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揺さぶられる国・アメリカ

謎の一セント硬貨 向井万起夫を読んで、蘇った記憶➡編集リライト

 
 東洋ではない、西洋でもない不思議なエネルギッシュな国。心揺さぶられる国。アメリカだ。
 私が沖縄出身だからかもしれないが、アンビバレントな感情を持っているから揺さぶられるのかもしれない。
 私にとってアメリカは、懐かしさと親しみと、いらだちを感じさせる国だった。
 子どものころ叔母が、米軍相手に紳士服テーラーの店を商っていた。高校時代私は叔母の店で雑用かかりのアルバイトをしていた。直接客の応対はしなかったが、街の中を無神経な空騒ぎする米兵の様子に辟易していた。
 基地の街の日常だが、私には宇宙人にしか見えない。
中学を卒業した同級生の子が、米兵相手の飲食業で働いていたり、夜の店で働く子たちの中で米兵の恋人がいるなどと噂が耳に入ってきたが、別世界の話で他人ごとだった。
 高二の頃、ご褒美に叔母から就学旅行に行かせてもらった、なんと17日間の本土旅行である。
 パスポートを作り、ドルを円に換え二泊三日の船旅だった。鹿児島から北上して日光までいくという豪華な修学旅行なのだ。
 那覇を出発して3日目鹿児島についた。遠かった。
 鹿児島の港について船を降りる。ここに陸地があること、憧れの本土の地を手で触って地面を叩いて確かめ、足を踏み鳴らし興奮した。
そう、私はここに来たかったのだ。私は日本人だと迎えられた気がした。
 九州から列車で北上していくのだが、大阪、京都につくまでに一週間くらいかかったと思う。その時ふと気づいたのだ。
 アメリカ人がいないと。
京都についてやっとアメリカ人に出会った時、不思議な感情が蘇った。
懐かしい友に出会ったような安心感と駆けつけたい気分になる自分の感情に戸惑った。
 騒ぐ米兵ではない、出会ったアメリカ人は皆、静かににこやかに話す上品な人たちにあってなぜか私は、誇らしさまで感じたのだ。身内感覚に陥っていることに驚いた。
そうか、騒いでいた米兵は寂しかったのだ。家族と離れて知らない国で、いつ故郷へ帰れるか分からない不安で騒いでいたのだ。
戦場に向かう孤独をごまかすために叫んでいたのかもしれない。
京都であったようなエレガントな家族に会いたい気持ちを押さえ、忘れるために。
 
 贅沢な修学旅行に行かせてくれた叔母に改めて感謝が沸き上がる。自分の視野の狭さ、いらだちの感覚さえも親近感だったのだと知った。
真実は細部に宿る㏌USAだと噛みしめる思い出である。

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 東洋ではない、西洋でもない不思議なエネルギッシュな国。心揺さぶられる国。アメリカだ。
 私が沖縄出身だからかもしれないが、アンビバレントな感情を持っているから揺さぶられるのかもしれない。
 懐かしさと親しみと、いらだちを感じさせる国だ。

 子どものころ叔母が、米軍相手に紳士服テーラーの店を商っていた。高校時代私は叔母の店で雑用かかりのアルバイトをしていた。直接客の応対しなかったが、街の中を無神経な空騒ぎする米兵の様子に辟易していた。
 基地の街の日常だが、私には宇宙人にしか見えない。
また中学を卒業した同級生の子が、米兵相手の飲食業で働いていたり、夜の店で働く子たちの中で米兵の恋人がいるなどと噂が耳に入ってきたが、別世界の話で他人ごとだった。
 
 高二の頃、ご褒美に叔母から就学旅行に行かせてもらった、なんと17日間の本土旅行である。
 パスポートを作り、ドルを円に換え二泊三日の船旅だった。鹿児島から北上して日光までいくという豪華な修学旅行なのだ。
 那覇を出発して3日目鹿児島についた。遠かった。
船底に枕並べての雑魚寝状態も楽しかった。甲板に上がると満月で明るい洋上が広がって大興奮。他愛もない話で太平洋の海の夜を過ごし、このままこの時を封じ込めたいと胸がつぶれそうだった。
 三日目に鹿児島の港について船を降りる。ここに陸地があること、憧れの本土の地を手で触って地面を叩いて確かめ、足を踏み鳴らし興奮した。
 
 九州から列車で北上していくのだが、大阪、京都につくまでに一週間くらいかかったと思う。その時ふと気づいたのだ。
 アメリカ人がいないと。
京都についてやっとアメリカ人に出会った時、不思議な感情が蘇った。懐かしい友に出会ったような安心感と駆けつけたい気分になる自分の感情に戸惑い、驚いた。
 騒ぐ米兵ではない、出会ったアメリカ人は皆、静かににこやかに話す上品な人たちで、誇らしさまで感じたのだ。
 贅沢な修学旅行に行かせてくれた叔母に改めて感謝が沸き上がる。
真実は細部に宿る㏌USAだと噛みしめる思い出である。

「文サロ」でのエッセイは書くことで、自分を見つめる作業、癒しの作業となっている。


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