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【脳波解析】パワー解析

 本ページでは「Analyzing Neural Time Series Data Theory and Practice」(Mike X. Cohen and Jordan Grafman)のChapter20をベースに、トータルパワー/位相同期パワー/非位相同期パワー/ERP時間周波数パワーの違いについて説明していきます。

前回のノートはこちら↓

トータルパワー

 トータルパワーは、全パワーです。そのまんまですね。計算としては、
1) 各トライアルでの時間周波数分解
2) 1で出した全トライアルの時間時間周波数パワーの平均
で出せます。また、トータルのパワーなので、非位相同期パワーと位相同期パワーを足し合わせるとトータルパワーになります。以上。

非位相同期パワー

 非位相同期パワーは、位相同期してないデータの時間周波数情報のことで、induced powerともいいます。計算のやり方は、
1) 各トライアルからERPを差し引く
2) の各トライアルを時間周波数分解
です。この計算方法より、ERP(ITPC)は(限りなく)0になり、ベースラインノーマライゼーションを適合すれば、各トライアルのERP除去後の時間周波数情報は、タスク関連の活動(ERP×)を示します。

位相同期パワー

 位相同期パワーは、evoked powerと呼ばれ、Time = 0で位相同期していない活動は⾒つかりません。また、約200ms後&20Hz以上の周波数帯で見るのは厳しいです。というのも、何サイクルもすると位相同期の維持が難しく、更に、テンポラルジッター(トライアルごとの時間のずれ)がPhaseクラスタリングに強く影響するためです。
 と、少し欠点を述べましたが、位相同期パワーはめっちゃ実用的です。というのも、全シグナルのベースラインと⾮位相同期パワーのベースラインがほぼ同じであり、⾮ベースライン補正パワーは精密に行うのが難しいからです。計算の仕方としては、トータルパワーから非位相同期パワーを引いて出すことができます。

ERP時間周波数パワー

 ERPの時間周波数情報を得るには、
1) まずERPを計算
2) 何を使っていいので(ヒルベルトやウェーブレットなど)、時間周波数情報を計算
を、する必要があります。ここで、ベースライン正規化後のERP由来のパワー変化は、トータルパワーの変化よりも大きいことに注意してください。というのも、ベースラインが、時間領域の平均により変動をあまり含まないためです。また、ERP時間周波数パワーと違う信号を使っているので、トータル/⾮位相同期分析のベースラインでERPの時間周波数パワーを正規化してはいけません。

どのパワー使えばいいの?

 特に理由がない場合は、元データに近いため、トータルパワー使いましょう。ERP時間周波数パワーはあんまメリットがありません。ERPにない情報は何もないからです。ただし、時間や極性ではなく、周波数情報でERP成分をみたいときには使えます。
 また、⾮位相同期パワーにも結構いいところがあります。時間周波数パワーでの情報⽐較は、ERPだけを⾒てもわからないことがわかるためです。また、グレンジャー因果の⾃⼰回帰モデルなどを用いた分析の際に、各トライアルのEEGデータを定常に保てるというメリットもあります。


最後に、このノートにスキを押してくれると、とても嬉しい&更新のモチベが爆上がりします!ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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