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思い描くこと

 それなりの期間クラシックピアノを習っていた。家から一番近い教室という理由で通った先の先生は、音大進学の指導をするような方でなかなかに厳しかった。私はちっとも家で練習しない子で、しまいには親が怒られていた。高い月謝を払ってもらいながら大変申し訳ないとしか言いようがない。
 それはさておき。この先生がいつも熱心に指導してくださったことのうち、どんな楽器を手にした時も感謝の念が湧き起こる点が二つある。その一つが「情景を思い浮かべること」だ。あなたはどんなイメージを持ってこの曲を弾いているの?としょっちゅう問われた。だから時には景色を描き、時には色を塗り、時には空間を意識し、物語を作ったり、自分がその主人公になってみたり。

 10年近くそんなことをしていれば、否応なしにそれが癖になる。だから私はいつも曲の世界を思い描く。なんなら音にも世界を持たせる。タイトルがはっきりしていればそのように、何かのテーマ曲ならそのように、タイトルの意味がさっぱりわからないときは自由に「思い描く」。楽譜という紙に書かれた平面の世界で音楽を終わらせちゃつまらないし勿体無い。きっちりとした楽譜の演奏でも、そこには立体的な無限の世界、なんなら時空を超えた世界が広がっている。

…って思った方が楽しくない?

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