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たまごっちの話

 私の人生で動物を飼った経験は、うずらだけで、しかもその一切の面倒を父が見ていた。だから実質、動物を飼った経験などないと言ってもいいと思う。

 そんな私が最近、たまごっちを買った。人生で2回目のたまごっち。

 1回目は学生のとき。バカ売れだったあのとき。誰もが欲していて誰もが持っていた、あの頃。例に漏れず、私もたまごっちをやっとの思いで手に入れた。が、パッケージを開けている途中で『たまごっち』という物体に飽きてしまうという、まさかの事態に陥った。あんなに欲しかったのに……、こんなに苦労して手に入れたのに……。手に入れてしまった手前、未使用だなんてふざけたことはできず、めんどくさいけど、とてつもなくめんどくさいけど、仕方がないからとりあえず育てた。何の愛情も興味も持たれないで誕生した私のたまごっち。そりゃあ、すぐ死ぬ。基本即死。誕生→即死→誕生→即死という、高速輪廻転生を数回繰り返した。そんな可哀想な存在のたまごっちは1ヶ月も経たずに封印されることになる。学生のとき。子どもの頃の話だ。飽きやすく、めんどくさがりなのは子どもだったからだ。……そう思っていた。

 ということで、あれから何年もの時を経て、バリバリ大人の年齢になった現在、満を持してたまごっちを購入した。私は大人になったのだ。あれからいろんな経験を経て大人になったのだ。強い気持ちで意気揚々とパッケージを開ける。飽きない。飽きてない。成長している。そんな自分に少し感動を覚える。覚えた瞬間、……あー、説明書読むのめんどくさいな……時計とか合わせるのか、めんどくさいな。何か食べさせたりするんだっけ……めんどくさいな。あー、めんどくさい。だめだ。大人はきっとめんどくさがらずに世話をするものなんだ。そう言い聞かせて無理矢理世話をする。私の超めんどくさい思いなど知らずに育っていくたまごっち。調べてみると、寿命は2週間とのこと。少しの間しか一緒にいられない。なんとも切ないたまごっち。そんなことを思ったら意外にも少し愛着が湧いてくる。もう少しちゃんと育てよう。翌日、私のたまごっちは気持ち悪い姿に変貌を遂げていた。ただでさえめんどくさいと思ってたのに、すっかり育てる気がなくなった。雑に世話をする。もう一切の愛情も湧かない。そしてその夜、天に召された。1週間も生きられなかった。かわいそうな私のたまごっち。それからは子どものときと同じように、誕生→即死を繰り返している。まだ1ヶ月も経っていないのに、着々と飽き始めている。

 ずっとめんどくさかった。基本的に色んなことが。めんどくさいから「まぁ、いいや」ってなる。子どもの頃も、大人になった今も。色んなことがめんどくさい。私は成長などしていなかった。何とも悲しい話だ。そして飽きるのも早い。ずっと変わってない。何とも切ない話だ。成長し損ねた。大人になんてなれなかった。何とも残念な話だ。つい出来心でたまごっちを買ってしまったせいで、自分のだめさを再認識してしまった。そんなこともある。まぁ、いいや。

 今日も私はめんどくさいと思いながら、たまごっちを育てている。たぶん、今回も成長することなく早々に天に召されてしまうのだろう。

頑張ります!一生懸命頑張ります!!