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【脳波解析】Cross Frequency Coupling

 本ページでは「Analyzing Neural Time Series Data Theory and Practice」(Mike X. Cohen and Jordan Grafman)のChapter30をベースに、Cross frequency coupling(CFC)について、説明をします。

前回のnoteはこちら↓

Cross frequency couplingとは

 Cross frequency coupling(CFC)とは、異なる周波数帯域での同期的活動をみることで、2) phase-phase、2) power-power(パワーベースのコネクティビティのことです。こちらのnoteを参照してください!)、3) phase-powerの3つに分けることができます。パワーは発火する細胞数、位相は発火のタイミングによって決まるのでどちらも細胞の発火が原因であり、低周波の位相やパワーによって高周波の位相やpowerが変わる、というのがCFCの基本的な考えです。最近ホットらしい。

Phase-Power coupling

 Phase-Power couplingでは、低周波の位相と高周波の振幅の同期的活動をみます。情報の統合に重要っていうのが最近のトレンドだそうで、CFCの中でも一番メジャーです。計算方法は、

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であり、a_tは高周波数のパワーを、e^{iφ_t}:低周波数の位相を示しています。ただし、計算上の問題点がいくつかあり一つ目にスケールが0~1.0に定まっていないことがあげられます。そのため、スケールを変えるだけで同期しているように見える危険性があります。また、もともとの位相分布が非一様だった場合にバイアスがかかったり、外れ値の影響をめちゃくちゃ受けたりします。そのため、PACをz値で正規化したPACzを用いて、ノンパラ検定にかけてそのテスト値で議論するなどしましょう。PACzを用いることで、非一様性が問題ではなくなるためそのまま統計の議論もできるし楽です。
 また、位相を出すのにはウェーブレットヒルベルトを用いるのが良いです。というのも、位相角についての時間連続データを保存できるためです。 さらに、位相に着目する際タイミングが非常に大事であるため、時間分解能を重視し(、周波数はある程度諦め)ましょう。高周波数帯に着目する際は、高周波ほどSN比が下がるため注意し、1000Hzくらいのサンプリングをすべきです。また、エッジアーティファクトの影響うけやすいので気を付けましょう。Phase-Power couplingのやり方は三種類(A priori Phase-amplitude coupling、Mixed A priori/Exploratory Phase - amplitude coupling、Exploratory Phase-Amplitude coupling)あります。それぞれについて説明します。

A priori Phase-amplitude coupling

 一つ目に紹介するPhase-Power coupling(PAC)は、A priori Phase-amplitude couplingで完全に仮説ベースのやり方となります。仮説ベースなので、注目する周波数は両方決め打ちになります。メリットとして、計算が少なくて楽なことです。また、よく使われてるので使いやすいです。必要なデータ量は最低でも低周波1サイクル分ですが、これだとロバスト性にかけるのでもう少し増やしたほうがいいでしょう。ただし、増やしすぎると一過的なコネクティビティを見逃してしまうため、短い時間をたくさんのデータ取るのが良いです。また、PACは偶然起きる可能性がある(たまたま同じタイミングにセットされた活動)ため、これをなくすために 1) ERPを引き算する(低周波数による影響を引く)、2) ITPCが見られる窓では計算しない(高周波数による影響を引く)、などをする必要があります。

Mixed A priori/Exploratory Phase - amplitude coupling

 二つ目のPhase-Power couplingのやり方が、Mixed A priori/Exploratory Phase - amplitude couplingです。具体的には、片方だけを仮説ベースにし、もう片方は探索的に決定します。、A priori Phase-amplitude couplingは完全に仮説ベースで短絡なので、片方は探索的にやりましょう、という背景があります。やり方は、1) 先に高周波を決め,その振幅ともっとも同期的な低周波を探す、2) 先に低周波を決め,その位相ともっとも同期的な高周波を探す、の二通りがあります。

Exploratory Phase-Amplitude coupling

 最後のPhase-Power couplingのやり方が、Exploratory Phase-Amplitude couplingです。完全に探索的で、両方決め打ちをせず、全ての周波数セットで計算して、その中でコネクティビティが強い周波数帯を探します。メリットとして、見落としがないことがあげられますが、全ての周波数帯で計算を行うため、めちゃめちゃ時間がかかります。さらに、周波数帯域を広げると計算はやや短縮できますが、周波数の分解能が下がり解像度も低くなるというデメリットがあります。

Phase-Phase coupling

 Cross Frequency Couplingの別のやり方として、位相同士に着目します。Phase-Phase couplingでは、高周波信号のパワー波形から低周波位相を抜き出して、抜き出したパワー波形と低周波の位相同期度を見ます。具体的には、ヒルベルト変換などで包絡線をとり、パワーのグラフをフィルターとして低周波数の方にかけることで求められます。


最後に、このノートにスキを押してくれると、とても嬉しい&更新のモチベが爆上がりします!ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
<謝辞>
このnoteを書く上で、弊ラボの後藤優仁さんにご協力いただきました。ありがとうございます。


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