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猫物語、白を読んだ感想

西尾維新さんの物語シリーズの猫物語、白を読んだ。何度も読んでいるはずの本だけど少し間を空けて読むと初めて読んだ気持ちになれる。結末も知っているし、アニメだって何度も見ている。それでも大好きな猫物語、白は私が白の語り手である羽川翼のことが大好きになるきっかけになる話だった。

もともと、物語シリーズというものは知っていてもシリーズというだけあって多く、順序もあるそれに私は着いていけなかった。そんな中、2013年の夏、私が未だ高校三年生だった時に白のアニメは始まった。白があるなら黒もある。白と黒は羽川翼に焦点を当てた話というのに間違いはない。それでも白は私にとって特別な話なのだ。

部屋のない、廊下でねる自分を起こすのはルンバだと。それを以前、学校の学友に告げたら友達が一人減ったことがある羽川翼は「その日」の朝もいつも通り起きているけれどルンバに突かれるまで身体を起こさない。そして一人一人が持っている料理器具一式を使って料理をする。静かないつも通りの朝。しかし学校に行くと教室でクラスメイトが窓の外を見つめている。そこで自分の家が火事になっていることを知った。色々省いたけれど、そういうところから白の話は始まる。

家が無いなら何処に泊まるのか。家族会議が開かれ、友達の家に泊まるからと嘘をついた翼ちゃんは廃墟で寝泊まりをする。この時点で「友達ゼロなのかな?」と思ったのだけどそうではない。主人公である阿良々木暦くんの彼女、戦場ヶ原ひたぎちゃんが焦った顔をして家なきこ、もとい廃墟で寝ていた翼ちゃんを探しにきたという。この時点で「自分のことを本気で心配してくれる友達」を持つ翼ちゃんが私は羨ましかった。怒りながら、泣きながら自分を心配する友達がいるなんて。現実では一生をかけても出会えないまま亡くなる人も多い中、作品の女の子に嫉妬するくらい羨ましかった。

ひたぎちゃんは家に翼ちゃんを泊まらせる…のだがその中でも色々あった。というのも、猫物語、黒を見ていなくては何が何だかわからないことが起きたからだ。物語シリーズを読んだこともなく、しかもアニメから入り、尚且つOPが良かったから見続けたとい私には何だこれは…怪異??と混乱しながら見たのだが、それすら気にならないくらい物語に惹き込まれていった。その理由は翼ちゃんの健気さとか一般の女子高生とは並外れた頭脳とスタイルを持っているのに可哀想なくらい立場が可哀想じゃないと思っているところが不思議だったからかもしれない。

可哀想、というのは翼ちゃんが虐められているとかそういうことではない。実の親は自分が寝ていたベビーベッドの上で亡くなっていたとか、親が変わりに変わって今は一切血の繋がっていない親と呼ばれている人たちと一つ屋根の下で過ごす、というあまりにも壮絶な人生を何くわぬ顔で過ごしているのに自分の中のストレスや嫉妬に気付くことなく、ただ普通に過ごす不気味さが私の目にはあまりにも綺麗に映った。

主人公だけど訳あって猫物語、白にはほぼ出てこない阿良々木暦くんのことが好きな翼ちゃんは自分が生み出した怪異と戦い、遂に「結婚を前提に私と付き合ってくれないかな」と阿良々木暦くんに告白をする。しかし阿良々木暦くんは嬉しいけど好きな人がいるんだ、と言う。その言葉の次のシーンにはひたぎちゃんの寝顔が映る。そう、阿良々木暦くんと戦場ヶ原ひたぎちゃんは付き合っている。それを知っていて、自分の中でケジメとしてなのか翼ちゃんは告白した。そのシーンがあまりにも健気で、痛々しくて見ていて戦闘シーンよりも辛かった。それでもようやく自分の気持ちを伝えられた、ようやく泣けたんだと思うと何故だか見ていて辛い気持ちが一変して「よかったね」と思える。

告白したけど振られた。簡単な話だ。だけど私は翼ちゃんの涙が嬉しくて嬉しくて一緒になって泣いたのを覚えている。

心揺さぶられる小説、アニメ、漫画。たくさんあるけれど小説で何が好き?と言われたら真っ先に「西尾維新さんの猫物語、白」と答えるだろう。猫物語、黒と猫物語、白で「告白」になるんだよ、と言う考察を見た時はもう言葉にならないくらい「西尾維新さんすご!!」そう思った。


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