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羅小黒戦記旅路考察

はじめに

2020年11月現在、全国で日本語吹き替え版が好評上映中の羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)。遅ればせながら本国版を観て、主人公たちの旅路について調べたくなったのでまとめる。

羅小黒戦記:2011年からウェブアニメとして公開が始まった中国大陸動画。原作・監督はMTJJ(木头JJ)。ウェブアニメは2020年現在28話まで公開されている。その他番外編の漫画「藍渓鎮」、漫画版、同人作画集など。2019年制作のアニメ映画が日本でも公開され、話題をよんでいる。
あらすじ:ある雨の日、羅小白は黒猫を拾って「小黒」と名付ける。不思議な力をもつ小黒はじつは妖精(妖怪)。小白はいろいろな妖精に出会いながら小黒の秘密に気づいていく。日常系癒やしアニメの皮をかぶった、妖精と人間と自然をひもとくミステリーでもある。――映画はアニメ世界軸の4年前のストーリー。住んでいた森を追われた小黒は、風息一派と「会館」との争いに巻き込まれてしまう。海上の孤島に取り残された小黒は、会館の執行人・無限との不本意な旅路を余儀なくされるが、旅の中でおたがいをわかりあっていく。

この旅路の風景が見覚えがある…というか、南の方の中国のいいとこどりな感じで、すごくいいのだ。無限と小黒の旅路が知りたい。あわよくば自分でも行った気持ちになって、おいしいものたべたり、自然の中に佇んだりするふたりのことをもっと具体的に想像したい。そんな欲望のままに旅路考察という名の妄想をしよう。


上陸地点

旅路を予想するうえで一番大きなヒントになるのがこの手書きの地図だ。洛竹のおおらかなセンスがわかる最高のシーンである。

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▲棒が指差している地点が、無限と小黒の上陸予想地点。

実はこの地図、現実の大陸とリンクしているようだ。というのも

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海岸線のラインが一緒!!!しかも右の画像で棒が指差している地点「竜遊(龙游Longyou)」は実在する。左の画像中央の、水色に塗られた部分だ。

竜遊県(龙游县):浙江省西部・衢州市の県(町)。すぐ隣には、スピンオフ漫画『蓝溪镇』と読み方「LANXI」が同じ兰溪市がある。「藍渓」とは、羅小黒戦記で妖精側の黒幕(?)的存在の「老君」のつくった桃源郷的空間の名前で、戦乱の世に行き場をなくした人々をこの空間で養っていた。

反証要素もある。台詞にある「三千多里」は、時代によって前後するもののおおよそ1500km…というこれは実際の距離とはかなりちがう(台州~福州は500km程度、温州~だと300km程度)のだが、一旦そこはおいておいて…この図だけを照らし合わせて考えると、無限と小黒の上陸地点は福建省・福州市の海岸線ということになる。

劇中でも上陸時に会話した漁民が「福蘭省」と答えているし、手で海苔をとったり岩場で漁業したりする集落は海岸沿いにいっぱいあるので、おそらく福州周辺起点で間違いない。


竜遊への移動ルート

グーグル先生に徒歩で福州~竜遊へ移動するルートを訪ねたところ

▼このルートが示された。

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▼百度老师は自動車・自転車ルートでそれぞれこんな感じ。

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劇中からルートのヒントを得るために以下の2つの要素を取り出してみる。


まずはサトウキビ。

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さとうきび畑から食料を拝借する場面があることから、原産地を通過したことがわかるが、図の緑色の領域がかなり南方よりなことに気づく。地図と比べるとよりわかりやすいけれど、あのシーンは旅程のだいぶ前半にあったのだということが推察された。

しかしこれだけではルートの確定はできない。

さらに桃をみてみよう。

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トラックでおじさんから気軽に桃をもらうシーン。こういうことをしてくれるのは農家関係者だと思うので、桃の原産地を調べてみた。

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これでわかるのは、桃の品種と収穫時期にはけっこう開きがあることだ。

ルートに乗ってトラクターで運ばれるであろう地区にめぼしをつけて、品種を検索してみた。まずは広東省の連平でとれる鷹嘴水蜜桃。

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さらに、ゴール地点に近い浙江省の特産・奉化水蜜桃。

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この2種類を頭に入れた上でもう一度、本編画像と比べてみてほしい。

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とがってる!!!!!!!!

この情報はさらに有益である。この物語の時期がわかる。鷹嘴桃は7月上旬から8月中旬に収穫されるもので、中国では保存のための冷蔵とかはあんまりしない。とれたらすぐ消費するし、運ぶにしても保存は考えず周りの都市にとにかくすぐ運ぶ。ということは、この羅小黒戦記劇場版は7月下旬前後の暑い時期のおはなしなのだ。


ルートいろいろまとめ

ということで、ここでもらったのは広東省の鷹嘴桃だということがわかった。トラクターではこぶ先は…現代でこのタイプのトラクターを長距離移動に使うとは考え難いが、福建省を抜けてさらに行くとしたら大消費都市・上海だ。そこで鷹嘴桃の原産地・连平から上海へ車で抜けるルートを百度先生に聞いてみた。

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これと徒歩ルートを(すごく雑に)比べてみた。

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正直、丸かぶりしているわけではない。けど、トラクターが何かの理由で南平を経由していたり、無限と小黒が最短ルートではなくて武夷山を回り込む形で移動することになったりしたら、車がよく通るルートでトラクターに出会うこともありうる。というのも福州と竜遊の間には古来旅人を阻んでやまなかった武夷山が立ちはだかっているのだ。妖精との関係が微妙なところの無限がそこに近づく、または経験的に未熟な小黒をつれていくことを避けることも考えられる。現代の車移動ではトンネルも高架橋もたくさんあって便利だが、ひとの歩きではそうも行かないだろう。

ということですごく暫定的に、

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この緑のルートを中心に移動していることを想定して、おいしいものいい景色のことを調べてみることにする。

翠屏湖を入れているのは、なんとなくふたりが丸太で移動してた風景が似ている気がしたから…だけど、武夷山付近はああいうまるっとした山がいっぱいあるだろうなあ。武夷山はお茶が有名だけれど、ふたりは飲んだだろうか

また妄想が溜まったらまとめる。

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