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あのひといづくないんだべか?

テレビのニュース画面を見ながら、祖母が言う。
「あの人いづくないんだべか?」
テレビ画面には、世界陸上の競歩で力走する選手が写っていた。
確かに、あの走り方は少しいづそうな感じがする。
「いづい」とは、東北、特に宮城県の方言で「違和感がある」「しっくりこない」
時に使われる。「この新しい靴下なんかいづいわ。」「目がいづいから眼科に行く」そんな感じ。

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祖母と私は、祖父母の家でテレビを見ていた。

祖父が、地元の国立大学を卒業後に東京で就職が決まると、
祖母は「私も一緒に行く!」と言い、それなら!と結婚して上京してきた2人の家。

社会人になってからは、頻繁に会う事は少なくなったが、15歳で母が他界した後
数年を一緒に暮らした家だ。
最近、物忘れが多くなって、買い物にいってもお金の支払いが難しくなってきた。
と聞いたのは、つい最近だ。

一緒に住んでいた頃、いや、つい最近まで標準語で話していた祖母が、
会いに行ったら東北弁全開で話していた。

「なじょしてきた?」

「え!?」

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私も、子供の頃夏休みになると東北の親戚のもとを訪ねていたから、全然わからない訳じゃないけど、びっくりした。
そして、いつも綺麗に片付けられて、花が生けられていた家の様子もだいぶ違う。

片付けようとすると、「〇〇ちゃん、何してるの?私は、なんでも自分で出来るんだから、そんな事しないで。(意訳)」と母の名前で私を叱る。
お土産にデパートで買ってきた笹かまぼこを「白謙も昔のようじゃないね。」って
けなしながらも、嬉しそうに美味しそうに食べている。

その間に、祖父と連携してそっと片付ける。

母が存命なら、きっと眉間にしわを寄せながら、バリバリ片付けたろうけどな。
と、思ったら少し悲しく、少し可笑しくなった。


帰り際、祖母は「また、ござりん。」と優しい笑顔で見送ってくれた。



※「ござりん」とは「いらっしゃいね」と言う意味です。
 「白謙」の笹かまは今も昔も美味しいです。

#日記 #エッセイ #東北弁 #お国なまり #家族  

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