ギャラの思い出
演奏で初めてギャラをいただいたときのことは今も忘れない。嬉しかったからではなく、そのときから今に至るまで、変わらず自分への戒めとして心に留めているからである。
店舗のプライベートパーティでの演奏だった。そのときのメンバーの中で私一人が突出してレベルが低いことは明らかで、帰り道でギャラを分配する際に、私は自分の取り分を減額して欲しいと申し出た。皆と同額は受け取れないと。しかし返ってきた答えはこうだった。
「同じだけ持って帰って反省しろ」
そう言われて私はすぐに自分の申し出が「逃げ」だと気付いた。情けなさでいっぱいだった。そしてそのギャラを受け取って、家に帰って泣いた。
あのときの、初めてのギャラが等分で良かった。あの言葉は年々自分の中で重みを増している。
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