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投資によって消費される環境? ー 環境国債・農業保険

9月21日付の日経新聞で、環境関連のニュースがふたつ気になったので記事にしておく。

環境国債

まずは1面の環境国債の話。環境を意識した資金が太るのは良いことなのだとは思うが、いくつか気になる。まずEUが10月に初めて起債ということで、新型コロナウイルスの復興基金の約3割を環境国債で調達し、気候変動対策などに充てる、というのは、新型コロナウイルスと関係するのかしないのかがよくわからない。普通に考えれば新型コロナウイルスはいわゆる環境対策ではないだろうし、実際気候変動対策に充てるということは使途はそちらなのだろう。そこでなぜ新型コロナウイルスの復興基金の約3割という表現は必要となるのか。実は新型コロナウイルス対策にはそれほど資金が必要では無くなったので、それを環境向けに振り替える、ということなのだろうか。そういう付け焼き刃的な資金の動きが本当にうまく機能するのか、非常に疑わしい。環境名目で使って返済されればなんでも良い、というお付き合い起債にしては、32兆円というのは非常に巨額。環境の名で新たなマネーロンダリングのようなものが行われているのではないかと気になって仕方がない。
環境国債は、資金の使い道を適切に管理したり、情報開示したり手間がかかる、ということだが、政府資金の流れなら、基本的に適切に管理され、情報開示されるものだろうに、いったいなんの手間がかかるということなのか。既存の資金の流れをいかに環境っぽく話を作るか、ということに手間がかかる、ということなのか。
IMFは今後10年で気候変動を和らげるのに最大10兆ドル必要で、公的財源では3割しか賄えない、というのは、国債である環境国債をいくら発行してもその3割の中に含まれるだけだ、ということを言っているのか、それとも結局返済が税からなされるにしても、市場から資金調達すれば公的財源には含まれないということなのか。
環境国債だ、と名づけるだけで金利が低く発行できるのならば、全部そうすればいいではないか、などと思ってしまうのだが、それって国債種別でやることなのか?予算配分の時点で議論しなければいけないことではないのか。
まあ、環境祭りの一環なのだろうが、1面に載せる記事としてはあまりにお粗末で、それ自体環境に悪影響しか及ぼさないのではないかと不安になる。
長期の国債で可能なのかどうかはわからないが、基本的に、このような特殊債券は、市場での取引はできないようにして、持ちきりにすべきではないかと思う。その方が、投資家の方の監視責任も明確になり、気候変動対策としては効果が上がるだろう。発行金利が安く発行され、バズワード的プレミアムで高く売り抜けて利鞘を稼ぐ、などということに使われるのだったら、そもそも環境資金という発行意図から反してしまう。そのような投機家のために環境という言葉が消費されるのは望ましいことではないだろう。そして同条件で発行金利が違うとなると、額が大きくなれば指標金利にも影響を及ぼすだろう。もっとも、ほとんどが環境関連の投信に組み込まれるのだろうから、売買不能となったら、ほとんど商品として成り立たなくなるのであろうが。そして、投信で一括管理されることで、個別の環境への取り組みは随分と希釈される。結局、環境国債という言葉だけがどんどん独り歩きするだけで、実際の取り組みはこれまでの支出内容に環境風味を加える、という大した実効力のない名ばかり環境国債となるのではないか。そんなことならば、10兆ドルあろうが、20兆ドルあろうが、いくらあっても大勢に影響はないのではないだろうか。

農業保険買収

もう一点。こちらはポジティブに。3面のSOMPOホールディングスがイタリアの農業保険大手を買収とのこと。農業保険は、近接地では気象条件が似通って気象リスクはヘッジしにくく、だから広範囲で行った方がリスクヘッジの可能性は上がるので、海外進出というのは一つの手ではないかと思う。その上で、農業保険のカバーしていない役割として豊作時の所得保障というのもあるのでは、ということがあり、農業保険のオプションとして、他地域で豊作のために値崩れが起きそうな農産物を代わりに消費する、というような仕組みができたら、他の地域の、予想していなかった作物が楽しめる、ということにはならないだろうか。廃棄処分にするよりも、原価と運賃でよそで食べて貰えば、新たな市場拡大の機会となるかもしれない。もっとも生産技術が安定した昨今では、豊作貧乏などということは起こりにくくなっているのかもしれないし、全部が輸送に適したものでもないだろうから、難しいことは多くあろうとは思う。ただ、比較的日持ちがして輸送がしやすい果樹なんかはまだまだ生産量を安定させる、というところまでは至っていないのではないだろうか。それを交換で食べられる、なんて仕組みができたら、消費者にとってもハッピーなのかもしれない。なんか保険とはあまりつながりそうもない話になってしまった。

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