまり、自然状態での政治的関心を顕在化させておき、それをそのまま観察できる様にならないか、ということだ。

そこで、マイナンバーでもなんでも良いが、データの匿名性を確保した上で、一人1セットの投票しかできないシステムを作り、そこにアプリオリの質問セット、結局よくある質問の内容ではあると思うが、内閣の支持・不支持、その理由、そして政策についてもなるべく具体的に同じ様に質問セットを常に準備しておき、それが毎日集計されてデータとして集積される様にする。投票する人は、別に全ての質問に答える必要もないし、そしてその回答内容を日々変えることもできる。それによって支持、不支持だけでなく、関心のあるなしも、エージェントを挟まないある程度客観的なデータとして日々明示化され、そしてそのデータは誰でも利用できることになる。

定量的なデータだけでなく、例えば、その調査内容についてのタグのapiを公開することで、調査内容に連動した定性的なデータがそれにリンクされ、そしてそのタグへのいいねなどを追うことで世論の広がりの様なものも観察対象になりうるのかもしれない。もっともそこまで個人情報リンクでやるわけにはいかないだろうから、そこから先は一人で複数の投稿やいいねがあるだろうという、定量的には信頼度の落ちる情報にはなるだろうが、確度の高い定量データとそれに関わる定性データを得られるという仕組みにはなりそう。

また、小選挙区制度では、非常に狭い範囲での有権者の意思しか国民の代表たるべき議員に反映されないという大きな問題があるので、それを補完するために、全ての議員に対する支持・不支持もアンケート内容に含むとよさそう。地元では評判が良くても、全国的には非常に悪い議員が国民の代表面することを防ぐことができ、議員に大局感を持つ様意識づけができる様になるのではないか。

一方で、これは政治をますますパフォーマンス化させるリスクを伴うので、私個人としては、やはり間接民主制はもはや限界に来ているのではないかと感じており、むしろDXでは直接民主的な政策運営がなされる様にするべきだと考えているが、それはまた別のテーマになりそうなので、世論調査についてはここまでとする。

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