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計算論的神経科学 第2章-1

「計算論的神経科学」(田中宏和)の第2章についてメモ書きする(part1, 〜p51)。身体運動は目的に対し最適化がなされ、規則性が生じている。本章では身体運動における規則性を説明する最適化モデルについて議論している。

到達運動の制御

本来始点と終点のみが定まった二点間到達運動において軌道は定まらない(不定性)。しかし、実際には手先を動かす随意運動において一定の軌道を描くことが示されており、これより空間的には外部座標系での運動制御が示唆される。一方時間的にはフィッツの法則(スケーリング測)で、運動時間は距離と標的の大きさの比によって決定される。
(2.3):サッカードの運動時間(反応時間)=初期値+傾き*振幅
眼球運動の速度は(2.4)からわかるように頭打ちの関数で最大値はある程度決まっている。またヒトの随意運動は何らかの規則性を持ち最適化が潜んでいることがいえる。そのためどのような最適化モデルを設定するかが重要である。

変分法

変分法は関数微分=0のとき関数が極(最)大・極(最)小をとることで、ある時間関数とその導関数を引数とする関数の時間積分を作用と呼ぶ(A.1)。作用が極小値を取るためには、微小変化を加えたときその被積分関数内が0になれば良いから(A.3)が得られ、これをオイラーラグランジュ方程式と呼ぶ。また、t=t_0及びt=t_1のとき偏微分値=0を満たす必要がある(A.4)。

躍度最小モデル

軌道が滑らか=変化分が小さい=加速度成分を時間積分したものが最小になる、ということであるから(2.5)が得られる。この際^2は角速度の±を打ち消す目的がある(最小二乗と同じ)。(2.5)のそれぞれの関数自体が極小を取る必要があるから、変分法より最適解は(2.6)となり、x(t)とy(t)は時間tの三次式となる。そのため、x(t)に対しtの三次式をおき、
x(t_f)=x_f, x(0)=0, dx/dt(x_f)=0
を用いると(2.7)式となる。しかし、端点で加速度≠0であるため加速度二乗の最小としては不十分となるため、三回微分である躍度を最小化するために提案されたのが躍度最小モデルである(2.8)。これに先ほど同様変分法を適応すると、躍度最小モデルの解は時間に対し5次の多項式となり、その境界条件は実験条件により異なる。

二点間到達運動において(2.12)は(2.11)のxをyに置き換えたものを使用しており(y(t)についても同様の解が得られるから)、(2.17)はt=t_1で速度最大の釣鐘型になることを示している。

描画運動では、手が動く軌道上での運動速度の自由度が残る。(2.18)は合同関数の微分で、'は変数sに関する微分、・は変数tに関する微分である(s=s(t))。t(s)はr(s)における接線ベクトル、n(s)はr(s)における法線ベクトルで、(2.19)もフレネーセレの式を用いた合成関数の微分である。(2.20)の一行目から二行目にかけて(2.19)式を代入しており、この際約度最小モデルの評価関数にベクトル成分を導入(分解)している。二行目から三行目はベクトルtとnが直行するのでtn=0であることが利用されている。三行目の第一項についてはd/dt(k・(ds/dt)^3)=k'(ds/dt)^4+3k(ds/dt^2)(ds/dt)^2を利用しており、第一項の最小化からk(ds/dt)^3=(const(定数))が導かれる(tの定数でなければok)。

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