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受精率は低く、胚発育が良い場合の原因考察

【ご質問原文】

こんにちは、いつも参考にさせて頂いております。

先日採卵をしたところ、成熟卵に対し受精率が 
IVF 30%、ICSI 40%とかなり平均を下回っていました。
しかし、そこからの胚盤胞到達率は
IVF 70%、ICSI 80%で成績良好でした。 
(グレードはぼちぼちでしたが)

受精率が低く、その代わり胚盤胞到達率が高いとき、 
胚培養士さん目線で何か考えられる原因はありますでしょうか?
先生からは卵の質の問題と言われました。
(PCOSのため)

類似の質問が多い中で申し訳ありませんが、ご回答頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

【回答】

ご質問ありがとうございます。

可能性としてのお話しかできませんが、受精率が低いのに胚発育率が高い症例は、採卵した卵子にバラつきがあった可能性が考えられます。

バラつきというのは卵子の成熟レベルのバラつきです。

我々は卵子が成熟しているかどうかを、「極体の有無」によって判定しています。

しかし、極体が放出されていても、卵子の「内部的」に成熟が完了しているとは限りません。
内部的にまだ未成熟である可能性もあります。

特殊な装置を使って、卵子の中の紡錘体(核が分裂する時に形成される糸状の物)を観察する事で、本当に成熟しているかを判定する事ができます。

実際、紡錘体が成熟とは異なる形成の仕方の場合(形成していなかったり、極体と橋がけ状になっていた場合)
顕微授精の受精率は大きく低下します。

ふりかけ法(IVF)の場合も、こういった未成熟の卵子は受精率が低いと考えられます。

また、ふりかけ時には未熟だった卵子が媒精中に成熟してくる事があるため、裸化後に成熟していても「いつ成熟したのか」あやふやな場合も少なくないです。

ご質問者様の場合、採卵できた卵子のうち、ベストなタイミングの卵子と、これからのタイミングの卵子が混在しており、ベストなタイミングの卵子のみが受精し、発育したのではないかと推察します。

この成熟度のバラつきがある事もひとつの「卵子の質の問題」と言えます。

もちろん、他にも原因となる可能性はたくさんあるので、可能性の1つとしてお考えください。

以上です。
ご参考になれば嬉しいです。

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