【脳波解析】ダイポール/Distributed-Source Imagingの基礎
本ページでは「Analyzing Neural Time Series Data Theory and Practice」(Mike X. Cohen and Jordan Grafman)のChapter24をベースに、単一ダイポールの適合とは?Distributed-Source Imagingとは?について、説明をしていきます。
前回のnoteはこちら↓
順問題と逆問題
そもそもダイポールとは、構造的に電気のながれを考えるときに仮定するものです。そこで、順問題とは、脳内に仮定したダイポールによってどのような脳波データが得られる(どのように外から観測される)かを推定することを指します。精度は頭部のモデルや電極位置の正確性(標準的な配置をしているか)などに影響されますが、脳波データなしでも解析的に解くことが出来ます。基本的には皮質に対し、垂直方向のダイポールという制約を課していますが、電極位置ががばいときなどは、xyz方向でプロットするほうが良いこともあります。
一方逆問題とは、得られた脳波データから,脳内ダイポール(最尤のダイポール位置,向き,大きさ)を推定することです。基本的には回帰的な作業で、被験者の脳構造を用いるか等の違いでいくつかの手法が存在します。さらに、これより解が不定であり、例によって様々な仮定を必要とし、それらが結果に影響を与えます。
ダイポールの適合
脳内に単一あるいは小数のダイポールを推定する際、ダイポールの位置/向き/大きさは全電極で得られたデータの重み付き和となります。重み付け和は全電極での重み付けを指し、(事後的には可能ですが、)時間周波数変化で見ることができません。ダイポールの適合は、通常ERPに基づき、単一時間点か短時間窓の平均で求められます。但し,こうして得られたダイポールの時間周波数解析は可能です。さらに、ダイポールの数を多くすると解が弱くなるので限界がありますが、減らすと脳活動を反映しきれないという問題も浮かび上がります。他にも、空間分解能の点でこんな問題点があります。
1) 理論的には脳波のダイポール推定はfMRI並みの空間分解能までは可能ですが、電極配置/脳の解剖学的構造/ノイズなどのせいで実用では無理
2) MEGに比べると理論値ではEEGの方が空間的精度で上回るが、実用では無理
3) 頑張って数cmオーダー
Nonadaptive Distributed-Source Imaging Methods
タイトル冒頭のNonadaptiveとは、脳波データに当てはめない、という意味で、この方法は、位置と向きの自由さを捨てる代わりに、10000の双極子の大きさだけを推定することを指します(Adaptiveについては次のセクションで説明します)。全ての電極について,10000の双極子に対する重みを計算でき、電極配置のみにより計算を行うため、時間や周波数によって変化しません。推定としてはLORETAや最小ノルム推定がメジャーですが、LORETAには、ソースがブラックボックスすぎてわからない、という問題点があり、MNE Pythonを用いるのが良いでしょう。この方法のデメリットは、統計にかける量が多いことです。
Adaptive Distributed-Source Imaging
この方法では、重みの推定に電極配置だけでなく脳波データも用います。ビームフォーミング(fMRIを使った活動源推定)がメジャーで、以下のようなメリットがあります。
1) 重みがデータに適応
2) 時間・周波数・条件・被験者などにより変化
→ 特に低振幅波の検出などに使えます
→ 時間周波数を指定して双極子を見ることが可能です
一方、こんなデメリットもあります。
1) 設定しないといけないパラメータが多い
2) パラメータ設定により恣意的になる
3) ビームフォーマ(自作なのかツール使うのかなど)により大きく左右される
最後に、このノートにスキを押してくれると、とても嬉しい&更新のモチベが爆上がりします!ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
<謝辞>
このnoteを書く上で、弊ラボの後藤優仁さんにご協力いただきました。ありがとうございます。
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